WHITE WOMAN 〜〜〜THE MOST BEAUTIFUL HEROINE〜〜〜 第一話 誕生、美しき戦士

 西暦20XX年・日本人の多くは平和、愛、友情と言う言葉を忘れてしまっていた。街には麻薬常用者が 溢れ、売人達は公然と薬物を販売し、少女達は金欲しさに体を売り、路上では常に何処かで喧嘩や乱闘騒ぎ が起こり、そして通行人は見てみぬ振りをし、誰も止めようともしない。子供による犯罪も増加の一途を辿 り、学校もいまやその機能を失いつつあった。そして法の番人とも言われた警察官は常に機関銃を携えては 市民達を威嚇し、一部の警察官に至っては犯罪者と癒着して犯罪の手助けをする者も数多くいた。                そして、世界一の大都市、東京は・・・・・・  西暦2000年、突如として東京を襲った大地震からどうにか復興した東京の街には七色のネオンサイン が輝き、各幹線道路は相変わらず渋滞し、大気汚染も深刻化、犯罪も高度化、かつ凶悪化していた。かつて ヤクザと呼ばれた組織は殆ど壊滅し、中国、台湾、ロシア、韓国等のマフィアがそれに代っていた。20世 紀末から引きずっていた老人問題も更に深刻化し、かつて下町と呼ばれた所には政府が用意した高齢者向け の公営住宅が建ち並んでいた。しかし公営住宅とは名ばかりの物で、老人達は彼らの居住エリアからは出る ことが許されず、エリアは高圧電流を帯びた有刺鉄線に囲まれており、脱走しようとした老人が感電死する 事も、もはや珍しいことではなくなった。景気は20世紀末から不況が続き毎日のように企業の倒産、会社 社長の自殺、そして政治家達の不祥事がニュースで報じられていた。失業者は増加する一方で街には多くの 失業者が溢れ、ホームレスと呼ばれる者達が町のあちこちにダンボールで居を構え、彼らはこそ泥や万引き、 引ったくりなどで生計を立て、中には警察官に射殺される者もいた。             しかし、それらの影には何かがあった。そう、何かが・・・  東京のとある大学病院の遺体安置所にて、数体の遺体が忽然と姿を消すと言った事件が発生した。医師や 看護婦達の見守る中、警察の手によって現場検証が行われていた。  新人刑事 「全く変な事件だ。よりによって死体がどっかいっちまうなんて。」  刑事長 「全くだ。こんな変なことばっかり起こったらこっちが変になっちまう。」  新人刑事 「でも、誰かが入ったって言う形跡が全くない。死体が歩ってどっかいっちまったとしか考え られないですよ。」  刑事長 「まさか、死体が歩くなんて・・・そんなことが・・・」  新人刑事 「もしかして、宇宙人が持ち去ってしまった・・・とか」  刑事長 「馬鹿かお前は!下らんこと言ってないでさっさと仕事せんかっ!」  鑑識 「刑事長!入り口の防犯カメラに何か映ってます。」  刑事長 「よしわかった。おいっ、行くぞっ!」  新人刑事 「了解っ!」  病院のAVルームに刑事長、新人刑事そして数人の警察官、病院関係者が集まっていた。一人の医師と思わ れる男がビデオデッキのスイッチを入れると、28インチはあろうかと思われる大画面に病院の入り口が映 し出される。映像は真夜中のようである。刑事たちは何も言わずにビデオを見ている。画面は一向に変化を 見せない。そして、三十分ほど経った頃だろうか、突然、病院の入り口のドアが開いた。そして、入り口か ら数人の男たちが外へ出て行った。刑事たちは、その男たちの顔を見て驚愕した。  新人刑事 「で、刑事長っ!こいつら、あの・・・・・・・」  刑事長 「そんなこといわれなくともわかっとる。でも、信じられない。一体どうなっとるんだ!」  医師 「そ、そんな馬鹿な!だってこの人達は・・・・・・」              そう、その男たちとは、行方不明になった数体の遺体であった。彼らは白い服を着ており、よろよろと歩 いていた。彼らの顔はすっかり蒼ざめており、その眼は何処を見ているのかもわからないくらい虚ろであっ た。ビデオには、彼らのうめき声とも思える音声も記録していた。  新人刑事 「死体が歩くなんて、そんなことあるんですかねェ」  医師 「医学上は、一度死んだ人間が生き返るなんて事まずありえません。