平成14年8月23日・初版 平成15年11月21日・改訂(扉絵を追加)

女宇宙刑事アニー・「恥辱のショータイム」第4章/ぴ〜・著

イラスト:悪の司令官
 3時間ほど過ぎて、アニーは目が覚めた。決して体力が十分に戻ったわけではないが、それでも3時間の熟睡はアニーに気力と体力を 復活されるには十分だった。 (何か、脱出に役立ちそうなものはないかしら・・・) アニーは部屋を見回した。ベッドとトイレ以外は窓一つ無い部屋だった。天井はやや高く、飛び上がっても届きそうに無い。 光源は天井のライトだが、プラスチックのカバーと、それを覆う鉄格子のために取り外してショートさせたり、 武器として使うことは出来そうも無い。 ベッドといっても、単に形がそうであるだけで、毛布や敷布団といった身体を被うのに役立ちそうなものはなかった。 トイレは金属製で壊せそうも無い。 ふと、アニーはトイレの後ろの陰になっているところに、一本の細い針金が落ちていることに気づいた。 (これでドアを開けられるわ) アニーは針金を拾うとドアの鍵穴に差し込み、静かに鍵を開け始めた。 ”カチッ” 程なくしてドアの鍵が開いた。 (あとはタイミングね。廊下にどの程度、人がいるのかしら・・・)。 アニーはドアの窓から外の様子をそっと伺う。どうやら夜らしく、敵の気配は無い。唯一、3メートルほど離れたところに 銃を持った歩哨が立っているが、こちらに背を向けてボーっとしている。 アニーはドアをそっと開けると、静かに歩哨のそばまで歩いていき、背後から歩哨の首に腕をかけた。 不意打ちを食らった歩哨は、声も出せず締め落とされて気絶した。 (これで武器が手に入ったわ。あとは服も欲しいけど・・・脱出が優先ね) 敵につかまった場合、拷問などで体力が消耗するため、一番脱出の成功率が高いのが初日だ、ということをアニーは知っていた。 そこで、拙速ではあるが、脱出を試みることにしたのだ。 (武器は手持ちのマシンガンだけ。弾は20発ほど入っているわ。どこかで騒ぎを起こしてその隙に・・・という手もあるけど、 これでは騒ぎを起こしたあと丸腰になってしまうわ。多少危ないけど、このまま逃げたほうがよさそうね)。 気を失う寸前であっても、先ほど連行され、歩いた道は記憶していた。物音を立てぬように、静かにアニーは歩き始めた。 廊下の曲がり角では先の様子をうかがいつつ進む。 幸い、敵に遭遇することはなかった。 (この扉を出たところが駐車場のはずね。そこで車を1台確保して・・・) そう思いながら、アニーは扉を開けた。 予想に反して、駐車場は真っ暗だった。 (どこかに電気のスイッチがあるはず。まずはそれを探しましょう)。 アニーがドアを閉めた瞬間、強烈な光がアニーを包んだ。 光の源にはヘスラー指揮官と、戦闘員が30人ほど、アニーを包囲するかのごとく布陣していた。 「ハハハ。さすがは宇宙刑事。予想通り逃げ出すとは。今の我々がそんなに間抜けだと思ったのか」 (し、しまった!。別の出口を探ろう) アニーは牽制のため、手にしたマシンガンの引き金を絞る。 ”パフッ” マシンガンからは弾が出ず、異音がした。あわてて銃身の先を見ると、「残念でした」と書かれた旗が出ていた。 「馬鹿め。逃げると思う相手のそばに本物の武器を配置しておくと思うか?」 (に、偽物!) アニーの注意が一瞬そがれた隙に、上から巨大な網が落ちてきた。 「きゃあ!」 網自体に拘束力は無いが、アニーの行動を制約するには十分であった。戦闘員が群がってくるが、パンチやキックは網が邪魔になり 相手にあたらない。 アニーは網ごと絡めとられてしまった。 ***つづく