平成15年3月14日・初版 平成17年7月20日・改訂(CaraSiteEVE提供の写真を追加)

キューティーハニー異次元編・「響け歌声!魔界の街で…」/東日新聞 早見・著

写真提供:CaraSiteEVE
 俺は東日新聞の事件記者、早見青児だ。 あらかじめ断っておくが、この手記の内容は読んでいる君達にとって、最近のことではなく、30年ほど昔の話になるはずだ。 20世紀の終わりには、キューティーハニーの内容も様々に変更されて、Fが付いた少女漫画の主人公になったりするそうだが、 この手記はあくまでも1970年代の少しエッチなキューティーハニーに基づいて書かれている。 最も、主人公のキューティーハニーは如月博士の傑作アンドロイド。何年経っても年を取ることはないから、 違和感はないと思うのだけど…何か、おかしなところがあればどんどん俺に教えて欲しい。  さて、「パンサークロー」との闘いに明け暮れていたキューティーハニーだったが、シスタージルを倒したことによって、 この闘いに一区切りがついた。もちろん「パンサークロー」が壊滅したわけではなかったが、首領のパンサーゾラは一時期、 完全に鳴りを潜めていた。 ただ、なにしろ俺は事件記者。犯罪の第一線にいるわけで、とても平和と呼ぶには程遠い毎日が続いている。 そんなとき、俺のまわりで大きな事件が3つ起こった。 一つは、葛城博士が、何者かに襲われる事件が発生したことだ。 葛城博士は、如月ハニーの父…如月博士の後継者といわれる天才科学者である。 最近は、如月博士の大発明…(空気から元素を取り出し、何でも作ることの出来る)空中元素固定装置の再現に着手していた。 だが、空中元素固定装置の再現は、事実上困難を極め、中断…そして断念されたらしい。 身の危険を感じた葛城博士が、途中でしり込みしてしまったのだ。 ここまでは命を守る上で正解だったのだが、天才科学者であるにもかかわらず、葛城博士は致命的なミスを犯した。 開発途中の空中元素固定装置を完全に葬ってはいなかったのだ。 葛城博士が襲われた日の状況は、如月博士の事件と酷似していた。俺が取材のために研究所を訪れたとき、既に博士は深い傷を負い、 作りかけの空中元素固定装置は盗み出された後だった。博士は俺の手を握りながらこういった。 「新聞記者の方か…?大変なことになってしまった…開発途中の空中元素固定装置…中でもリモートコントローラーを盗まれてしまった。 装置の方は私が居なくなればスクラップ同然…誰にも完成することは出来ない。だが…リモコン…」 ここで大きく葛城博士は咳き込んだが、必死の形相で続けた。 「頼む…リモコンだけでいい…必ず取り戻してくれ。あれも…まだ未完成なのだ。エネルギーの取り入れ方法が…余りに危険なのだ…」 博士の説明によれば、リモコンの機能はほぼ完璧。空中元素固定装置を意のままに操ることが出来る。 ただ、問題なのは、リモコン自体のエネルギー取り入れ方法が、未完成であり、危険を伴うことだ。 急激に大量の水素を取り入れるため、周囲の空気中だけでなく、使用者の体内からも吸収してしまう。 「それから…私を襲ったのは…『パンサークロー』の関係組織…『「コブラ・ファング」』だ。同じサイボーグだが…男だけの組織だ。 頼む…ぐうっ!」 この言葉を最後に、博士は俺の腕の中で気を失った。 しかし、『コブラ・ファング』(コブラの毒牙)とは…。全くなんてことだ!パンサークローがおとなしくなったかと思えば、 すぐに次が現れる。 とにかくハニーと話し合った上で、リモコンの行方を探さなければ…。こう思った俺は丁度駆けつけて来た警察に後を託し、 とりあえず新聞社に取って返した。 社では、俺の帰りを待っていたかのように、第二の事件が発生した。 葛城博士の事件で頭が一杯の俺を、いきなりデスクが呼び止めた。 「おっ、早見君…『コブラ・ファング』って会社知ってるか?君の同期の毛草君が退職して、そこに行くそうだ。 たった今、辞表を置いて出て行ったところだ。それから、これを君に渡してくれって…」 おいおい、この忙しいのに同期の毛草が退職かよ…って、ええっ!「コブラ・ファング」!? 同期入社の毛草は変り種で、どこから仕入れるのか、未来技術についてかなりのネタを持っていた。 先日も21世紀の通信技術をスクープしている腕のいい記者だから、突然退職したといわれてもピンと来ない。 特別、仲が良かったわけでもないから、理由も判らない。ただ、俺は「コブラ・ファング」という会社名が妙に気になった。 偶然にしては出来過ぎている。 俺は早速、屋上に上がり、毛草が残していった封筒を開けてみた。中には手紙が入っている。次が手紙の全文だ。 *********************************************************** 早見青児様  突然のことで驚いたと思います。実は「コブラ・ファング」という会社に入社が決まり、東日新聞を辞めることになりました。 ところが今日になり、「コブラ・ファング」という会社の正体が犯罪組織であること、そして君の追っているパンサークローに 関係している組織だということが判ったのです。