彼らは完全に亡くなっていま した。」  刑事長 「うーむ、こんな奇妙な事件は刑事生活30年で初めてだぞ!」  新人刑事 「でも、死体の行方を探るのが先決ですね!」  刑事長 「そうだな、良しみんな、何としても彼らの死体を探し出すんだ。」  その頃、東京のウォーターフロント地区で、奇怪な事件が起こっていた。そう、我々が今まで経験したこ ともないほど奇怪な事件が・・・・・・・・・・  お台場海浜公園、午後1時  多くの若者達で溢れるお台場の街に、一際異様な容貌の集団が歩いていた。彼らは真っ白な着物を着て、若 者達の視線を何とも思わずに歩いている。そう、彼らこそが病院から姿を消したもの達である。  女性 「何あの人達、なんかヘンよ」  男性 「何だあれ、まるでお化けみて―だなぁ。」  男性2 「おいっ、ちょっとからかってやろうぜ。」    そう言うと、男性2はその集団に向かって行った。男性2の後を数人の男性がついていく。  男性2 「おいっ、お前ら何やってんだよ―、おいっ」  集団 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」  男性2 「てめぇ、黙ってちゃわかんねーだろっ、おいっ」    男性2は集団の一人を殴りつけた。集団の先頭にいた男が吹っ飛ばされる。しかし彼は痛がろうともせず 再び立ち上がると、男性をじっと見つめるのであった。そして、その刹那、男が若者に飛び掛る。  男性2 「うわっ、な、なんだこいつ、ぎゃーっ!」  男は突然男性2の首にかみついたのだ。一撃で若者の首を噛み切ると、辺り一面に真っ赤な血が飛び散ら せた。周囲からは悲鳴が上がり、先程まで威勢良く振舞っていた者達が我先にと逃げ惑う。集団は突然暴れ だすと、無差別に人々に飛び掛り、首筋に歯を立てた。そしてその瞬間、辺りは真っ赤な血で覆われていた。 集団は暫く暴れると、再び何もなかったかのように歩き始めた。  その頃、さっきの刑事たちは病院の近くの寂れた蕎麦屋で少し遅い昼食をとっていた。店の中には彼ら以 外に客はおらず、店員も暇そうにテレビを見ている。  刑事長 「しかしまぁ、こんな世の中だから変ちくりんな事件があっても無理ね―か。」  新人刑事 「そうですかねぇ、そんな変な世の中ですかねェ。」  刑事長 「少なくとも、俺がお前さんくらいの年の頃に比べれば変ちくりんだよ。」  新人刑事 「そう言えば、刑事長はなんで刑事になろうと思ったんですか。」  刑事長 「俺か、俺が学生の時テレビで面白い刑事ドラマがやってたんだよ。そうそう、あぶない刑事っ て言ったなぁ。とにかくその番組に影響されちまって、気づいたら刑事になってた。」  新人刑事 「へぇ、結構刑事長って単純っすねぇ」  刑事長 「うるせい、余計な事言ってねェで、とっとと食っちまえ、蕎麦が伸びちまうよ。まったく!」  新人刑事 「おー、こわ」  その時、刑事長の携帯電話が鳴り出した。発信元はどうやら本庁のようだ。  刑事長 「はい、もしもしぃ。なに、うあかったぁ、すぐ行く。」  新人刑事 「どうしたんすか。」  刑事長 「お台場で殺しだ。害者は全員喉を噛み切られてるそうだ。白昼堂々の無差別殺人ってとこか。 ホシは数人の集団、着ていた服や特徴から、病院でいなくなった死体によく似ているとの事だ。」  新人刑事 「ま、マジッスカ!まるで、なんかのホラー映画みたいッすねェ!」  刑事長 「よし、いってみよう」  二人は車に飛び乗ると、お台場に向かって突っ走って行った。     お台場海浜公園、午後2時  二人の刑事は現場に到着するとすぐに現場検証を始めた。辺りには血の匂いが立ち込め、長時間いると思 わず嘔吐してしまいそうなくらいである。  刑事長 「しかしまぁ、派手にやってくれたもんだなぁ」  新人刑事 「刑事長、目撃者に例の死体の写真を見せたところ、彼らに間違いないって言ってました。」  刑事長 「そうか、しかし何でまた・・・・・・・わからんなぁ」  その瞬間、突然目の前に横たわっていた死体が動き出した。死体は若い男性で、むっくりと起き上がると 新人刑事をじっと見つめていた。  