平成15年1月31日・初版

まぼろしパンティ外伝・「美少女探偵、夜の街に登場の巻」第1章/杏仁・著

 少し汗ばむような湿気と、それを打ち消すように時折吹く涼しげな風が肌に心地よい初夏。日が長いとはいえ、辺りは暗くなり、 市全体を覆うように夜の帳が訪れる。 日中の照りつける太陽は姿を潜め、代わりにゆるやかな光を放つ満月が顔を出し、それに合わせるように市街地全体が 宝石をちりばめたような輝きで月を迎える。  この風景だけを見ると街は平和そのものであると感じるかもしれないが、実は夜間の犯罪発生率が全国平均値を上回るという 少々危険な街である。 ―犯罪―。 ひと口にはこの言葉でくくることができるのだが、その内容は多種多様である。 殺人、誘拐、詐欺、放火、強姦……枚挙に暇(いとま)がないが、この街に住む人々は大なり小なり、毎日新聞記事を飾る事件と向き合って 生活しているのだ。  だから、この街は『日本一、犯罪の多発する街』などという不名誉な二つ名でよばれることもあるらしい。  だが、そんな街にも希望の光が差しつつあった。まだそれを知る者は少ないが、この春頃から突如として現れた謎の探偵が事件を 次々に解決させているらしく、少しづつ…少しづつではあるが犯罪の芽は摘み取られていた。  そして、今夜も街はずれにある夜の埠頭に凛々しい声が響きわたっていた……。 『さあ、もう逃げ場はないわよ!!観念して大人しくおナワにつきなさい!!』 その言葉遣いからして、声の主は女らしい。(…たまに女言葉を使う男もいるようだが、この場合はれっきとした女である。)…… なぜなら、月明かりに照らされたその姿が自らの存在を『女』であることを雄弁に語っていたからだ。  その女は見事な脚線美を赤いレザーのロングブーツでつつみ、ブーツと同色のレザーの手袋が二の腕の真ん中辺りまでを覆っている。 首には赤いマフラー、そして顔を隠すように奇妙なマスクを着けていた。―――パンティである。目の部分はカットしてあるが、 頭からパンティをかぶり、長い黒髪が普通脚を通す部分から左右に分けられている。  女のその格好だけでも充分に奇異に映るかもしれないが、その他に身に着けているものというと、パンティだけであった。 上半身には何もつけておらず、豊満な乳房はまる出しでほとんど裸と変わらない、『超』がつくほどの刺激的な格好である。 そして、月の光を浴びて浮かび上がった白い肌はめったなことではお目にかかれないと思われるほどの見事なプロポーションであった。 この女こそ、最近の事件を次々に解決させている探偵、『まぼろしパンティ』である。  昨日、市内の中小企業の社長が誘拐されたとの情報を入手したまぼろしパンティは、その推理力で独自に捜査を進めていた。 その結果、わずか一日で犯人の潜伏先を割り出し、こうして乗り込んだ次第であった。――もちろん、既に警察には連絡済みである。 あと数分もすればサイレンの音と共にパトカーが駆けつけるであろう。  追いつめられた二人組の誘拐犯は事態の展開のあまりの早さに困惑しながらまぼろしパンティに問いかける。 「…く…くっそ〜…ナマイキな……キサマは誰だ!?」 『犯罪の暗雲うずまくこの街に、正義の光をともす愛の使者!女探偵まぼろしパンティ!!』 誘拐犯の問いかけに、お決まりの文句を堂々と言い放つまぼろしパンティ。 「…まぼろしパンティだと?…だが、オレたち男2人にかなうと思っているのか?」 「まあいいさ。どうせ身代金の受け渡しは明日…。たっぷりと時間はあるんだ…お前を捕まえて、そのスゲエカラダをじっくりと 楽しませてもらうとするか。…ウケケケケ……ねえアニキ?」 舌なめずりしながら、欲望丸出しの提案をする子分に主犯格の男が同意する。 「(ニヤリ)…そいつはいいアイデアだ。…ようし、ヤっちまえ!!」 「ウヒョーッ!!」 ナイフを腰だめにかまえて子分が突進するが、ひらりとかわすまぼろしパンティ。かわすだけでなく、足をかけるのも忘れない。 ……ガッ…… 「うおっ!!…とっとっと……」 バランスを失い倒れかける子分にすかさず追い討ちをかけるように、まぼろしパンティは大技を繰り出す。 『フトモモラリアート!!』(バシーッ!!) 「ぐぅあっ!!」 これまで幾多のもの犯罪者たちをノックアウトさせてきた必殺技が顔面に炸裂し、吹っ飛ばされて気を失う子分。 しかし、子分に気をとられているうちに、音もなく忍び寄った主犯の男が後ろからいきなりまぼろしパンティの豊かな胸をワシ掴みにする。 『キャッ!!…ちょっ…あ…イヤッ!!』 「うおっ!こりゃスゲエ、見た目以上の爆乳だぜ!…すげえボインボインじゃねえか…」 『いやあっ、やめてえっ!!』 「そうはいかねえな。こんなすげえ乳、隠しもしねえでオレ達の目の前で派手に揺らしといて、そりゃあねえだろう?… へっへっへ……このボリューム、たまんねえなぁ…えぇ?」 男の手にも余るほどの豊かな乳房は、荒々しくこねまわされて上下左右に自在にその形を変える。 無遠慮に与えられる刺激に身をよじらせながら、それでも男の腕の中から逃れようともがくまぼろしパンティだが、 男の両腕はガッチリと彼女の乳房をつかんでいるのでなかなか逃れられない。 『ダメェ…ダメだったらァ!!…あっ……あっ……』 「ウヘヘヘヘッ……あのオッサンを誘拐したら、こんなすげえオマケが付いて来やがった。棚ボタとはこのことだぜ。」  じらすように男の人差し指が濃桃色の乳輪をなぞり、そのまま乳輪の中心にある突起をつまみ上げると、 ピクンと身体を震わせるまぼろしパンティ。 「おっ、乳首が立ってきたぞ。感じてるのか?なかなかいい感度じゃねえか?」 『いやっ…か、感じてなんか……あ…ああっ…』 男は両手で豊満な乳房をもてあそびながら、さらに体を密着させると、まぼろしパンティの首筋に顔を近づけて、 長い舌で首筋をベロリと舐め上げる。 『あっ……』 その際にシャンプーの香りが男の鼻腔をくすぐる。普通の男性ならそれを心地よく受け止めることができるのだが、 興奮している男は新たな欲望をかき立てられたらしく、顔を移動させて今度はなんと、まぼろしのよく手入れされたわきの下に 鼻を押し付けて、じっとりと浮かんだ汗の匂いをかぎ始める。 『…あっ…ダ、ダメ……いやっ…』  一応、出動の前にシャワーを浴びた後に、身だしなみとして気になる場所には市販のスプレー式制汗剤をつけているが、 やはりそこは女性である。わきの下をかがれて思わず羞恥の声を洩らしてしまうまぼろしパンティ。 「……ぐへへへ……いい匂いするじゃねえか。たまんねえぜ……」 倒錯的な行為に男はさらに興奮し、いよいよその手をパンティの中へと滑りこませようとしたその時、猛烈な勢いで締め上げられる感覚が 男の首の辺りを襲う。 それもそのはず。まぼろしが男にヘッドロックをかけているのだった。いくらなんでも、わきの下に頭をもってくればこうなることは 充分に予測されるのだが、男の興奮した頭では思いつかなかったのだろう。 『……っ!……ええーい!!……』 「……!?……ぐうっ…うっ…くっ…苦し……」  まぼろしはなおも両腕に力を込めて締め上げていくが、わきに抱えた男の頭(特に顔の部分)に、豊満な乳房の… 俗にいう『横乳/わき乳』があたっており、やわらかそうに『むにゅん』とたわんでその形を変えていることにはたと気づく。 (……あ!?こ…これは……そうだ、これなら……よーし!!) 「……くっ……ふむっ…んんっ……んー……」 男の方はまぼろしのヘッドロックから抜け出そうと、必死でジタバタともがいている。そう長くはもたないはずである……が……。  突然、それまで男を締め上げていたまぼろしの両腕がその力を弛めて、ヘッドロックを解いてしまう。 …しかし、次の瞬間には素早く身体の向きを変えて再び頭をつかむと、豊かなバストの谷間に押し付ける。 そして、両側から乳房ではさみ込むようにして男の頭を固定させる。 