平成14年10月4日・初版

女宇宙刑事アニー・「恥辱のショータイム」第10章/ぴ〜・著

気が付くと、アニーは独房の中にいた。媚薬の効果は、気を失っている間に投与された中和剤のおかげで、きれいに消えていたが、 身体の芯にどんよりとした疲れがたまっているのがわかる。それでも、アニーは習性で部屋の中をとりあえず見回す。 先ほどの独房と異なり、中には鍵穴がない。 (やはり、前の部屋は罠だったのね) あとは、前の部屋と比べるとやや狭く、幅は1.5mほどであった。あとはベッド代わりの台とトイレ。 (しばらく寝て体力を回復させたほうが良いわね) アニーは四つんばいになりながらベッドのほうへ移動する。すると、どこかに設置してあるスピーカーから声が聞こえた。 「アアァッ、ハアッ、ハアッ・・アアッ・・・」 「きゃっ」 アニーは思わず耳をふさいだ。先ほど自分が晒した痴態を思い出したからだ。スピーカーから流れる声は、紛れも無く自分の声であった。 「ウォォォ・・・アアァッ、アアッ・・・」 アニーは頭を振った。 (イヤッ、こんなところ早く出たい。でないと、気がおかしくなっちゃう) テープは、いったん終わるとまた最初から再生される。アニーはすばやく計算すると、トイレの便座を大きな音を立てて外した。 そしてすばやくドアの上部に両手・両足で登った。 「なんだ、静かにしろ」 戦闘員がドアの窓から独房の中を覗く。アニーの姿が見えないことに気づき、慌てて独房のドアを開ける。 戦闘員が一歩中に入った瞬間、頭の上からアニーが飛び降りてきた。 「ぐぅっ・・・」 頭の上から蹴りを喰らった戦闘員はたちまち悶絶した。同時に入ってきた戦闘員にも蹴りを喰らわせ、同じように昏倒する。 アニーはすばやく部屋から出て左右を見回す。 「おい、逃げたぞ」 左のほうにいた戦闘員が声をあげる。 (ここからは出たとこ勝負ね) そう思ってアニーは廊下を右に走る。出口のわからないアニーは、とりあえず人気(ひとけ)の少ないほう、少ないほうに走る。 いくつ目かの角を曲がると、そこはドア1つしかない袋小路だった。後ろからは戦闘員が多数追いかけてくる気配がする。 アニーはドアを少し押し開けると、中が真っ暗なことを確認し、中に忍び込む。 そして、ドアのそばにあった荷物をドアの前に移動させ、とりあえずドアが開かないようにした。 (ふぅっ)。 荷物を移動させ終わったアニーが床に座り込むのと、部屋の電気がつくのがほぼ同時だった。 「!」 部屋には戦闘員はいなかった。いたのは、1匹の不思議獣だった。 「飛んで火にいる夏の虫とはこのことだな。俺の名は不思議獣モミモミ。女宇宙刑事専用に開発された不思議獣だ。アニーよ、覚悟しろ!」 アニーは、素早く部屋の中を見渡した。ドアは背後にある1つだけ。しかし、そのドアの前にはアニーが置いた荷物が邪魔をしており、 開けることが出来ない。残るは、不思議獣の背後にある窓1つ。 (不思議獣と戦って勝てるわけは無いわ。ここは、隙を見て窓から逃げるしかないわね) しかし、不思議獣の能力はアニーの想像を越えていた。 ***つづく