新人刑事 「い、生きてたのか、お前、さぁ、早く手当てを・・・」  男性 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、うぅ、うぅ」  新人刑事 「ど、どうした」    その瞬間、男性は新人刑事に飛びかかっていった。新人刑事は思わず男性を殴ってしまう。しかし男性は いくら殴られても彼に向かってくる。そして、男性は彼の喉に食らいつく。彼は空気を切り裂くような叫び 声を上げると、その場に倒れこむ。そして新人刑事の真っ白なYシャツが一瞬で真っ赤に染まると、彼はピ クピクと痙攣を始めた。  刑事長 「こ、こいつよくも・・・てめぇ覚悟しろ!」    刑事長は男性に向かって発砲する。他の警官達も刑事長の廻りに集まってくる。しかし彼は弾丸を受けて も痛がるといったことをせず、ただひたすら新人刑事の流した真っ赤な血をすすっている。  刑事長 「な、なんてこった。こいつらには拳銃が通用しねェっていうのか。」  警官 「で、刑事長、一体これは・・・」  刑事長 「かまわん、とにかく撃ち続けるんだ。いいな」  警官 「了解!」    しかし男性は何十発という弾丸を食らってもびくともしない。やがて、警官たちの拳銃から弾丸が無くな った時、悲劇は起こった。突然、辺りに横たわっていた何十という死体が動き出したのだ。死体達は警官に 襲いかかると、喉を噛み切り、耳を食い千切り、そして腹を食い破って内蔵を引き摺り出す者もいた。暫く の後、お台場海浜公園は地獄と化していた。死体がまた死体たちを産み、生ける屍と呼んでも過言ではない ような大集団に支配されてしまっていた。そして彼らは腹に響くようなうめき声を発し、生けるもの達を無 差別に襲い、そしてその肉や内蔵を食らう。ついさっきまで買い物をしたり、カップルが腕を組んで散歩を したり、そして公園で子供達が遊んだり、といった風景は何処へともなく消えてしまった。我先にと逃げ惑 い、他人を踏みつけてでも逃げ出す多くの若者達、そして首を食い千切られる子供達、老人。これこそが本 当の地獄と言っても過言ではないだろう。                      その夜、日本全国、いや、世界中でそのことがニュースで報じられていた。警視庁は夜間外出禁止令を発 し、街は人っ子一人歩いていない。東京は今、まさにゴーストタウンのような静粛に包まれていた。各家庭 では、電気を消してイヤーフォーンでテレビやラジオのニュースを聞いている。  アナウンサー 「本日午後、死体が蘇り、人間を襲うという奇妙な事件がお台場海浜公園で起こりました。 只今お台場海浜公園上空にヘリコプターを向かわせています。現場から風間さん。お願いします。」  風間 「はい、現場の風間です。私は今、お台場の上空を飛んでいます。お台場では今大変なことが起こ っています。」    ヘリコプターのサーチライトが下を照らすと、無数の死者達が蠢いているのが見えた。彼らはうめき声を 上げながら辺りを徘徊していた。中には湾岸道路を歩いている者もいる。いつもなら多くの車が走る湾岸道 路だが、車一台走っていない。そしてフジテレビの建物の前には大きなバリゲードが築かれているが彼らに 突破されるのも時間の問題であろう。ホテル日航東京は全室電気が消えている。宿泊客や従業員達は既に避 難してしまったのだろうか。それとも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  風間 「彼ら生きる屍達は次々と人間を襲い、そして襲われた人間は彼らのようになってしまいます。一 体どういうわけなのでしょうか。」  アナウンサー 「はい、現場の風間からの映像でした。みなさん、決して外出しないでください。彼らは お台場だけにいるとは限りません。くれぐれも戸締りを厳重にしてください。それでは、さようなら。」  ニュースが終わると暫くコマーシャルが流れ、やがて停止画面に変わった。その画面には、「生きる死体 関連のニュースは情報が入り次第お送りします。」という文字が・・・・・・                  東京都杉並区のとあるマンションの一室、午後11時  殆ど電気の消えている15階建ての結構大きなマンション、しかしある一室だけが灯りをともしていた。 