平成15年9月12日・改訂(扉絵を追加)

ピンクの悲鳴、真夏の夜明け前の悪夢/ペースケ・著

イラスト:悪の司令官
 ベーダー怪物アンゴラーは江ノ島海岸の海中深く、その朽ちた体を横たえていた。 真夏のある日、ひとつの流星が七色に光りながら海中に沈んだ。落ちた所にアンゴラーの死体がいた。 そこに悪の奇跡が起こった。 アンゴラーの朽ちた体が少しづつ再生されていった。 そしてアンゴラーの心臓が動き始めた。アンゴラーの象徴である、ちょうちんの球は 隕石が七色に光り輝いていた。 それから数日がたった。 ゴレンジャーの一員であるペギー松山モモレンジャーは、その日もいつものとおり、早朝の訓練メニューをこなしていた。 それはメニューの最後で浜辺をマラソンしているところであった。その奇態は海の中から黒い球体のように浮かび上がってきた。 ペギーは、夜明け前の海を見た時に、それを見つけた。 「何だろう」 それはまもなく浜へあがってきた。動いているのが遠くからもわかった。 「サメかしら。それにしては形がへんね」 しばらくしてその物体は人のように立ちあがった。 「なに?!」 アンゴラーは仁王立ちの姿勢で吠えた。 「俺は完全に復活した!」 ペギーはその様子をじっと見ていたが、明らかに怪物であると判断し、すばやく変身した。 「ゴー!」 体を勢いよく回転させ、全身をピンクの強化スーツに包まれたモモレンジャーが登場した。 「いいわね。いくわよ」  ハート型イヤリング爆弾を手にとると、そのままアンゴラーめがけて投げつけた。爆弾は一直線に獲物を目指した。  アンゴラーは、モモレンジャーの声に振り向くと、自分に向かってくる爆弾に気がついた。 そして、口を大きく開けて待ち構えた。 「あっ」  モモレンジャーは、その光景を見て唖然とした。アンゴラーがそのまま、爆弾を飲みこんでしまったのだ。 「ゴクン」  飲みこまれた爆弾は、しばらくたっても爆発がおこらない。 そして、アンゴラーはモモレンジャーを認めると、ダストラー兵を四次元空間から呼びよせ、近づいてきた。 「いいわよ、怪物。かかってらっしゃい」  アンゴラーはモモレンジャーの手前10メートルほどにくると、いったん立ち止まった。 「貴様は誰だ」 「正義の戦士、モモレンジャーよ」 「モモレンジャー?デンジマンではないのか」 「違うわ、怪物。ゴレンジャーよ」 「みたところ、女のようだな」 「そうよ、女で何が悪いのよ、この怪物」 「怪物怪物とはよくいってくれたな。俺様は誇り高きベーダー幹部、アンゴラーさまだ。よく覚えておけ」 「あのベーダーの残党ね。なにが誇り高きよ。ただの生き残りのくせに」 「フフフ、生き残りではないぞ。宇宙に散らばる虹の石のエネルギーを受け、闇の世界から舞い戻ったベーダー一族最強の戦士なのだ」 「じゃあ、あなたはゾンビというわけね」 「ゾ、ゾンビだと。なんだとこのアマ。俺様を怒らせたらどういうことになるか、よーくその体で思い知れ」 「たかがゾンビに負けるモモレンジャーじゃないわ」   アンゴラーは全身に怒りをあらわした。頭部についているちょうちんの先端についた球も赤く輝いている。 アンゴラーは、まず先端が碇状になった戦闘槍を右手に取り出した。 そしてモモレンジャーに向かって突進した。 「くらえモモレンジャー」 「なんの」  モモレンジャーは前転してアンゴラーの攻撃をかわした。 そして体勢を整えるともうひとつのイヤリング爆弾を握った。 「この距離ならはずさないわ」  アンゴラーはいったんやりすごされたが、すばやくモモレンジャーのほうを向き直った。 