おそらく、僕は異次元に連れて行かれ、犯罪の手伝いをすることになるでしょう。 後悔しました。誰でも犯罪組織の手助けをするなんて、いやなことですから…ただ、考えてみれば、僕も事件記者の端くれです。 ここは悪人になった振りをして、潜入取材を敢行することに決心しました。 これから定期的に内部の動きや内容を君宛に報告します。君の持っているネタと併せて、是非、スクープに結び付けて下さい。 それでは活躍を祈ります。                   元東日新聞 事件記者  毛草 *********************************************************** こりゃ、大変だ…。俺は早速自宅に電話をかけた。もちろんハニーにこのことを伝えるためだが、 なんと…ここで第三の事件が起こっているのが判った。 電話にでたのは弟の順平だった。小学生のくせに「愛の戦士」と称してハニーに言い寄るマセガキだ。 「あっ…兄上。ハニーお姉様なら、出掛けてて留守ですよ。なんか、『コブラ・ファング』って会社を調べに行くとか、行かないとか…。 兄上、一緒じゃなかったんですか?うわっ、父上…何をなさるのです?!ぎゃっ!」 順平の叫び声とともに電話の相手が変わった。親父の団兵衛だ。小柄で、ツルッ禿げで、間抜けなくせに、年甲斐もなくハニーの尻を 追い回すとんでもない親父だが、武芸併せて百段の猛者なので、それなりに頼りにはなる。 「ハニーちゃんか?んっ、なんだ…青児か…お前に用はない。ハニーちゃんの声を聞きたいので、早く電話を代わりなさい!」 おいおい、これが息子にいう言葉か…?半ば呆れた俺だったが、気を取り直してハニーの行き先を訊いた。 「じゃから、『コブラ・ファング』を調べに行ったと…お前は一緒じゃないのか?なぬぅ〜、パンサークローの関係組織…場所はどこじゃ? ハニーちゃんの助太刀に駆けつけなければ…なんといってもこの団兵衛、柔道十段、剣道…(ガチャ!)」 俺は容赦なく電話を切った。何せ併せて100段だから、一つ一つ説明させてはキリがない。 とにかく、「コブラ・ファング」の所在地を確かめなければ始まらない。俺は資料室に飛んでいき、各種名鑑をくまなく調べてみたのだが… 「コブラ・ファング」なんて会社はどこにもなければ、組織すら載っていない。誰に聞いても、まるで判を押したように 「知らない」という答えが返って来るばかり。まるで手掛りがないのだ。これではハニーに協力するどころか、 連絡をとることすら出来ない。 三日三晩寝ずに調べたが、新たに判ったことは、何もなかった。これだけでは…どうにもならない。 そんな悶々とした時間を過す俺の元へ、ついに手紙が届いたのだ。そう、それは唯一の手掛り…毛草の潜入手記だった。 俺は封筒を引き千切り、手紙を読んだ。あわてて書いたらしく、走り書きだし、内容も飛び飛びだったが、凡その状況を つかむことは出来た。俺は自分の知識も付け加えた上で、手紙を文に直すことにした。 なにしろ手紙の内容はハニーと「コブラ・ファング」の闘いについて書かれたものだったからだ。 それでは読んで頂こう。異次元でのキューティーハニーの闘いについて…。 ***********************************************************  全体に薄暗いスモークを被せたような…生気のない街。これが、異次元の街だ。 建物は未来の作りを思わせるが、鉄筋コンクリートと合成プラステックばかりで、まるで温かみがない。 昼夜の区別があり、朝には太陽も昇るが、決まって薄曇だから、全く清々しさを感じない。変わることがあるかどうかも判らないが、 今は暑くもなければ、寒くもない、梅雨のように生温い空気が澱んでいるジメジメした季節のようだ。 異次元に街を作り出した「コブラ・ファング」によると、この場所に近未来…21世紀の日本の姿を映し出し、様々な未来技術を 取得していくつもりのようだ。当然、環境は「コブラ・ファング」が考える未来図に沿って作られている。 「コブラ・ファング」により半ば強制的に、あるいは騙されて、現世から連れて来られた人間は、様々な地位、業種、趣向の者達、 それも第一線で働いた過去を持つ者達で構成されている。 仕事は自分達の得意分野が割り当てられていたし、内容も決して奴隷のような強制労働ではない。娯楽施設もあるし、監視も緩いから 窮屈なわけでもない。 ある意味、自由で、楽して、保障された生活を送ることが出来るのだから、疲れるはずもないのだが…。成功もなければ失敗もない、 目的を見出せない毎日が続けば、どうしても無気力になってしまう。 だからこの街で暮らしている人間達は、そろって、目に力がなく、黙々としていて、影が薄い。 自分に与えられた仕事は現世と同じ仕事…新聞記者だ。 元締めが犯罪組織である上に、無気力な人間ばかりなので、犯罪が起こるはずもないし、記事を書かなくても許されるから、 仕事自体にやる気はなくなる。 