部屋の中には一人の若い女性がテレビを見ていた。女性の名は奈々子、歳は二十五才くらいであろうか、真 っ白いTシャツにそれとは対照的なブラックジーンズをまとってテレビのリモコンを弄っていた。何処のチ ャンネルを回しても、ゆったりした音楽に静止画面しか流れていなかった。    奈々子 「うわー、どこもテレビやってないよ。どうしよっかなぁ!レンタルビデオでも行ければ良いん だけど、お店やってないと思うし・・・、そうだ、一応ビデオ屋に電話してみよっと!」  そういうと奈々子はビデオ屋に電話をかける。しかしいくら待ってもビデオ屋はでない。  奈々子 「やっぱりお店閉めてんだ・・・あぁ、暇だわぁ!」    奈々子はベッドに寝っ転がると何気にテレビのリモコンを回す。突然、フジテレビがニュースを始めた。 女性のアナウンサーはニュースを読み上げる。しかしその表情はいつも見るアナウンサーのそれとは明らか に違う。彼女は持ち前の明るさを生かして、ニュースだけではなくバラエティ番組にも数多く出演し、若者 の絶大な指示を得ている人気アナウンサーで、いつもなら明るい笑顔でニュースを読み上げるのだが、今日 は真っ青な顔をして、そして何かにおびえたような表情である。  アナウンサー 「ニュースをお伝えします。生ける屍達が遂に我がフジテレビ内に侵入してきました。彼 らはバリケードを破り、局警備員を襲い、そして今、スタジオに近づきつつあります。タレントの方や一部 の局職員が既に彼ら襲われているといった情報も入ってきております。恐らくこのニュースが最後のニュー スとなるでしょう。私達もヘリコプターが到着次第ここを脱出します。」  プロデューサー 「あぁ、やつらが来たっ、やつらをこの部屋には絶対入れるな。いいな!テレビをごら んの皆さん、今我々のスタジオの前にやつらが遂にやってきました。」  アナウンサー 「私達はこのスタジオに閉じ込められて・・・・・・・うゎぁぁぁあぁぁぁぁぁ」  突然、アナウンサーは机に顔を伏せて泣き始めた。テレビカメラは彼女を映し続けている。そしてその時、 スタジオのドアが蹴破られた。彼らがスタジオ内になだれこんできた。プロデューサーは逃げようとするが、 彼らにあっという間に捕まってしまい、カメラマンもカメラを放って逃げ出してしまった。しかし、カメラ マンもまた捕まってしまい、その喉を食い千切られる。スタッフ達は次々と彼らに捕まってしまう。カメラ はスイッチが入りっぱなしで地獄の様相を映し続けていた。恐らくその時テレビを見ていた人達はその恐怖 におののき、中にはテレビを消してしまった者もいただろう。そして彼らはスタジオの奥のほうにいるアナ ウンサーを見つけると、彼女にに掴みかかって行った。  アナウンサー 「あ、あぁぁぁぁぁぁ、来ないでー―ーーーっ!止めて――ーーーっ、あっちいってよ!」  しかし彼らは構わずに彼女に襲いかかる。彼らの一人が彼女の洋服を引き裂くと、彼女の全裸があらわに される。固定されたテレビカメラは回っており、彼女の裸体が電波で流される。  その頃、奈々子はマンションの一室で一人食い入るようにテレビを見ていた。  奈々子 「うっそー、信じらんない!これってやらセじゃないの。でもこの人胸大きいーっ、あぁ、ヘア まで見せちゃってる。もしかしてこれってすごい視聴率とれるんじゃない。」  アナウンサーが彼女にもみくちゃにされる。彼らに覆われて彼女の姿が見えなくなった。そして、数十分 後、彼女の姿が画面に映った。彼女は両腕を食い千切られて、内臓が引きずり出され、そして両方の眼球は えぐりだされていた。テレビカメラは回りつづけ、カメラのスイッチを切るものは誰もいない。いつまでも 彼女の哀れな姿がテレビに映っていた。  奈々子 「きゃーーーーーーーーーーーーっ」  奈々子は、テレビの電源を切ると、電気を消して布団の中に潜り込んでしまった。  東京都杉並区のとあるマンションにの一室、翌朝8時  目覚し時計がけたたましく鳴り出す。奈々子が目覚し時計を切ると、おもむろにテレビのスイッチを入れ る。フジテレビにまわすと、画面は砂嵐に包まれていた。