「グアー」 さらに大きく口をあけ、アンゴラーはモモレンジャーに迫った。 「いくわよ」 モモレンジャーは爆弾をそのアンゴラーの口めがけて、投げつけた。 (今度こそ決まったわ) 「ゴクッ」 「ああ、また」 アンゴラーは何事もなかったかのように、また爆弾を飲みこんだ。 「ははは、これでおわりか、モモレンジャー」 「なによ、モモレンジャーをばかにしないで」 モモレンジャーはジャンプし、空中で回転するとアンゴラーめがけ、キックを決めようとした。 「とおぉ」 それを見たアンゴラーは、口元に笑みをうかべた。 「ばかなやつよ」 モモレンジャーは、攻撃をさけようとしないアンゴラーに不審をいだいたが、そのままキックの姿勢を崩さなかった。 アンゴラーが叫んだ。 「これでもくらえ、七色重力波!」 アンゴラーのちょうちんの先端球から七色の光線が放たれた。 「あっ」 モモレンジャーにはそれを避ける余裕がなかった。 「ぐあぁぁぁ」 七色重力波をもろにくらい、モモレンジャーはバランスを崩して地面に激突した。 「ううう、」 モモレンジャーは地面に這いつくばる状態になった。アンゴラーは、そのまま光線波をモモレンジャーに浴びせ続けた。 モモレンジャーは、全身に痛みがまわり、起きあがれない。 (うう、なんて強い波動なの。パワーがどんどん消耗していくわ) それは3分ほど続いた。 「ううう、あああ」 モモレンジャーは苦痛に耐えた。アンゴラーはその姿を見て、不敵な笑いをもらした。 「ククク、どうだ、俺様の七色重力波は」 「こ、こんなもの、モモレンジャーには、き、効かないわ」 そういいながら、モモレンジャーの全身は痙攣状態だった。 「ほう、そうかそうか、こんなものじゃ物足りないか」 「モモレンジャーはこれくらい、う、な、なんでもない...わ」 「それなら別のやり方でいたぶらないとな」 「な、なにをしても、む、無駄よ」 「フフフ、強がりもいつまで続くかな、モモレンジャー」 アンゴラーは波動を送るのをやめ、モモレンジャーが倒れているところまで近づいた。 そして、モモレンジャーのヘルメットマスクの上から右足をかけ、そこに体重をのせていった。 「それそれどうだ」 顔が地面に押し付けられているような状態だった。 「く、その足をどけなさい.......」 「おおそうだな。これぐらいじゃつまらんな」 アンゴラーはその足を放すと、槍を両手で握り、モモレンジャーの背中を杖の部分で連続つきを始めた。 「ああ、ああ」 強化スーツとマントのおかげで怪我はないが、痛みまでは防げない。 「うう、ああ、ぎゃぁぁぁぁ」 アンゴラーはまるで餅つきでもするかのように、何度もモモレンジャーに槍をつき刺していく。 ”ドス” 「ああ」 ”ドス” 「うっ」 ”ドス、ドス” 「あ、あーーー」 執拗に何度も何度もつつかれていく。最初は背中であったのが、足に移り、腕、足首、尻と まるでもぐら叩きでも遊ぶようにアンゴラーはその動作を繰り返した。 「はぁはぁ、ぁぁぁ」 モモレンジャーは息も絶え絶えになっていった。 「くそ、この強化スーツは簡単に破れそうにないな」 「うう、そうよ、あんたなんかに負けるモモレンジャーじゃないわ」 「ふ、そんな状態でよくいうわ」 アンゴラーはまた背中をつつき始めた。 「あ、あ、ああ、」 「くらえ、モモレンジャー」 モモレンジャーはその痛みに必死に耐えていた。そうしているうちにマスクのシンボルナンバーが点滅しはじめた。 (ああ、ゴレンジャーパワーを急激に消耗して、エナジーがなくなってきたんだわ) その兆候はちょうどアンゴラーからは影になっているため、気づかれてはいない。 (アンゴラーは気づいていないわ。なんとしても知られないようにしなくては) やがてアンゴラーも疲れてきたのか、つつく力が弱くなっていった。 「ハ、ハ、ハ...ちきしょう、まだくたばらんか」 「これくらいでは、な、なんともないわ」 モモレンジャーは苦しみながらも、アンゴラーに向かって言い放った。 「ようし、それなら作戦変更だ」 「まだやる気。なにをやっても無駄よ」 「そうかな。そうかどうか試してやる」 「無駄だといっているのに」 アンゴラーはモモレンジャーの下腹に足をいれ、蹴って体をひっくり返した。 「うっ」 モモレンジャーは大の字で仰向けになった。 「おい、こいつを動かないように押さえるんだ」 モモレンジャーの両手両足をダストラー兵がとり押さえた。 「は、はなしなさい」 「ふん、しばらくそうしていろ」 「な、何をする気」 「おとなしく見ているんだ。これからおもしろいショーが始まるぞ」 アンゴラーは右手を自分の口に突っ込むと、さきほど飲みこんだ爆弾を取り出した。 アンゴラーの胃液でドロドロになっている。 「あっ、それは私のイヤリング爆弾。返しなさい」 「ああ、今から返してやるさ」 「えっ?!」 アンゴラーはモモレンジャーのヘルメットマスクに左手をかけた。 そして、爆弾を握った右手をハート型のゴーグル部分の窪みに置いた。 ちょうど爆弾がゴーグルに張り付いた状態である。 「あっ、なにするの、や、やめなさい」 「だめだ」 そして両手でマスクを押さえ動かないようにした。 「な、なにをするの」 「分かりきったことを聞くな」 ちょうちん球から波動が発射された。それは爆弾を直撃した。 にぶい爆発音があがった。 「きゃぁーーーーーー」 モモレンジャーのゴーグルはその衝撃でこなごなに破壊された。ペギーの素顔がマスクの中にあった。 破片がとび、いくつも血の跡が顔に残る。奇跡的に目はやられなかった。 目の前にアンゴラーの醜い姿があった。 マスクのシンボルナンバーの点滅が早くなり、危険信号を示す 警告音が鳴り始めた。 (まずいわ、エナジーがもう無い) 「く、く......私を早く、は、はなしなさい」 アンゴラーはしばらくペギーの顔を見ていた。しかしそれはマスクのシンボルナンバーの点滅に気がついたせいであった。 「なんだ、このマスクの数字の点滅は」 「な、なんでもないわ」 アンゴラーはいきなりモモレンジャーの腹に拳を叩き込んだ。 「うっ」 「素直に、吐くんだ」 もういちど拳がきた。 「げほっ」 「いうまで、やめんぞ」 「うう、だれがいうもんですか」 「まだ強がる元気があったとはな」 「だから負けないっていっているでしょ」 「これでも負けてないというのか、とんだお笑い草だ」 「そうよ、まだ負けてなんかいないわ」 また拳が打たれた。 「うっ、」 「ほら早くいうんだ」 「誰が言うもんですか」 「フン、それなら言わんでもいい。どうせおおかたエネルギーメーターかなんかだろう」 (まずい、ばれているわ) アンゴラーは右、左と続けざまにモモレンジャーを殴っていった。 (うう、耐えるのももう限界だわ) 「も、もうやめなさいよ」 「まだまだ、次だ」 アンゴラーは口から残りの爆弾を取り出した。 「ま、まだやるの」 「フフフ、やめるはずがないだろう」 アンゴラーは笑いながらモモレンジャーの体を舐めるように視姦した。モモレンジャーは全身に虫唾が走るのを覚えた。 (何をしているの...) 「さてどこを攻めてやろうか」 「えっ、も、もうやめなさい」 「よしここにしよう」 アンゴラーはモモレンジャーのベルトのバックルに爆弾をおいた。 