ただ幸いなことに、取材が許されるから、比較的「コブラ・ファング」の考えを深く知ることが出来るし、常に行動をともに出来る。 また、それを現世に伝える(もちろん発覚すれば、ただでは済まないだろうが)使命もあるから、人間として無気力にはならずに済む。 「コブラ・ファング」の最終計画は先程も述べたように、バーチャルな未来の姿を作り出すことだ。 そこは、より便利で、より無気力な世界なのだが、絶対に必要なものがある。 如月ハニーの体内にある空中元素固定装置。どうやら如月ハニーは既に街の中に潜んでいるようだが、どこにいるかは判らない。 空中元素固定装置があれば、全ての物を生み出せる。代わりに人間は夢と努力を失い、完全に無気力で無感動な生きているだけの人間… つまりは動物にならざるをえない。 次第に「コブラ・ファング」の色に染まっていく人間達。 ただ、その中にも、未だに生気を失ず、生き生きとしている人間がいないわけではない。運転手、婦人警官、同じ記者といった 各種の仕事についている何人かの若い女性達だ。彼女達の笑顔と垣間見せる健康的なお色気は、自分達だけでなく、他の人間が元気を 取り戻すためには必要なものだった。 もちろん趣旨に反する彼女達の存在は邪魔なだけだ。当然、「コブラ・ファング」は全力で彼女達を探し回っているが、 未だに誰一人、捕まえることが出来ないでいた。 そして今日、ついに「その内の一人が飲み屋のステージで歌う歌手…シンガーハニーという女らしい」との情報が入ったのだ。 街の外れにある飲み屋は、今夜に限って満員だった。もちろん、情報をつかんだ「コブラ・ファング」のサイボーグも混じっている。 怪力のゴリラファングと全身鋼鉄製のハンマーコブラだ。 動物や道具の姿をしているサイボーグは、初めの内でこそ、その異様な格好から恐れられる存在だったが、案外慣れれば平気なものだ。 人間も「コブラ・ファング」も寡黙だから、会話を交わすことはないし、人間に落度がなければ「コブラ・ファング」が制裁を 加えることもない。互いに互いを、道端の石コロくらいの存在にしか思っていないのだ。 いきなりステージにスポットライトが当ると、アップテンポで軽いリズムの音楽が流れた。 ”チャ・チャ・チャ・チャッチャラチャ・チャラ〜チャチャア〜♪” 心が弾むような少しセクシーなイントロで、客席の人間達の顔に、生気がみるみる蘇る。 ステージには、赤いやや短めのヘアースタイルに、裾広で半袖半ズボンのジャンプスーツを着たアイドル歌手が登場し、 キュッとしまった腰を大胆に振りながら歌い始める。 「このごろはやりのおんなのこお〜♪おしりのちいさなおんなのこお〜♪」 かわいい歌声、セクシーな振り付け、そして健康的なボディに、無気力で無関心な者などいるはずはない。 客席の誰もが失った魂を取り戻し、視線を釘付けにした。そのとき…。 「ついに見付けたぞ!生気を戻しているのはこの女…シンガーハニーだ!」 「歌をやめろシンガーハニー!人間どもをたぶらかすのはやめるのだ!貴様、一体何者だ!」 ゴリラファングとハンマーコブラ…「コブラ・ファング」のサイボーグだ。 ゴリラファングは座っていたイスを、軽々と舞台のシンガーハニーに向かって投げつけた。 「こっちを…(ガシャ〜ン!)」 シンガーハニーは歌の途中で、ヒラリと身を翻し客席に飛び降りた。イスは無人の舞台に当ると、粉々に砕け散る。 「皆さん…私の歌を最後まで聴けなくて、残念かもしれないけれど…今日のところは、危ないから逃げた方がいいわ!私はシンガーハニー。 誰もが元気になれるよう、いつでも歌うわ!よかったら、また今度聴きに来てね!」 これだけの言葉とあの短い歌だけで、シンガーハニーはその目的を果たしていたのだ。 いわれた通り人間達は、潮が引くように、客席から逃げ出した…ただ、そのスピードは最早無気力な人間のものではなかったからだ。 「ちっ、人間どもに余計な感情を持たせおって!我々の計画を邪魔するものは許さん!」 ゴリラファングが吼えた。名前の通りゴリラのサイボーグだが、姿もゴリラそのもの…いや、むしろアトラクションにいるようなゴリラの 着ぐるみのようだ。知能は大したことなさそうだが、怪力はその黒光りする筋肉からして、「コブラ・ファング」随一のはずだ。 ゴリラファングは自分の胸をドンドンと拳で叩き、気合を入れると、シンガーハニーに飛び掛った。 ゴリラファングの腕が届く前に、シンガーハニーは軽く床を蹴り上げて、舞台の上に飛び乗った。ゴリラファングは、 勢い余って頭から客席のイスに突っ込み、イスを粉々にした。 「うふふふ、力だけでは私を捕まえることなど出来ないわよ…バカでのろまなお猿サン!さあ、ここまでおいで…!(ペン・ペン・ペン)」 シンガーハニーは形の良い小振りなお尻を突き出すと、掌で軽く叩いた。こしゃくでお色気十分の挑発である。 「けっ、俺様に任せろ!」 反対側からハンマーコブラが、舞台に飛び乗り、シンガーハニーに詰め寄っていく。 ハンマーコブラは両腕と頭がハンマーの形をしている鋼鉄製の不気味なサイボーグだ。打撃技が得意であることは一目瞭然だが、 戦闘力は未知数だし、他にも武器や技を持っている可能性が高い。 