日本テレビ、TBS、テレビ朝日、テレビ東京も 砂嵐を放送している。NHKにまわすと、中年の男性が淡々とニュースを読み上げていた。  アナウンサー 「臨時ニュースをお伝えします。昨日突然に現れた生ける屍はその数を増やす一方で、政 府は先程緊急自体宣言を発令、天皇陛下をはじめとする皇族方も先程皇居を避難され、各省庁は一時的に大 阪へ移転、フジテレビ、日本テレビ、TBS,テレビ朝日、テレビ東京そしてNHK東京も彼らに占拠され ました。いまこのニュースはNHK浦和よりお送りしています。政府は自衛隊だけではなく、在日アメリカ 軍にも協力を要請しました。都民の皆さん、くれぐれも今日は外に出ないでください。今日は絶対外出禁止 です。都心だけではなく郊外にも彼らが既にいる恐れがあります。」  奈々子 「うっそー、今日も外出できないのー、超つまんなーい!そうだ、今のうちにコンビニとかいっ てこよっと!今ならまさかあいつらがいるはずないし。」  奈々子はそういうと、財布と携帯電話を手に外へ出るのであった。自転車の鍵を開けて自転車で走り出す、 街は人っ子一人歩いておらず、暫く走っても何処も店を開けていない。24時間営業のコンビニエンススト アでさえも店を閉めている。店の中には誰かが隠れているようだ。奈々子はコンビニエンスストアの前に自 転車を停めると、そのシャッターを叩いた。  奈々子 「スイマセーン。誰かいませんかー。買い物に来たんですけど―っ。」  暫くすると、シャッターが少し開き、中から若い男性が出てきた。この店の店長のようだ。  店長 「すいません、今日はお休みなんですが・・・」  奈々子 「お願いします、食べ物とか、雑誌とか売ってもらえませんか。」  店長 「折角来てもらったんだし、しょうがないなぁ、わかりました。どうぞ」  店長は奈々子を店内に入れると、素早くシャッターを閉めた。奈々子は籠を片手に買い物をはじめる。暫 くして、奈々子はレジに品物を持っていった。店長は無言でレジを打つと、袋に品物を詰め込み、奈々子に 手渡す。奈々子は品物を受け取ると、店長に軽くお辞儀をして店から出て行った。店長は彼女が出て行くと 慌てたように店を閉めた。奈々子は自転車の籠に品物を入れると、マンションに向かって走り出した。マン ションに着くと、自転車置場に自転車を入れた。そして部屋に戻ろうとしたその時・・・・・・・・  奈々子 「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」  目の前に突然、生ける屍が現れた。相手は一人で、ゆっくりと奈々子に向かってきた。奈々子は咄嗟に周 りにあったポリバケツやほうきを投げつけ、そして停めてあった自転車を蹴り倒して部屋に逃げようとした。 しかし、慌てていたせいか、マンションの入り口の階段で足をつまずいて転んでしまった。奴はどんどん近 づいてきた。そして遂に彼女は捕まってしまったのだ。  奈々子 「きゃぁーーーーーーーー、やめてーーーーーーーーーーっ」    奴は無言で彼女の服を脱がし始める。彼女がいくら叫んでも誰も助けに来ない。奴は彼女のTシャツを引 き裂くと、今度はジーンズを脱がし始めた。ジーンズは瞬く間に脱がされ、彼女の下着姿があらわにされる。 彼女は白いブラジャー、そして、純白のパンティ姿で股間の辺りが濡れている。どうやら奴に襲われたショ ックで失禁してしまったようだ。そして濡れたパンティからは陰毛がくっきり透けていた。  奈々子 「た、助けて―ーーーーーーーーーっ!」  その時、奴はまとっていた衣服を脱ぎ捨てた。奴の怒張した肉棒があらわにされ、彼女にゆっくりと近づ いていく。彼女は腰を抜かしてしまったようで、自由に歩くことが出来ない。奴はブラジャーを思いきり引 っ張った。引き千切れるブラジャー、そして彼女の乳房があらわにされる。奴は乳房を掴むと、激しく揉み はじめた。    奈々子 「や、やめて・・・そこは・・・・・・あ・・・あぁぁぁ・・・あぁ」  奴は乳房を暫く揉んだ後、そのつんとしたピンク色の乳首に口をつけ、激しく舐め回すのであった。乳首 は、奴の唾液を帯びて日差しを受けると、きらきらと光った。  