平成14年1月11日・初版

電磁戦隊メガレンジャー外伝・キレてる!赤の恐怖メガレッド/サワキ・著

 蛇口から落ちる水滴は流しのステンレスに落ち、ポタッポタッと周期的な音を立てている。 薄暗い室内で黄色がかった白いカーテンがそよそよとなびいている。 その外で黒い雲がごろごろと嵐の前触れを告げていた。 「なに、どうしたの?」  城ヶ崎千里は黒い大きな実習用テーブルのふちに半ば腰をかけてきいた。 目の前にいるクラスメートの伊達健太は顔を無機質にして、城ヶ崎千里と向き合っていた。 伊達健太はこの場所にこの時間、この女を呼んだ。 「千里」 伊達健太は突然、城ヶ崎千里の両手首を掴むと、そのままテーブルに女を押し倒し、上に被さった。 (なに? 何の真似?)  遠くの廊下で生徒が大声を上げ合って楽しんでいるようすが知れた。  女を無視して、男は無神経に女の唇に自分の唇を押し当て、舌をねじ込んで、無理やり口吻をしてくる。 乱暴で無神経な態度に女は男を振り払おうとしたが無駄で、正義のヒロインとはいえ男の力には敵わず、ねじ伏せられる。 城ヶ崎千里の瞳が大きく見開かれ、伊達健太の顔を見ていた。 その顔は明らかにクラスメートの顔ではなく、狂気のある顔だった。 (本当に健太…?)  ネジレジアとの戦闘中、男はこのような顔をして、二メートル近くある怪物と向き合っているのか。 悪い予感のようなものが頭を過ぎって、女は尚も抵抗した。男は知っている男ではない別の男であるように感じた。 伊達健太にしては良すぎる手際を駆使して、計画的に城ヶ崎千里は崩されていく。女はテーブルに押さえつけられた。 熱い唇はねっとりしていて気持ち悪くて吐きそうだった。 「やめて! あう…」  ドスッと喧嘩でき耐えた男の拳が、女の腹部に命中した。 下手なボクシングの選手より強い、それをうけた女の身体は痛みから、どさっと力が抜けた。 伊達健太はそれを見計らい、腕を上手に使って城ヶ崎千里の自由を奪った。 明らかに用意していたらしいゴム状の手錠を、後ろ手に回した城ヶ崎千里の両手にかけた。  「い…いや…いや…」  女の瞳が潤む。そのとき潤んだ瞳にハンカチが目に入った。伊達健太の掌にあったそれは城ヶ崎千里の鼻孔にあてられた。 城ヶ崎千里は一瞬気が遠くなるのを感じ、ふらっとして意識がゆららいで、甘い匂いを感じ取った。  (なにかの薬…睡眠薬かなにか…)  鼻孔の甘い匂いに誘惑された城ヶ崎千里は、恐怖感を感じ取った。 逃げなくてはという考えが頭を過ぎり、逃げなくてはならないという切実な考えが迫ってきた。 健太は健太であって健太ではないのかも知れない。そうしていく間にも、意識が眠り始める。 自分を守らなくてはという重いが過ぎり、手錠で結ばれた後ろ手の指が動いた。 なんとか動いて、手首にあるデジタイザーに触れた。 「ううう…」  伊達健太は片手でハンカチを押さえつけたまま、顔をブレザーに埋めた。まだ制服を脱がそうとはしない。 しかしもう直ぐにやるのだろう。片手はブレザーの脇に手がかけられた。 潤んだ瞳にタマネギを切ったときのような痛みが浸みて、もう意識を失ってしまいそうだった。 後ろ手でデジタイザーの変身コード3・3・5を押す。そして最後の力を絞った。 「イ、インストール・メ、メガレンジャー……あぁぁ」  ブレザーがはだけて、胸元のリボンに指が触れたときだった。ぴかっと少女の身体が光り、伊達健太は身体を はねのけられた。しかし無機質な彼は感情を変えない。一秒後、黄色いヒロインがそこに現れた。 後ろ手の拘束は解かれ、テーブルから城ヶ崎千里は黄色い体をよろめかせながら立ち上がった。  「あぁ…」  伊達健太は微笑んだ。メガイエローと呼ばれるその黄色いヒロインは、立ち上がったは良いがよろめいて、 コンピューターが搭載された頭をグローブの填めた手で撫でると、そのまま、なし崩し的にその場に倒れ、 なんとか手を突いたが、そのスーツに押しつけられた胸が一回上下するいとまに、テーブルへ背中が、意識を失った。  意識を失った城ヶ崎千里のもう一つの姿を見つめ、サディスティックな衝動にとり憑かれている伊達健太は、 学ランの乱れを直す。