平成13年5月18日・初版

被虐の姫戦士 プリンセス・レナ・第3章/ZENK・著

この物語は、プリンセス・レナと蛇神の娘との邪神復活を巡る闘いですが、 目指すのは、レナの残酷な運命の物語(落城・流浪・性奴への転落・祖国再建)です。 初めてのオリジナル・ヒロインで、上手く書けないですが、その点はご容赦下さい。 ---------------------- 前回より ---------------------- 父母を殺され叔父ムバルに国を奪われたラフレシアのレナ姫は、 蛇神の娘ナーガによって性奴の呪いをかけられる。 仇に捕われ牢に入れられていたレナは神官ラルの罠に嵌まり脱獄するが、 再び捕われ仇のムバルに口で奉仕させられる。 神官ラルの策略で民を懐柔したムバルは、その一方で、 将軍ザクを使い前国王に忠実な者達を次々処刑し、その権力を強固にしていった。 国を逃げ出した者達もナーガ族によって殺戮され孤立無援となるレナ。 邪神を倒すガイアの剣もナーガに奪われ絶望の淵に落されたレナに さらなる罠と責めが仕掛けられる。 登場人物: プリンセス・レナ=元ラフレシアの王女 仇討と王国再建を目指して闘う美少女戦士 ムバル王 =レナの叔父で 国を乗取った男 (レナの母の仇) 神官ラル =ムバル王の腹心で狡知で卑劣な催眠術者 将軍ザク =ムバル王の配下の残虐で野心的な歩兵団隊長 ナーガ =ムバルを操り、邪神復活を図る蛇神の娘 ゾキア =ナーガの配下で蛮族の長(レナの父の仇) シード =前国王に忠実な兵士 クルト =シードの仲間 イムザ =ローレンシア王 (母の兄) ----------------------------------------- 牢獄 ----------------------------------------- 衣類を奪われ毛布一枚に身を包み、 レナは疲れた体を冷たく暗い石の牢獄に横たえていた。 一旦は脱出したものの ナーガの呪文に敗れ衛兵に捕われ ムバルの前に引き出され憎い仇の一物を口で奉仕させられた。 そのショックは16歳の娘には大きな悔恨だった。 剣の柄で自分の処女を破ったことも、それを見知らぬ男達の前でした恥ずべき事も 呪文に操られての事とは言え、レナにとっては死にたい程の屈辱だった。 レナは思い切り声を上げて泣きたかった。 それが 王女として”端たない”ことと教えられていたが、それを叱る母はもういなかった。 いつまでこの地獄が続くのか、いっそ潔く自害してしまいたい、そんな思いに捕われていた。 だが、自分を頼る者が、憎い仇がいることが、自害を思いどどめていた。 そんな思いに揺れるレナの耳に、何者かが声を掛けて来た。 「レナ様…レナ姫様…」 レナはすすり泣く顔を見られぬようにブロンドの長い髪で前を隠し、声のする方ににじり寄った。 レナ 「あ、あなたはラル!?」 神官ラル 「しっ、静かに。申し訳ありませぬ、まさか衛兵が固めているとは。 私めの迂闊でございました。レナ様に辛い思いをさせてしまいました。お許しを…」 レナ 「あなたも…無事だったのですね…私にはそれがなによりです」 レナの優しい言葉に、神官のラルは、はらはらと泪を流しレナの細い手を握り締めた。 レナも、まだ味方がいるのだという心強さに、気持ちを少し落ち着かせていた。 レナ 「せっかくのあなたの好意でしたが、私に力の無いばかりに…責められるのは私の方です」 レナの言葉を遮って神官のラルは、その手を強く握り締め言葉を強くした。 神官ラル 「レナ様、朗報がございます。 王妃様の兄上、ローレンシア王が、レナ様の味方になってくれますぞ」 沈んでいたレナの顔が僅かに上がり、泪で潤んだ瞳が大きく開かれた。 その吸い込まれそうな瞳に、抱きしめたい欲望に駆られたラルは思わず息を呑んだ。 レナ 「本当ですか!? 叔父王がレナに力を貸してくれるのですか?」 神官ラル 「私が出した手紙に返事を戴きました。証拠を残さぬ様飲み込んでしまいましたが 確かにレナ様の味方になると書いてありました。」 レナは母の兄ローレンシア王イムザとは会ったことは無かった。 母にその兄のことを聞いたときも、母は悲しい顔で首を振り答えなかった。 だが叔父のローレンシア王が自分に力を貸してくれるなら、 仇を討ち国を奪い返すこともできるのではないかという希望に胸を膨らませた。 それが、神官ラルのレナを更なる地獄に誘う罠と知らず、 レナのふっくらした頬に希望の微笑みが戻った。 神官ラル 「今暫くのご辛抱です。決して希望を捨ててはなりません。 