舞台の上と客席からはさまれたシンガーハニーは進退窮まったかに見えたが、不敵に笑うと先程までの可憐な歌声と打って変わった 凛々しい声で叫んだ。 「あらっ、挟み撃ちにするつもり?それなら仕方がないわ。二人まとめて相手をしてあげましょう。あるときは異次元の住民、 またあるときは人々の心を癒すアイドル歌手、しかして、その実体は…」 シンガーハニーはチョーカー(首輪)に着けたハートのアクセサリーをつまみながら飛び上がった。 「ハニ〜・フラッシュ!」 掛け声とともに、ハートのアクセサリーから、まばゆいばかりの光が放たれる。衣装の全てが千切れるように飛び散り、 シンガーハニーは一糸まとわぬ全裸のままで、スローモーションのようにゆっくりと宙返りした。白い素肌の上を、光りが次々に色を決め、 舐めるように覆っていく。 そして…着地したのは、光り輝くシルバーフルーレを持つ、赤毛の女戦士。胸の谷間を大胆にダイヤカットした、 赤黒のピッタリとしたボディスーツで身を包んでいる。 「…愛の戦士キューティー・ハニーさっ!コブラ・ファング…覚悟しなさい!」  キューティーハニーは長い足を振り上げると、詰め寄るハンマーコブラにハイキックをあびせた。しなやかに伸びたつま先は、 カウンターでハンマーコブラの顔面を捕らえ、客席まで弾き飛ばした。 転げ落ちるハンマーコブラを不敵な笑顔で見送ると、キューティーハニーは振り向きざまに、舞台の下から足をつかもうとしている ゴリラファングの腕を思い切り踏みつけて、そのまま顔面を蹴り上げた。ゴリラファングはその巨体を捲り上げるようにしてひっくり返る。 客席のイスはゴリラファングの体重を支えきれず、粉々になった。 「おやおや、シルバーフルーレを使うに値しない相手…男のくせにパンサークローより手応えがないわ! お前達にはキックだけで十分なようね!さあ、もっと痛めつけてあげるわ!どこからでも、かかっていらっしゃい!」 右手で輝くシルバーフルーレをかざしながらキューティーハニーが高らかに笑った。 それは完全に「コブラ・ファング」を舐め切った嘲笑だ。 ゴリラファングはしたたか打ち付けた後頭部をさすりながら、ヨロヨロと立ち上がった。その動作は完全に戦意を喪失している。 反対側では、もしも表情があるならば、激痛に顔を歪めているはずのハンマーコブラが、両腕を上げ、降参のポーズをとっている。 「あら…もうおしまい?ずいぶんと簡単に参っちゃうのね…」 キューティーハニーは舞台の上から二人の見下ろしながら、少々呆れたように声をかけた…が、そのとき鋭い連続音とともに 先端の尖った無数の鉄片が飛んで来た。 「…はっ!これは…鉄釘!」 ハンマーコブラのポーズ、それは降参などではなく、逆襲のポーズだったのだ。ハンマーコブラは両腕から、鉄釘を次々に投げている。 (シュン、シュン、シュン…) 不意を突かれ、シルバーフルーレで払いのけようとしたキューティーハニーだったが、この判断は最悪のものだった。 連続で飛んで来る釘の中にはコの字型をした鎹(かすがい)が混じっていた。鎹は次々に絡みつくと、ついには絡め取り、 背後の壁にしっかりとフルーレを縫い付けてしまったのだ。 「ああっ…しまった!うっ、また!」 (シュン、シュン…) フルーレを気にしている余裕などはどこにもない。ハンマーコブラの釘攻撃の前に、最大の武器を失ったキューティーハニーは 身をよじりながら、かわすのが精一杯だ。 「…くっ!…ふっ!…はっ!…(ガシッ!)あっ、ゴリラファング!」 まるで踊らされているかのように逃げ惑うキューティーハニーはいきなり背後から両手首をつかまれた。 キューティーハニーの背後に回り込んでいたのは、先程ノロノロと立ち上がったゴリラファングだ。 イメージと違い、本来ゴリラは敏捷な動物である。このときのゴリラファングの動きも本物顔負けの素早さだった。 「くっ…放して!」 ゴリラファングは両手首を捕まえたまま、キューティーハニーの腕を一旦上に引き上げると、物凄い怪力で背後に引き倒そうとした。 万歳をしたままで背後の敵との力比べ…。 キューティーハニーは人間の4倍のパワーを持つ。だが、相手が「コブラ・ファング」中随一の力を誇るゴリラファングとなると、 不利な体勢も相まって、分が悪い。 「くっ…このゴリラファング…頭が悪いくせに…なんて馬鹿力なの…」 ゴリラファングのパワーの前に、ジリジリと背を反り返らせていく。 とにかく、これでキューティーハニーの動きは完全に止まってしまった。 このときを待っていたようにハンマーコブラが足元に近づいた。 「ふっふっふ、さあ…これで文字通り釘付けだ!」 床をしっかり踏ん張っているキューティーハニー。その足首にコの字型の鎹をあて、トントン打ち付けていく。 気付いたときには、まるで罠にはまった白ウサギのように、ブーツが床に縫い付けられてしまった。 「あっ、ああっ〜!足が…」 俊敏さが持ち味の一つでもあるキューティーハニーだが、足を留められてはその俊敏さも生かせない。 「足のことなど気にしている余裕はあるのか?ふっふっふ、俺様のパワーの方が問題だろう…どうだ?