奈々子 「あ、あぁ、あぁ、あぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ、はぁはぁ」  奈々子は奴の行為に感じてしまっているようであった。やがて奈々子の純白のパンティに手が掛けられる と、思いっきりずりおろされるのであった。彼女の最も恥ずかしい部分があらわにされ、逆三角形の茂みか らはなにかきらきらしたものが流れ出ているのであった。奈々子は両胸を隠しながらすすり泣く。奴はいき なり茂みの中に肉棒を突き刺した。  奈々子 「あぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」  奴はただひたすら腰を振る。しかし奴は何も言わない。そして表情も変わらない。奴は既に死んでいる以 上、絶頂を感じることもないだろう。いつまでも、いつまでも腰を振りつづける。やがて彼女が腰を激しく 動かすと、彼女はぐったりしてしまった。絶頂のあまり、気を失ってしまったようだ。彼女の心は今、「無」 に近い状態になっていた。そしてその時・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  天空のかなたより、一筋のまばゆい光が奈々子に向かって飛んできた。そしてその光は奈々子の体を包みこ んだ。何か強い力が働いたのか、奴の体が遠くへ弾き飛ばされた。  そのころ、奈々子は夢を見ていた。いや、それは夢ではない。光の主が奈々子に話しかけているのだ。  奈々子 「あれ、ここは何処」   コミュ 「私の名はコミュ、たった今地球に来ました。」  奈々子 「貴方って、神様か何か?」  コミュ 「神様・・・うーん、そういったものではないです。どちらかと言うと人間達が言う精霊に近い と思います。」  奈々子 「精霊、うっそーっ、精霊が本当にいるなんて信じられない。」  コミュ 「嘘ではありません。私達はあらゆる宇宙に存在します。」  奈々子 「で、貴方何しに地球に来たの?」  コミュ 「いま、この地球には多くの悪霊が住みついています。彼らは人間にとりつき、自分達の住みや すい世の中に変えては、この地球を乗っ取ってしまおうと企んでいるんです。今まで、彼らは色々な人間に とりつきました。例えば、第二次世界大戦も悪霊の仕業です。」  奈々子 「うっそー、それじゃぁ、死体が生き返る事件っていうのも・・・」  コミュ 「あいつらの仕業に間違いありません。早く何とかしなければ」  奈々子 「あなたが闘えば良いじゃない」  コミュ 「駄目なんです。私達はエネルギー生命体で実体を持っていないために、誰かにとりついて闘わ なければならないんです。」  奈々子 「結構不便なんだね、貴方達って。」  コミュ 「そうだ、あなたにとりついても良いですか。貴方だったらきっと旨くいきますよ!」  奈々子 「よりによって何で私なのよー。私に何が出来るっていうの。」  コミュ 「貴方に特殊な力を与えます。だから正義の戦士として戦ってください。」  奈々子 「私に・・・出来る?」  コミュ 「えぇ、貴方なら出来ます。よし決めた。さぁ、あいつがまた来ます。早速闘いましょう。」  奈々子 「えぇ、いきなりー」  その時、奈々子は目を覚ました。奴が全裸で彼女に向かってくる。その時、コミュの声が心の中に響いて きた。    コミュ 「奈々子さん!その胸のペンダントを天にかざして、はやくっ!」  奈々子 「わかったわ!」  奈々子がペンダントを天にかざすと、突然ペンダントからまばゆい光が彼女を包んだ。その瞬間、全裸だ った彼女の体が、真っ白いレオタードのような服に覆われた。奈々子は思わず自分の体をじろじろ見る、顔 の部分に違和感を感じた彼女は自分の顔を触ると、そこには、仮面のような物がついていた。  奈々子 「な、何これ、何なのこの格好」  コミュ 「これが私の与えた特殊な力です。あなたは今日から正義の戦士、そうホワイトウーマンです!」  奈々子 「ホ、ホワイトウーマン!!!よーし、いくわよーーーっ」  奈々子ことホワイトウーマンは、奴に飛び掛って行った。闘いは最初はホワイトウーマン優勢であった。 彼女がひらりとマントを振りかざすと彼女は数十メートルジャンプし、奴の顔面に蹴りを入れた。