この体勢は先刻の『フトモモラリアート』などと並ぶ、まぼろしパンティのセクシーな技の一つである『オッパイベアハッグ』である。 ヘッドロックより、これまで何人もの犯罪者達を締め上げてきた技に切り替えて勝負を挑もうとするまぼろしパンティ。 『…さあ、これでどうかしらっ!?』 「……ふっ…ふむむ………んんーっ……んんー……」 男の顔面全体をやわらかな乳房の感触と甘い香りがつつみ込む。まさに天国のような光景だが、男にはそんな余裕はどこにもない。 息ができないのだ。苦しいどころの騒ぎではない。 「……むむむ……んむー……」 男は苦し紛れに密着したまぼろしパンティの身体を、正に手当たり次第にまさぐり始める。すべすべした背中から細くくびれたウエスト、 そして…みっしりとした肉付きのよいお尻に手を伸ばすと、いきなり尻肉をワシ掴みにして勢いよく左右に割り裂く。 すると、普段はお尻の谷間にはさまれて隠れているTバックの細い布地が現れる。 『キャッ!!…な、何を……』 苦し紛れとはいえ、予想外の反撃に思わず顔を赤らめてしまうまぼろしパンティ。しかし、ここで手を弛めるわけにはいかず、 恥ずかしいのに耐えながら一層強い力で男の顔を乳房で締め上げる。 「…………ん…………っ……」 とうとうその時がやってきたようだ。呼吸を封じられ、酸欠状態に陥った男はついに気を失って落ちてしまう。 まぼろしの尻肉をかき分けていた指先からも力が抜けていく…と同時に引っ張られていたお尻がまるでゼリーのような張りと 弾力をたたえながら『ぷるるん』と元の位置に戻っていく。 『…ふうー……やっと終わった…かな?最後、ちょっと危なかったけど…ま、なんとかね。』 持って来たロープで犯罪者二人組をぐるぐる巻きにして縛り上げて一息つくまぼろしパンティrだったが、そこであることに気づく。 『よかったあ……今回はパンティ脱がされなくて。ここのところ3回連続だったからなァ……』 過去最近の出動時に、故意にしろ、事故にしろ3回連続でパンティを脱がされてしまい、そのたびに犯罪者やその場にいた被害者達に すべてを見られてしまっていただけに、今回はそれがなくて安心したようだ。 ほとんど裸と変わらない…と思うかもしれないが、やはりそこは乙女である。羞恥心のほうが先に立ってしまって、 パンティだけは……という思いがあるのだろう。 だが、油断は大敵であることを、今夜あらためて思い知ることとなる………… まぼろしパンティは、犯人が潜伏していた建物の奥のドアを開けると、そこに囚われていた被害者(中小企業の社長)が 猿ぐつわをされた上で縛られているのを見つける。 『大丈夫ですか?今助けますからね。』 見事な手さばきでロープを解いていくまぼろし。被害者はいきなり現れたナイスバディの女が自分を助けてくれたのだと悟ると 歓喜の声をあげる。 「ありがとう。助かりました。……もしかしてあなたが、噂のまぼろしパンティ…ですか?」 『……そうですね。さあ、犯人も捕らえてあります。あとは警察が来るのを待つだけ。とにかくここから出ましょう。…立てますか?』 二人が建物から出てくるのとほぼ同時に、パトカーのサイレンが近づいてくるのが分かった。 『さあ、もう大丈夫ですわ。あとは警察におまかせね。』 まぼろしパンティは、埠頭の資材置き場の陰から自分の乗ってきたバイクを出してくると、それにまたがってエンジンをかける。 『じゃあ社長さん、あとはよろしくねっ!!』 「…!?ああっ!!まっ…待ってください、まぼろしパンティ!!」 まだなにかあるのか、思わず呼び止めようと手を伸ばした社長さんの右手がまぼろしのTバックのパンティをつかんでしまう。 だが、バイクを勢いよく発進させようとしたために、パンティは前後に引っぱられる力に耐え切れず、ものすごい音をたてて 引きちぎれてしまった。 (ビリリリィーッ!!) 『キャアーッ!!』 例によって思わず悲鳴を上げるまぼろしパンティ。 