キューティーハニー!」 力比べは圧倒的にゴリラファングが優勢。大きく背を反らせたキューティーハニーを、上から押さえ込むように力を込めて来る。 もう絶体絶命だ。 全体重をかけたゴリラファングは、ついにキューティーハニーの両手を床に押さえ込んだ。 すぐさまハンマーコブラがやってきて手首を鎹で床に留める。 四肢を床に留められ、仰向けで弓なりに反り返るキューティーハニー。綺麗な曲線を描いた、肉体ブリッジの完成だ。 そこだけ曲線から張り出した豊満なバストが、ブリッジの上で細かく震える。 ゴリラファングとハンマーコブラはぐるぐるとキューティーハニーの周りを歩きながら、様々な角度からブリッジを見学している。 「ふっふっふ、凄い乳をしてるな…しかし、窮屈そうだぞ。どれどれ…少し楽にしてやるか?」 毛むくじゃらな腕でゴリラファングが、コスチュームのダイヤカットを左右に引き裂いた。 (プリリ〜ン!) 「ああっ、いやあ〜ん!」 はちきれんばかりの白い乳房と、ツンと天を向いたピンクの乳首が、自由になって踊り出す。 「ふっふっふ、ピッタリしたコスチューム。これでは形まで判ってしまうぞ!いいのか?キューティーハニー」 ハンマーコブラが股間に手をやり、お尻から下腹部まで割れ目を指でゆっくりなぞる。 (ツゥ〜!)「何をするっ!…はっ、そっ、それは…ううっ、やめて!」 まるでハンマーコブラの指を追いかけてでもいるように、コスチュームが鋭利な切り口を見せて、一直線に裂けていく。 あっという間に、多少薄めだが美しく生えそろった黒いヘアーが剥き出しになった。 ハンマーコブラの目が淫らに輝く。 「ふっふっふ。すぐにでも、埋め込まれている空中元素固定装置を探さなくてはならないが…。これでは、そうもいかなくなるな! たっぷりと可愛がってからにするか?後でも先でも…逃げはしまい!」 既に大きな掌で生の乳房を揉みあげていたゴリラファングだったが、より淫らに目を光らせて応える。 「ふっふっふ。それは尤もな意見だ!それに、折角、空中元素固定装置のリモコンを持っているのだ… 色々と実験をしてみてもよかろう?」 ゴリラファングはキューティーハニーのブリッジを大股でまたぐと、おもむろに自分の股間から肉棒を取り出した。 そして電池をセットするように、巨乳の谷間にはさみこんだ。 「さあ、リモコンの設置は終わったぞ!これで、この肉体は俺様の思うがまま…まずは、実験その一だ!」 ゴリラファングは巨乳を揉み、挟んだ肉棒をしごいた。リモコンが作動する。 もとより携帯型で作りが単純なリモコンは、「コブラ・ファング」により全てのサイボーグの肉棒に取り付けられている。 無論、キューティーハニーとの遭遇に備えてのことだ。 ただ、未完成な部分について…使用した結果、何が起こり、どうなってしまうのか…それがどれほど危険なことなのか、 コブラ・ファングはもちろん、その場で知る者はいない。 (フォン・フォン・フォン…) 巨乳に挟まれた肉棒から強烈な高周波パルスが発信される。 乳房を通しての命令に空中元素固定装置は作動を始め、キューティーハニーの電子頭脳へも命令を伝達してゆく。 「はあっ〜あ、これは…何?…あうっ、あっ…あうっ!ああっ!」 無様な格好のまま、必死で何かに耐えるキューティーハニー。 もちろん、揉まれてるからでもなければ、挟んでいるからでもない。それは意思に反する動き方をする電子頭脳へのささやかな抵抗だった。 チョーカーのハートマークが突然、強烈な光を放った。同時に、もがき続けるキューティーハニーが、まるで台詞を読むように叫んだのだ。 「ああっ!なぜっ…ハニ〜フラッシュ!」 肉棒を挟んだゴリラファングが弾き飛ばされ、キューティーハニーを光が再び包み始める。 キューティーハニーは再びその姿を変えようと…いや変えさせられようとしている。コスチュームが弾け飛び、ブリッジの姿勢のまま 全裸になると、光が集まり衣装を生成していく。 なんと、キューティーハニーは先ほどまでの姿…シンガーハニーに戻ってしまった。 弓なりに反り返っているシンガーハニーは、自らの肌を覆う衣装を見上げながら、驚いたように大きく瞳を見開いた。 「なっ、何故?勝手に…変身してしまう!」 「コブラ・ファング」達は実験の結果に驚喜した。なにしろ調教に使うムチよりも、遥かに便利な道具を手にしたのだから、 当然ではあるが…。 「ふっふっふ、折角脱がせたのに、また着てしまうとは…手間のかかるコスプレ女だ!」 言葉とは裏腹に、ゴリラファングはニヤニヤしながら、シンガーハニーの胸のボタンを次々に外し始めた。 そして、はだけた衣装の下から現れた純白のブラジャーをつかむと、そのまま左右に引き剥がした。 (プリリ〜ン!) 「ああっ、いやあ〜ん!」 はちきれんばかりの白い乳房と、ツンと天を向いたピンクの乳首が、再び自由になって踊り出す。 「ほっほう、台詞まで思い通りとは、ずいぶんと丁寧な作りだ!至れり尽くせり…とはこのことだな…」 つぶやいた言葉の割には、ハンマーコブラもそれほど素直に感動してはいない。 