奴の腹を 思いっきり蹴り上げると奴は数メートル吹っ飛んで行く。しかし奴はいくら攻撃しても起き上がって来る。 やがて、彼女に疲れが見え始めてくると、奴が突然彼女に飛び掛ってきた。そして奴は遂に彼女の体に馬乗 りになった。  ホワイトウーマン 「きゃぁぁぁぁぁ、つ、強いっ、一体どうしたらいいの。」  コミュ 「奴の体に貴方のベルトを巻きつけてください。そうしてベルトに向かって念じれば、貴方の目 から光線が出ます。そうすれば奴はそのベルトのバックルの中に封印されて二度とこの世に現れることがで きなくなります。」  ホワイトウーマン 「わかったわ。このベルトで・・・・よーし」    彼女は奴を突き飛ばすと、奴の股間を蹴り上げた。奴が思わず倒れこむ。彼女はおもむろにベルトを外す。  ホワイトウーマン 「今だわ!悪霊め、覚悟しなさいっ!とぉーっ」  倒れている奴の体にベルトを巻きつけようとしたそのとき、奴の手が彼女に振り掛かる。奴の手は彼女の レオタードの胸倉の部分を掴むと、それを思いっきり引き裂いた。真っ白いレオタードが引き裂かれると、 彼女の左側の乳房があらわにされるが、彼女はそんなことはお構いなしに戦いつづけた。しかし、奴は彼女 のマントを掴むと、それを思いきり引っ張り、マントを引き裂いた。  ホワイトウーマン 「ねぇ、何か武器みたいな物はないの。このままじゃやられちゃうわ!」  コミュ 「胸のペンダントを握ってみてください。」    彼女は胸のペンダントを握った、するとペンダントは小さな銃に変わった。  ホワイトウーマン 「なにこれ、ピストル?」  コミュ 「それを使ってください。しかし、その銃はあなたの体力をエネルギーにしますので、くれぐれ も無駄には使わないでください。」  ホワイトウーマン 「わかったわ。いくわよーっ。」    彼女は奴の頭に照準を合わせると、引き金を引いた。奴の頭が砕け散る。しかし、奴はまだ生きている。  ホワイトウーマン 「あいつったらまだ死なないわね。よーしもう一発・・・あぁ、なんか頭が痛い。一 体どうしてなの。あぁっ」  コミュ 「いったでしょ。その銃はあなたの体力がエネルギーだって、使いすぎるとあなたは動けなくな ってしまいますよ。」  ホワイトウーマン 「それじゃぁ、あともう一発だけ・・・それで決めないと・・・でもあいつの何処を 狙ったら、そうだ、足を狙えばいいのよ。」  彼女はそういうと奴の足に照準を合わせ、引き金を引いた。奴の両足が砕け散る。奴は両腕をばたばたさ せるのみである。しかしホワイトウーマンは相当体力を消耗したせいか、両足が思うように動かず、地面に 座りこんでいた。  ホワイトウーマン 「何てことなの、折角ここまでやったっていうのに、足が思うように動かないわ。で もあいつだけは何とかして倒したい。」  彼女は奴に向かって這って行った。そして奴の右腕を掴むと、ベルトを腰からはずし、奴の体に巻きつけ た。そして彼女の両目が突然青く光ると、まばゆい光が彼女の目から放たれた。奴の体は少しずつ砕け始め やがては体全体が砂のようになって、ベルトのバックルにすいこまれた。。奴はこの世から消えた。彼女は はじめての闘いに勝利したのだ。彼女はゆっくりと立ち上がる。  ホワイトウーマン 「私、勝ったのね。あいつをやっつけたのね。」  コミュ 「えぇ、あいつは完全に消え去りました。もう二度とこの世には現れません。」  ホワイトウーマン 「良かった!」  その瞬間、ホワイトウーマンの変身が解けた。もとの奈々子の姿に戻ったのだ。奈々子は全裸のままで、 急いで部屋に戻ると、鍵を締め、ベッドに倒れこむと深い眠りについた。しかし、街にはまだ多くの生ける 屍達が人間を襲っているのだが、いまの彼女に必要なことは一刻も早く体力を回復し、そして次の闘いに備 えることである。  今ここに、新しい救世主が誕生した。その名はホワイトウーマン。彼女はこれからも悪霊達と戦いつづけ るだろう。全ての悪霊がいなくなるその日まで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・                       つづく