強力な睡眠薬をしみこませたハンカチをテーブルの上に置く。 スニーカーで黄色い胸を思い切り蹴り、グイグイとそのまま踏みつけた。 メガイエローの残骸は自ら動くことなく、横へ倒れた。 その上に馬乗りになり、マスクに顔を近づけると、子供のような、スヤスヤという寝息が聞こえてきた。 「へはははは…」  思いの外、完璧な準備が出来たことに喜んだ伊達健太は、もう一度小さく微笑んだ。   ”ウイィィィィン”  歯科医が使うドリルのような音がした。 「う…うううう…」 城ヶ崎千里は微睡む意識を持った。バイザーから見える限られた視野には誰もいない。 小さな天窓は光を持っていない。その方からパサパサと途切れぬ音がして、それが雨だと知れた。 目の前は限りなく暗く、照明は見るからに古そうな裸電球がひとつ、少し高い天井から垂れていた。 つんと鼻を突く臭いがする。スハスハと、口のマイクが拾った荒い呼吸音が耳のスピーカーから流れていた。 その音が少しずつ城ヶ崎千里の緊張を高める。 「あぁ…あぁ…」 めまいがして、動けそうもなかったが、無理やりにでも動こうとする。 ”ガシン!”  しかし動こうとする黄色いヒロインの身体を何かが拘束していた。 未だにはっきりとしない頭を、瞬きの繰り返しでなんとか取り戻し、辺りを見回すと、歯科医院にあるような椅子に 座らされ、両足、両手はそれぞれ椅子に拘束されていた。 「何…これ…」 戦争やホラー映画にあるような電気椅子とか、歯医者にあるような椅子、そんな滑稽な場所に座らされていた。 メガイエローの持てる力を総動員して、それを開放しようとしても、ぴくぴくとわずかに音を立てるばかりで何も効果がない。 パニックに陥りそうな城ヶ崎千里がそこにいた。 「ははは…千里、いい格好だな」  無機質なマスクごと、城ヶ崎千里が頭を持ち上げる。そうすると、いつの間に現れたのか、伊達健太が狂気の顔をして、 そこにいた。あまりに近い距離で城ヶ崎千里はわっと驚きそうになった。 「な、なんで…こんなことするの」  薬の効果か舌がもつれて、上手い具合に言葉が出ない。 「流行ってるんだぜ、友達を襲うのが。」  伊達健太は簡単に言い放つ。驚きの色がバイザーの底に現れる。流行のために捕らえられたのかという思いが、 顔に冷水を浴びせかけられたように城ヶ崎千里の心をふるわせた。  「それじゃ、なに…」 「そうさ。俺は千里を襲うことにした。でもなんてたって、メガレンジャーだからな。使いたくない頭をフルに活用して、 完全な計画をたてなきゃなんない。苦労したぞ」  ふんと伊達健太が微笑んで、城ヶ崎千里が座っている椅子の後ろにまわった。 「でもまあ、うちの学校、色々設備があったし、必要な情報はI.N.E.T.なんかにはいくらでもあるし。 まさか変身してくれるとは思ってなかったから、慌てたけどな」  黄色いマスクを伊達健太が手づかみする。城ヶ崎千里はそれを払いのけようと、頭を振る。 しかしそれは無駄だった。しばらくすると健太は手を離し、もう一度伊達健太は横へまわった。 城ヶ崎千里は馬鹿らしくて声も出なかった。たまにヒックと低い声がしたが、バイザーの中ではねるだけだった。 「お前だって、レイプ願望ぐらいあんだろ? あん?」  ベルトのMと象られたバックルの少し下、スカート状になったスーツのちょうど女性器があるところに、 伊達健太は人差し指を立て、真上から押した。ぶるんと黄色い身体が下から上へ震え、弾力のあるスーツと肌が 指をはねのけた。殆ど入るわけもない。  そして次に伊達健太は椅子の背もたれにある隠しボタンを押した。ウィィンと椅子は小さな唸り声を上げ、 ちょうど新幹線の椅子のように、リクライニングした。それに伴い、城ヶ崎千里の腕を固定している肘掛けが下へさがり、 腰掛けている位置と同じ高さまで来る。二秒後、城ヶ崎千里の躰は完全に水平になった。 「こ、こんなことして、ただで済むと思ってるの!」  ただ怖いそんな考えから、城ヶ崎千里は声を上げた。伊達健太はその上に馬乗りになった。 どさっと黄色い腹部に重みが掛かって、小さな声がした。 