同じ作業…割れ目を指でゆっくりなぞって、衣服を切り裂く作業に夢中だからだ。 (ツゥ〜!)「ああっ!…やめて!それでは…見えちゃう!」 またしても、多少薄めだが美しく生えそろった黒いヘアーが剥き出しになった。 「ふっふっふ、ゴリラファング!折角シンガーハニーに変わったのだ!咥えさせるのは諦めろ! その分、素晴らしい歌を聴かせてもらうのだ。その巨乳をオモチャにして、俺様が終わるまで待っていろ!」 大股開きのシンガーハニーに目をやりながら、ハンマーコブラが肉棒を取り出した。鋼鉄のように硬くそそりたっている。 「ぐふっふっふ…よかろう!おやっ?シンガーハニー…何をしている?」 ゴリラファングの巨大な肉棒の前で、シンガーハニーは左腕のブレスレットに舌を伸ばした。 「簡単に…そんな真似をさせるものですか!ペロッ!…ハァニィ〜・ブーメランッ!」 左腕から飛び出したブーメランは、ツバメのようなスピードで旋回すると、ハンマーコブラの肉棒に襲い掛かった。 (カチン!) 冷たい音を残し、ブーメランが弾かれた。 悄然として空を迷うブーメラン。すぐさま鎹と釘のシャワーを浴び、シンガーハニーの目の前の床に打ち付けられてしまった。 「ああっ…ハニーブーメランが…効かない?!」 シンガーハニーの股間を肉棒でなぞりながら、ハンマーコブラが笑った。 「ふっふっふ…そんなオモチャが効くものか!俺様の肉棒が鋼鉄製だということを、たっぷり教えてやろう。そお〜ら!」 「やめっ…うふっ!うっ、くう〜う…」 ズブリという音とともに、ハンマーコブラの肉棒がシンガーハニーの中に入っていく。 「どうだ?これが鋼鉄の硬さだぞ…シンガーハニー!ふっふっふ、それではハンマーで打ち込むように、子宮を突いてやろう!」 「…はあはあ…奥まで…んっはあ〜!…ズンズン突かれるうっ…うっう〜ん!」 シンガーハニーはアンドロイド。ただ如月博士の意向により、その機能は限りなく人間に近い。 血も流せば、涙も流す…当然、愛液だって流してしまう。次第に肉の摩擦音が湿り気を帯びていく。 「ふっふっふ…いい音がしてきたぞ、シンガーハニー!どうだ、奥まで突かれて、歌いたくなって来ただろう?」 ハンマーコブラはグイグイとシンガーハニーの腰を引き寄せる。リズムに乗った淫らな音が店中に響き渡る。 「…んっ、くう!…はあはあ…誰が歌なんて…んっ、ふっ!…はあはあ…歌うものですか!んっ、はあっ〜」 シンガーハニーの目の前には、極太の黒いマイクが用意された。巨乳を揉んでるゴリラファングの肉棒だ。 ハンマーコブラの突き上げとゴリラファングの乳揉みに必死で耐えるシンガーハニーだったが、所詮は無駄な抵抗だった。 身体の中に入ったリモコンから高周波パルスを発信されては、シンガーハニーの電子頭脳はどんな命令にも逆らえない。 「さあ、絶頂に達するために歌ってもらおう!スローテンポでいくぞ…ミュージック・スタート!」 (チャ…チャ…チャ…チャッチャ・ラチャ…チャラ〜…チャ・チャア〜♪) 「んっ、はあ〜!このごろ…流行の女の子お〜ん♪んっはあ〜あっ、アソコが噂の…女の子おお〜ん♪ はあはあ…こっちを向いてよハニ〜いいん♪うっ、う〜ん!だってなんだかあ〜ん♪はうっ、だってだってなんだもおっほお〜ん♪」 (ズッ、ズン、ズウ〜ン!)とハンマーコブラが肉棒を突きリズムを取る。 「はあ、あ〜あっ!…お願いい〜ん、お願いいっ〜い♪突き上げないでえ〜え♪はあはあ…私のおお〜お♪アソコがああ〜あ♪ キュンキュン締まるのおお〜お♪はあ、いやあ〜よ、いやよお〜お、いやよ…中出し…いやあ〜ん♪ あっ、ハあっ〜ニいい〜…フラッシュん♪…はあはあ…逝っちゃうわよおお〜ん♪あっくう〜う!」 最後にズンッ!と子宮を突かれたシンガーハニーは、絶頂に達したのか、思い切り肉棒を締め付けた。ドロドロとしたハンマーコブラの 精液が大量に搾り出される。 股間から溢れた精子を垂れ流しながら、ブルブルッと肉体を震わせたシンガーハニーは、声の限り絶叫した。 もちろん「逝く」という言葉の変わりに違いない。 「はっ、ハアニ〜…フラア〜シュ!」 シンガーハニーはチョーカーのハートを輝かせながら、三度目の変身をした…いや、変身をさせられた。 ビリビリに破れた衣装が光りの中でチリになり、シンガーハニーは全裸になる。そして、いつもなら、ここで光りが服に変わっていく。 ところが、今回の変身は、まるで違った。 光りの中から現れたのは、振り乱した黒い髪、真紅の口紅、そして白い肌をさらけ出した全裸のハニー。 身に着けているのは首のチョーカーと太ももの黒いガーターベルト、そして膝までしか隠していないシースルーのストッキングだけだ。 「…しかして、その実体は…性の奴隷…エクスタシーハニーさっ!…はあはあ…勝手に変身しちゃう!」 変身しても人間ブリッジの拘束はまるで緩まない。正体を明かしたエクスタシーハニーの声は、棒読みながら、誘うように上ずっている。 「ぐふっふっふ、全裸の奴隷に変身させるとは…なるほどそういう趣味か…ハンマーコブラ。よかろう… 手強そうだが、今度は俺様が相手だ!覚悟しろエクスタシーハニー!」 