パンティだけで乗っていてもかなり刺激的な光景なのだが、そのパンティも不慮の事故とはいえ、引きちぎれてしまい… ノーパン…いや全裸になってしまったまぼろしパンティ。 このバイクはかなりの大きさで、寝そべってお尻を突き出すような格好で乗らなくてはならないため、パンティがやぶけた次の瞬間から まぼろしパンティの秘所もお尻の穴も無防備に丸見えになってしまった。それでも手で隠して乗るのは危険なので、 不本意ながらも過激なサービスをしながら遠ざかっていくまぼろしパンティであった。  一方、図らずも命の恩人のパンティを引きちぎってしまった社長さんは、バイクにまたがったまぼろしパンティの秘所とアナルを しっかりと脳裏に焼き付けながら、自分の手の中にある、その役目を放棄したパンティを確認すると、今回は誘拐されたことも 悪くはなかったと思いながら近づいてくるサイレンを耳にして立ち尽くしていた。  約15分後、自分の住むマンションの地下駐車場へとバイクを止めたまぼろしパンティ。まわりに誰もいないのを確認すると、 素早く階段を駆け上がる。途中、他の住人に見つからないように柱の陰から廊下や階段をうかがいながら……。 そして鍵を開けて自分の部屋に戻る。 『…ふぅーーっ……』 ドアの鍵を閉めると、玄関に立ったまま大きな息をつく。そしてジッパーを下ろしながらブーツを脱いで部屋へと上がる。 『…ハア………今回は大丈夫だと思ったのになぁ……んもう……』 手袋とマフラーをはずして、最後に頭からかぶっているマスクパンティを取ると長い黒髪がはらりと宙に舞う。 首を左右に振りながら髪をかきあげたその素顔は―――。  藤 寿々美―――。 数ヶ月前まではクライム学園の女子生徒であった彼女は、この春から大学生となり、それに伴ってこの街でひとり暮らしをしている。 部屋の奥にある備え付けの鏡を見てみると、そこには一糸まとわぬ裸身の自分が映っている。その姿を見ながら先程までの出来事を 思い出して、顔を赤らめる寿々美。 わざとやったのではないにしろ、またもやパンティを脱がされノーパンでバイクにまたがる羽目になってしまった。 本人の意思がどうあれ、その姿はもはや刺激的を通り越して『過激』である。全裸でバイクにまたがるグラビアなどはあっても、 実際に公道に出るというのは古今東西、例がないだろう。 いくら犯罪の撲滅に協力しているとはいえ、普通なら逆に自分が警察に追われることになる。  だが、何とか誰にも会わないで部屋まで帰り着くことができたことは、不幸中の幸いだった。 まぼろしパンティとして活動するようになって何年か経つ。これまで様々な事件を解決させてきたが、常に羞恥心と隣り合わせであった。 今日もそうだったが、パンティが脱げたり、脱がされたりしてしまったときは、いつも平常心を失ってしまう。 マスクで顔を隠していてもやはり恥ずかしいのだ。 『やっぱり……けっこうのお姉様の言うとおりなのかな……?』 ひとりつぶやきながら、バスルームに入っていく寿々美。出動前に一度シャワーは浴びていたが、汗もかいていたし、 なにより見ず知らずの男にさわりまくられた身体をもう一度清めておきたいという気持ちが強かった。  コックをひねり、熱いシャワーを浴び始める。お湯が寿々美の白い肌をつたって流れ落ちていく。 一通りお湯で肌を温めたら、ボディソープをたっぷりと使ってゆっくりと泡立てながら身体を丁寧に洗っていく。 その間も寿々美は何かを考え込んでいるようだった。    ―――今から数ヶ月前、大学に進学することが決まり、この街でひとり暮らしをすることをけっこう仮面に報告したときのことであった。 寿々美の行き先を聞き、その街は犯罪の多発する場所であるということを知った上で、けっこう仮面は寿々美に問いかけた。  その内容は、『その街へ行ってもまぼろしパンティとして活動するのか?』というものであったが、正義感の強い寿々美の答えは当然、 『イエス』であった。 「いい?寿々美ちゃん。今度は、さすがに私達も助けに行くことは難しいと思うの。 …そりゃあ姉妹の誰かが時々は助けてあげられるかもしれないけど、それはかなりの不確定要素よ。 だから、これまで以上に一人でがんばらなくちゃいけないの。 …そのために、たとえ一人でもピンチをチャンスに変えられるくらいのノウハウをこれから教えてあげるわ。」 ……ということで次の日からけっこう仮面六姉妹による秘密の特訓が始まった。  この頃、新しい学園長のもと、学園内は平和そのものであった上に進学先の大学も決定していたため、空いている放課後を利用して 特訓がおこなわれた。形としては、週に3日、6人のけっこう仮面が交替でセクシーな技を伝授するというものであった。  特訓にやってくるけっこう仮面たちは大体2人か3人だったが、不思議と彼女らの言動には食い違いというものが まったく存在しなかった。 普通、6人もいれば考え方などは違ってくるはずなのだが、見事なまでに彼女らにはそれがなかった。 寿々美にしてみれば、彼女らの正体を知らないので『毎日同じ人が来ているの???』などと思えるほどであり、 彼女らの正義に対する思いの強さを再確認することができた。  しかし、寿々美には致命的ともいえる弱点が存在し、そのせいで技のキレがいまひとつ……ということが多々あった。 その弱点とは『パンティ』である。…まぼろしパンティ=藤寿々美は、パンティを脱がされてしまうと、恥じらいから、 注意がすべて股間にいってしまい、動きが鈍ってしまうのである。 けっこう仮面に憧れてなったまぼろしパンティとはいえ、彼女たちのようにすべてをさらけだして戦うには恥じらいが大きな枷となり、 やはり『パンティだけは…』という思いがあるのだろうか……   その時にけっこう仮面と交わした会話が次のようなものである。 「ねえ、寿々美ちゃんって彼氏いないの?」 『えっ!?…あ、はい、その……まぼろしパンティとかしてると、忙しくて……』 「やっぱりね。だって、パンティ脱げたときの恥ずかしがり方がすごいもの。」 『だ、だって…むやみに見せてはいけないとこだし…それに…やっぱり恥ずかしいし……』 「そうねえ、彼氏でもつくってエッチしちゃえばいいのよ。そうすれば少しは余計な恥じらいとかなくなるから。」 『…そ、そんな……』 「他のみんなはどうかは知らないけど、少なくとも私はそうしたよ。…あ、でも逆効果かな?…別の意味で……」 『?…どういうことですか?』 「だって寿々美ちゃん、あたしより胸おっきいじゃない。ブラ、何カップなの?」 『えっ!?…そ…その……』 「恥ずかしがることないわよ。女同士なんだから。…いいじゃない、教えなさいよ。」 『は…はい……その……え、Fカップです……』  恥ずかしそうに、最後の辺りは消え入りそうな声で自分のバストのサイズを教える寿々美。 「Fカップ!!…やっぱりね。…つまり、こーんなスゴイ身体の彼女とエッチしちゃったらきっと彼氏が毎晩夢中になって 離してくれないわよ。」 『…や…やめてください……そんな……』 「若いからエッチに夢中になりすぎて、まぼろしパンティの出動回数が減っちゃうかもね。」 『えっ?…お姉様は、そんな経験あるんですか?』 「あたし?…んふふ……それは秘密。正義の味方と恋愛の両立は大変なのよ。だから、寿々美ちゃんもがんばってね。 あなたなら出来るわ。」  ――――身体を洗う手を止めて、けっこう仮面の言葉を思い出す。 大学に通うようになってから3ヶ月が経とうとしている。やはりその美貌が惹きつけるのか、交際を申し込んでくる男性は後を絶たない。 しかし、今はまぼろしパンティとしての責務がある。それに、寿々美自身がまだ心を許してもいいと思える男性がいなかったのも また理由の一つである。 『…やっぱり……ううん、そんなことないわ。……さあ、また明日もがんばらなきゃ。』 けっこう仮面の言葉どおり、一瞬、まだ見ぬ恋人を思い浮かべようとした寿々美だが、それを振り払うかのごとく、 まぼろしパンティとしての決意を新たにするのであった。 ***つづく