「叫んでも、誰もきやしねえよ。いいのか? そんな生意気な口きいてさ」  その時、伊達健太はスカート状になったスーツの間へ再び手を入れた。ギタリストが扱うように指を細かく動かし、 そしてすぐにスーツの上から彼女の、最も敏感である雌の突起を摘んだ。城ヶ崎千里は全身の汗が引くような恐怖を覚えた。 「ひいぃ! ああああぁ…! いやぁ…だめぇ!」  きりきりと搾るようにクリトリスは摘み上げられ、城ヶ崎千里は繊細な糸を紡いだような声を発した。 それは今までにない感覚であり、覚えたくない快感であり、あまりに強烈だった。 「お前だって、喜んでんだろ?」  伊達健太の躰は瞬く間に崩れて、城ヶ崎千里の上にすっぽり被さった。一つひとつの動作がとてもゆっくり展開されていく。 伊達健太に乱暴な調子で抱きしめられて、城ヶ崎千里は手足の拘束部の微かな痛みを感じ、そして眠らされる前の、 あの乱暴な口吻を思い出さされた。あの生ぬるい艶めかしい口吻は気持ち悪いの一言だった。 次ぎに至る事態を少しでも思い描こうとするものなら、マスクの中は吐瀉物で埋まり、その中で自分の顔が汚れたまま、 窒息してしまいそうな予感がした。  伊達健太は次ぎに乳頭へ噛みついた。 「やめてぇ!」  ガチガチと気持ち悪いそれに対し、城ヶ崎千里は為すすべがない。伊達健太は昆虫が蜜を吸うような、 そんな表情を露わにして、黄色い胸を吸った。スーツがガードしているから、痛みは感じない。 しかしそこに噛みつかれているという感覚だけは、確かに城ヶ崎千里の神経を刺激する。  「んんん…ああぁ…」 抵抗を忘れ、城ヶ崎千里は思わず甘く声を漏らした。その声に猿の如き伊達健太は、興奮した猿そのものだった。 「ひゃははは…」  スーツから顔を上げた伊達健太は、小学生並の笑い声を発し、両手で胸を揉み始めた。 にぎにぎにぎと、その手が妙に子供離れしていて――淫猥だった。がくがくと、拘束椅子が小刻みに揺れる。 バイザーの下で顔が苦悶している。呼吸する音が色気付いて、スーハースーハーと、激しく耳に入ってくる。 決して快くなく、苦しかった。  「ん…」 いつ終わったのか解らない苦悶から、いつの間にか開放された城ヶ崎千里が、重々しくバイザーを少し上げて、 自らの肢体を見た。伊達健太はまだ黄色いスーツの上に乗っていた。その男があることをしている。 それに気付いた城ヶ崎千里の顔は凍り付いた。彼は自らのズボンからベルトを抜くと、チャックを下げた。 そしてその間から、突き出された男根は欲情している。そこまでしてから、どすっと男の腰が降ろされる。 膨張した伊達健太のが城ヶ崎千里の躰に受け止められる。斬れないナイフが胸にあてられていた……。  ハッとした。決して不可侵のスーツの上からの感覚に、城ヶ崎千里は青ざめ、自分の目の前の画像が、 どんどんゆっくりになっていくのを感じた。そして次第に伊達健太の感覚が腰から胸へあがっていく。 伊達健太の表情は無表情で、スローモーションで展開される映像がそれを捉えている。 スローモーションとは逆に、花の成長を捉えた加速度的な映像のように、胸の恐怖心と心臓の鼓動がどんどん増えていく。 「素肌じゃなくても、これくらい出来るんだぜ」  反り返えるように怒張した男根は、城ヶ崎千里のおへその辺りから毛虫のようにゆっくりゆっくり這ってくる。 確かな感覚に彼女は戦慄を覚えた。そして、伊達健太の両胸が城ヶ崎千里の胸を中央へ絞り上げる。 強調された黄色い胸の谷間へ、毛虫は入る。伊達健太はそこで必死に男根を擦り付けた。 何度も何度もピストン運動を繰り返し、男根は充血し、城ヶ崎千里は気味の悪い感覚に声を上げ、 自慰具に使用されていることに憤った。 しかし、それもやがて弱々しく、そのうちに男根は白いものを城ヶ崎千里の首やマスクに発射した。 「きゃあぁ…」  バイザーへ向けて、一直線に飛んできた白濁した液体ほど、嫌な眺めはない。 千里はその男根に生命エネルギーを吸い取られたようにグッタリとした。  左耳元でガリッという音がする。ぴりっと頭の中に電気が走る。 【交信中】 バイザーの液晶ビジョンに文字が現れた。