ゴリラファングはエクスタシーハニーの腕を取ると、簡単に拘束を解いて引き起こした。ようやく楽な姿勢に…と思う間もなく、 足の拘束はそのままでエクスタシーハニーは前に倒される。四つん這いにされてしまったのだ。 「ああっ!お尻が…丸見えになっちゃう!はあはあ…でっ、でも…絶対に負けない!」 突き出されたエクスタシーハニーのお尻は、小振りながら質感のある、いわゆる美尻だ。無論、美しいだけでなく、スタミナ・切れ味、 ともに充実していそうな、タフでシャープな防御力も備えている。エクスタシーハニーのコスチュームの一部なのか、 肌にうっすらと塗られたオイルが、小生意気な美尻を更にテカテカと光らせた。 対するゴリラファングは強敵を前にしても自信満々だ。そそりたった肉棒は、まさに黒々とした巨大な筋肉の塊。 破壊力満点のパワーを持っている。ハンマーコブラに中出しされてもツンとすましているエクスタシーハニーに、 天誅を与えるとすれば、この肉棒をおいて他にはない。ゴリラファングは肉棒をエクスタシーハニーにあてがうと、 背後から圧しかかるように手を伸ばし、二つの乳房をムンズ!とつかんだ。 「ぐふっふっふ、さあエクスタシーハニー、最初から手加減無しでいくぞ!思い切り叫び、悶えるのだ!」 「はあはあ…くっ、お前なんかに負けるものか…ゴリラファング!」 ゴリラファングは掌一杯につかんだ巨乳を一気に引き寄せ、肉棒をエクスタシーハニーに突き入れた。 (バアッビュウ!) 「うっ、あっはああ〜あ!入ったあ〜あ!音があ〜あ…いやあ〜ん!」 圧縮された空気の漏れる音とエクスタシーハニーの甘ったるい絶叫が店中に轟いた。 巨大な肉棒でパンパン責めたてるゴリラファングと、奥深くまで咥え込んでキュンキュン締めるエクスタシーハニー。 まさに肉弾相打つ互角の闘い…と思われたが、予想に反して、のっけからエクスタシーハニーは劣勢に陥った。 必死の思いで肉棒を締めても、空気の漏れる淫らな音を鳴らすだけで、まるでゴリラファングには通用しない。 肉の音を間断なくたてながら、バックで攻め込むゴリラファングの前に、子宮を突きまくられたエクスタシーハニーは 大声で喘ぐことしか出来なかった。 「あっくう〜う!突くう〜、奥まで突き上げるう〜う!ああっ、音お〜お、すごっ、凄いい〜いん!」 「ぐふっふっふ。そうだ…もっと締めろ!もっといやらしい音を鳴らすのだエクスタシーハニー!そお〜ら、そお〜ら!」 完全なワンサイドゲーム。 だが、初回で打者一巡の猛攻を見せ、二回で10点の点差をつけても、ゴリラファングは全く手を緩めない。むしろ、戦線を拡大していく。 突き上げる肉棒に加え、大きな掌で包み込むように、エクスタシーハニーの乳房が揉みあげられていく。 エクスタシーハニーのボルテージはもう上がりっ放しだ。 「うっはああ〜あっ!揉まれてえ〜、突かれてえ〜、うっうう〜ん!」 エクスタシーハニーは小振りのお尻を振りながら、絶叫した。残り少ないエネルギーも、これではみるみる消費されていく。 エネルギーを失えば、空中元素固定装置も動かない。無論、変身も出来なくなるのだ。 「うわああ〜あ!…逝きそう…エネルギーがないのにっ!うっうう〜う!…逝っちゃう…犯されてるのにっ!」 エクスタシーハニーのエネルギー切れと時を同じくして、ゴリラファングにも疲労の色が見えてきた。さすがのゴリラファングも 責め疲れたのだ。 「ぐふっふっふ…そろそろ…俺様も限界だ…。エクスタシーハニー、最後の力を振り絞って締めてみろ!思い切り溜まった子種を ぶちまけてやる!そうら…いくぞ!」 ゴリラファングは肉棒を半分ぐらい引き抜くと、反動をつけて根本まで一気にぶち込んだ。そしてエクスタシーハニーの締めを 楽しみながら、大量の白濁液を子宮めがけて吐き出した。 (パッギュュュ〜ウ!) エクスタシーハニーの中で密封された空気が、ゴリラファングの肉棒と中出しにより、押し出されて、一際凄まじい音を轟かせた。 「うっはあ…ハアニイィ〜・フィニッシュ!…逝っくううっ〜う〜ん…」 獣のような咆哮。フラッシュではなく、フィニッシュ…エクスタシーハニーは自らの終焉を宣言したのだ。 変身もなく、絶頂に達したエクスタシーハニーは、激しく肉体を震わせて、肌の汗と中から溢れる精液を床にボタボタ垂らした。 やがて、四つん這いのエクスタシーハニーは、ゆっくりと崩れ落ち、床に這いつくばった。 先程までの凛々しい表情が幻だったのか、今は、白目を剥いて、半開きの口から涎を流す、余りにだらしない淫らな姿。 完全に意識をなくしているのに、ピンと伸ばした肉体は、余韻でビクリ!ビクリ!と痙攣している。 ゴリラファングは消耗の余り、ハンマーコブラの隣に倒れるように座り込んだ。 ただ、甘い蜜を貪る替わりに、蓄積された老廃物を全て放出した爽快感のためか、気分は上々だ。 兄弟となったゴリラファングとハンマーコブラは、互いの健闘を称え合うかのように、固く手を握り合った。 「ぐふふふ、やはり、我々の責めには耐え切れなかったようだな。しかし、さすがは如月博士が精魂込めて作り上げたアンドロイド… 人間以上の絶品だ。見ろ、あの無様な姿を…。