「ああ、そこはだめ」 「ん、どうした」 「そ、そこは...ゴレンジャーのエナジーパックなのよ」 「ほう、そうなのか」 「お願い、そこだけはやめて」 「フフフ、いまさらやめられるか」 「だめ、だめ、そこだけはだめなのよ」 「それではそろそろいくぞ」 「ああ、お願い、そこだけは.......」 アンゴラーは少しだけ離れると、今後は右足でモモレンジャーのバックルを狙った。 「きゃあ、許して、お願いお願いーーー」 「遅い」 右足がモモレンジャーのバックルに落とされた。また鈍い爆発音が。 「うう」 バックルがバラバラになった。そして、ベルトが体からずり落ちた。 (ああ、モモレンジャーのエナジーが.......) 強化スーツもベルトのバックルのあったところが破れ、回路が黒焦げになり、露出していた。 (うう、回路の一部が壊れてきたわ) マスクのシンボルナンバーの点滅を光りが弱くなってきた。 (ああ、エナジーも本当になくなったわ) そして光が消えた。 (もう、もうおしまいよ、モモレンジャーは負けたんだわ) 「ははは、いいざまだぞ、モモレンジャー」 モモレンジャーはもはや全身から力が抜け、立っているのも苦しいくらいだった。 「もう、もうこれくらいにして....お願い、私をはなして」 「なにいってんだ、これからが楽しいというのに」 「ああ、だめ、これ以上いじめないで」 アンゴラーはモモレンジャーの左胸を強化スーツの上から掴んだ。 「ああ、い、痛い」 「ヘヘヘ、意外にいい形だな、モモレンジャー」 アンゴラーは涎をたらさんがばかりにもみ始めた。気味が悪い感触が体全体に伝わっていく。 「もうやめて、お願いよ」 「これから、これから」 「ああ、やめて...」 アンゴラーは胸をもんでいた手をはなし、そのまま下のほうに撫でながらずらしていった。 そしてそのままモモレンジャーの秘密の丘まで達した。 「ああ、そこはだめ......」 「うそをつけ、本当はここがいいんだろ」 「うう、違うわ、お願い、もうやめて」 アンゴラーは激しく掴んでは離した。 「ああ、ああ、」 「どうだ、気持ちいいだろう」 「うう」 アンゴラーはしばらく続けていたが、手をはなすと今度はいきなりそこに噛み付いた。 「ぎゃあ」 エネルギーの切れた強化スーツは、ただの高分子繊維の集合体にすぎなかった。 アンゴラーの牙に繊維の一部が残り、そのY字の交差点は血が混じって破れた。 「ああ、見ないで、お願い」 「そうだな、見て楽しむものではないな」 「えっ」 アンゴラーは第2の自分をさらけだした。 「きゃぁ、なんなのそれは」 「こうするものさ」 アンゴラーはモモレンジャーに強硬侵入していった。 「ああ、だめ、だめ、」 「いいぞ、モモレンジャー、最高だぜ」 「お願い、早く抜いて、ああ、こわれるわ、ああ、だめぇ」 「へへへ、もっと楽しもうぜ」 「イヤ、イヤ、はやく、はやく、離れて」 海岸線に朝日が昇り始めた。急激に周囲が明るくなっていく。 すると突然アンゴラーが叫び始めた。 「く、苦しい.......」 アンゴラーの背に夏の日差しが照りつけてきた。 「うう、俺のからだが崩れていく」 直射日光があたった所がボロボロと粉になっていく。 ダストラーはすでに灰になっている。 「お、俺としたことが、こんな、こんなことで」 そして、アンゴラーも全身が灰になった。 あとには七色に光る石だけが残った。 「なんだったんだろう」 ペギーは日が昇りきった海岸で、しばらくぼうぜんとしていた。 ***完