伊達健太がメガイエローのマスク左側にあるメンテナンス用の場所を開かせて、 数本のまとまったカラーコードを引き出すと、自らの変身装置デジタイザーにそれを接続して、慣れない手つきで いじっていた。 「あんた…何を…」 【ロック解除 リリースします】 「えっ?!」 その表示が出ると、マスクとスーツの境界で圧縮空気が抜ける音がする。 ”カチッ” 音がして、とても低い電子音が耳元で囁かれ、生ぬるい空気が顔を嘗めた。  男の手が女の顎骨の下側から、潜り込んでくる。耳の辺りから強烈に感じる光が飛び込み、それが頭の前へ後ろへ 展開していく。バイザーからの限られた視界がパッと開いた。 城ヶ崎千里の瞳が一番始めに捉えたのは、今なお、欲望に膨張した伊達健太そのものだった。  「え、何…ぬぐぐぐぐ…んんんううう、ぐわぁ」  瞳が恐怖に瞬きした次のシーンには、晒された素顔の城ヶ崎千里の口内へ、熱く燃えたぎる男根が侵入してきた。 マスクをリリースできることすら知らなかった城ヶ崎千里は、喉仏の先まで伊達健太を飲み込まされて、 城ヶ崎千里の呼吸は阻害されようとしていた。 「へっへえ…ほおら、どうだ…」  男根は猛々しく白い精液をまき散らして、城ヶ崎千里のぐぐもった呼吸と共に、精液は伊達健太の及ばない先に 滲入していく。苦く狂った生きた生き物の臭いと苦さがして、それが喉の奥へ入っていくのを感じたとき、 どんどんと身体を揺らし抵抗したが、それは全く無意味なことだった。 それは一生のような時間続き、伊達健太は何度も哮った。焼けただれた男根が引き抜かれて、 その先からまた白く苦く熱く辛いものが飛び出し、城ヶ崎千里とメガイエローを汚した。 ソフトクリームを塗りたくられたようになり、メガスーツまで汚れていく。  城ヶ崎千里は開けられない瞳を無理に開けたいとは思わなかった。もう目の前を見たくなかった。 頭の中で神経のコードが、次々にパチンパチンと音を立て切れていく。 目の前のもうクラスメイトとは呼べない存在のクラスメイトが自らを操って、女を壊している。 「じゃあ締めくくりいくか」  ところがそのとき……ピピピピ…その時凄まじく間抜けな電子音がハモって聞こえた。 手元の白いグローブの下で受信機が鳴っている。しかし手は拘束されている、束の間の助けの知らせが絶望の音のように 感じられた。城ヶ崎千里の瞳から涙が一条こぼれると、滲む瞳孔の先で、耳が声をとらえた。 「了解! 今行くぞ!」  ネジレジア発生の知らせに違いない無線を、伊達健太は受けていた。ドロドロに溶けていく意識の中で、 城ヶ崎千里は何がなんだか解らなかった。 ”パチン!” 「千里! 行くぞ、ネジレジアだ。先に行くからな」  伊達健太が言う。城ヶ崎千里は自分の拘束が音と共に解かれているのに気づくまで、数秒掛かった。 すっかり壊れた神経の意図が身体を重くさせて、金縛りにあったように城ヶ崎千里の躰は動くことが出来なかった。 「えっ」と呟くのが精一杯だった。伊達健太の性格の切り替わりに城ヶ崎千里は付いていけなかった。 そうするうちに女を無視して、男は走り出す。女の視界から男が消えようとしたとき、男の躰が赤く光った。 それから数秒して、城ヶ崎千里はどさっと椅子から躰を床に落とした。床にはひんやりとした感覚があり、 呆然とした瞳が山の上のような、近くの机上にある無機質なメガイエローの頭を捉えた。  風が吹いた。冷たい今の季節に似合わない風だった。涙が頬を伝って、しばらくして乾いた。 城ヶ崎千里はしばらくすると、左手でグローブの中の通信機にふれる。 「きゃああああ!」 不意に漏れた声はメガピンクのものだった。 「うあああああ!」 今度はメガレッドのものだった。  しばらく俯いて、嘔吐をすると、千里は顔を拭った。そして何かを思ったように、メガイエローのマスクを装着すると、 戦場へ赴くため、腰を上げた。  体中が痛くて、言うことを聞かなかった。しかしすぐそれも、デジタルスーツが解消し、らくに動き、 飛びまわることができるようになる。そして、メガイエローは敵と戦う決心をした。     ***完