何度でもぶち込んでやりたくなるほど、淫らではないか? いくら空中元素固定装置のためとはいえ、分解するのは、ちと惜しい気がする…」 「確かにその通りだ。空中元素固定装置はパンサークローへの貢物。宝石を欲しがる女の気持ちも判らんではないが、あの肉体に比べれば、 どんな宝石も大した価値はないだろう。俺様なら間違いなく永遠の奴隷として、エクスタシーハニーを選ぶのだが…」 エクスタシーハニーに蔑むような視線を送りながら、二人のサイボーグはヨタヨタと立ち上がった。 お持ち帰り。そして分解。無論、「コブラ・ファング」は男の組織だから、分解前に果てしないほど犯すつもりではいるが…。 エクスタシーハニーを引きずり起こした二人は、まるで申し合わせたように、萎えた肉棒を上下の口に突き入れ、それを軸に持ち上げた。 か細く弱々しい声で唸ったエクスタシーハニーは、条件反射のように肉棒を締めつける。 垂れ下がった四肢と乳房をブラブラと揺らしながら、エクスタシーハニーは犯されつつ運ばれていく。 「ふふふ…名残惜しくてな…こうして運べば、何回かは楽しめる…」 ハンマーコブラは肉棒を軸にしっかりとエクスタシーハニーのお尻を支えていた。 エクスタシーハニーの頭部を、肉棒を軸にしてぶら下げたゴリラファングが、ニヤニヤしながらいった。 「出したら交代だぞ…咥えさせるのも悪くはないが…。…んっ、ハンマーコブラ…頭に錆が出ているぞ!うっ、なんだこれは… 俺様が錆びていく!ぐうう…」 「なっ、なんだ…この錆は?ぐうう…苦しい!」 ゴリラファングとハンマーコブラは瞬く間に茶色に変色すると、砂で出来た人形のように、粉々に崩れ去っていく。 リモコンは必要以上に水素を使う。体内の水分から水素を失い、細胞の全てが酸化したのだ。 (ドサッ!) 虚空に残されたエクスタシーハニーは、床に落下した。 「うっ、う〜ん…一体何が…?ガリッ!…こっ、これは…?」 エクスタシーハニーが噛んだのは、上下の口に残されたリモコンだ。ただ、エクスタシーハニーはこれが何なのか、 なぜ自分の口の中に残っているのか…理由を何も知らない。 エクスタシーハニーは放心状態でペタンと座り込んで、二つのリモコンを、ゴリラファングとハンマーコブラの成れの果て… 茶色の砂山に墓標のようにたてた。 「何がなんだか、判らないけど…勝てた…」 最早、変身するエネルギーも残っていないのか、エクスタシーハニーは全裸のままで立ち上がった。 足元はフラフラしていたが、その瞳には既に闘志がみなぎっていた。 「コブラ・ファング…絶対にお前達の自由にはさせない!この街を、そして人間達を、キューティーハニーが必ず救って見せる!」 *********************************************************** 以上が送られて来た手記を、俺が肉付けし読み易くしたものだ。 三文小説風にはなってしまったが、情景を思い浮かべてもらえれば、それで十分だから、記事よりはましだろう。 所詮記事にしたところで、デスクが取り上げてくれる内容ではないのだから…。 しかし、本当かねぇ〜? 重ねて断っておくが、俺は読み易くするために肉付けしただけで、現場は見てない。だから、事実が本当に手紙の通りかどうかは判らない。 確かにキューティーハニーが「コブラ・ファング」を倒し、リモコンを取り戻したということ…これは事実に違いない! ただねえ〜、いくらつじつまが合うとは言え、途中のピンチはずいぶんひどい話じゃないか? よりによって、あのキューティーハニーが「コブラ・ファング」に敗北して、散々犯され、最後に「ハニーフィニッシュ!」とは… 笑わせるにもほどがある。 本当のことをいえば、俺自身、この手記には多分にフィクションが盛り込まれていると思っている。 そもそも、あいつはつまらないネタで、結果の判る事実だけを記事にする普通の記者とは毛色が違う。それにムッツリ型の妄想好きで、 裏では、妄想博士と称し、エロ小説を書いていたことも知っている。 そんな男がキューティーハニーの活躍を目の当たりにすれば、脚色してまで面白い記事を書くのも無理はないと思うのだが…。 まっ、俺は全然信じていないけどね。そもそも、ハニーが犯されるわけないし…ただちょっと気にはなるな…。 ハニーを自由に操るリモコン。それを持っていて、ハニーを犯せば酸化する「コブラ・ファング」。 そしてそれすら知らないキューティーハニー…か。 ええ〜い…とにかくだ!俺には信じられない…いや、絶対に信じるものか! そんなわけで、こうしちゃいられなくなっちまった!これからどこかにある異次元の入り口を探さなくては…。 俺の愛するキューティーハニー…すぐに助けに行くから待っていてくれ! あっ、そうそう、最後になるけど、もしネタや指摘があれば、どんなにつまらないことでも構わないから、東日新聞 早見宛で 掲示板に書き込みをしてくれ! もちろん感想だって大歓迎さ…読者のニーズに合わせていくのは、俺の記者としてのモットーなんでね。 頼むぜ…みんな! それじゃ、また、次回の手紙が来たときに会おう! ***完