あなたは、私どもの、先王の臣下の、国民の、希望なのです。いいですかレナ様」 神官のラルに励まされ、その手を握り返すレナ。 レナを包んでいる毛布から垣間見える形の良い乳房と谷間に 神官のラルは視線を釘付けにされた。 レナ 「約束します。どんな目にあっても決して挫けません。ありがとうラル」 ------------------------------ その翌日の晩も、レナはムバルの前に引き出され尋問を受けていた。 レナは裸に剥かれ後ろ手に縛られた姿で、簒奪者ムバル王の前に引き出され ムバルの周りには5人の近衛兵が控え、レナの隠しようの無い裸身を視姦していた。 見知らぬ男達の前に裸を曝す屈辱に打ち震えながらも王女の気品を見せるレナ。 ムバル王 「ガイアの剣の秘密を喋って貰おうか。何か聞いておるだろう?」 レナ 「…」 ムバル王 「何も喋らぬつもりか? ならば、また、その身体に聞いてみようか」 レナ 「…」 ぎらついた・いやらしい目でレナを見るムバルが、何をしたいのかは女の本能で解っていた。 レナは神官のラルに誓った言葉を噛み締め、どんな加虐にも耐えようと決意していた。 だが、ムバルが兵士にベッドに運べと命令したとき、恐怖に身を竦ませた。 二人の兵士に引き立てられ身を捩って逆らうレナ。 だが縛られた身体ではどう暴れようと所詮は無駄な抵抗だった。 兵士の太い腕に捕まれ引き立てられるレナ。 身体を折って股間の茂みを隠すように歩くレナ。 レナ 「!!」 ベッドの上に仰向けにレナを放り出した兵士は、 手早くレナのすらりと伸びた華奢な足首に両端から別々に縄を掛け、 それを柱に通すと力を込めて引き始めた。 レナ 「い、いや、いやです!」 レナは恥ずかしさの余り、顔を激しく振り首まで真っ赤にして腿に力を入れ必死で抗がらった。 しかし、屈強な男の力に娘が叶う筈もなく、じりじりと縄は引かれて行く。 レナ 「いっ、いやぁああああああああああああ」 レナにも自分の両足が少しづつ開かれていくのが解った。 自分の意思に反し、力を込めた抵抗も空しく、徐々に開かれていく両脚。 16歳の躾の厳しい王家の娘にとって、それは耐えられない恥辱だった。 レナ 「お、お願い、や、やめて、止めて下さい」 暴虐に耐える決意はしていても、若い娘にとって脚を開く恥ずかしさは耐えられない、 自分の意志ではなく、男の力で無理矢理開かせられる恥辱にレナは赤面し、 開かれる脚を閉じようと、頭を仰け反らせ、白く細い首を突き出し、 激しく腰をくねらせベッドで暴れるレナ。 ぎりぎりと引かれる縄に、やがて人の字にされてしまうレナ。 レナ 「あ、ぃ、いや! いやぁぁあああああ」 レナの必死の叫びを楽しむようにムバルが割り開かれた股間の前に立った。 ムバルの前に自分の秘部を曝け出すレナ。 薄い茂みの下の突起、それに続く鶏冠のような形をしたクレパス、 その下の可愛い菊門までもが憎い男の前に曝されていた。 身動き一つ出来ない身体に狂おしい焦燥感と仇の前に無力な口惜しさに苛まれるレナ。 ムバル 「くっくっく、いい格好だなレナ姫、丸見えだぞ」 曝け出された股間を見ながら卑猥な言葉でレナを嬲り始めるムバル。 唇を噛み締め、目を固く閉じ、全身をピンクに染めて、屈辱に耐えようとするレナ。 レナ 「いっ、いやっ、み、見ないで、見てはいけません」 恥ずかしい姿を曝す屈辱に耐えながら、仇に哀願しなければならぬ無念に歯を食いしばるレナ。 兵士達の視線がレナの裸身を貫いていた。 ムバル 「どれ ワシが調べてやろう」 ムバルの近づく気配を感じ身体を固くするレナ。 レナ 「あっ、ひ、ひぃいっ!」 ムバルの指がラビアに触れる。 おぞましさに悲鳴を上げるレナ。 レナ 「い、いやぁああああああああああああーーーーーーーーーー」 体を反らせ絶叫するレナ。 クレパスを両手で割ってピンク色の秘唇をこじ開け舌を肉襞に刺し込むムバル。 レナ 「あぅ! く、くぅぅっ」 レナは身体の奥底から突き上げる快感と男への恐怖から全身を強ばらせた。 ムバルのざらついた舌がレナの肉襞を擦る。 仰け反り屈辱に震えるレナ。 レナ 「んんっ! んはあっ、あ、あ、はぁああっ」 ムバルの指先がクリトリスを掴みぐりぐりと動かす。 狂おしいまでの刺激に不自由な身体をくねらせ、首を激しく振るレナ。 ムバル 「どうだ。 喋る気になったかなレナ姫?」 ネチネチと甚振るムバルにレナの頭は真っ白になっていたが、 仇に、簒奪者に屈しまいとする意思だけは残っていた。 ムバル 「どこまで頑張れるかな? さぁ、お前達も手伝え! レナを責めてやれ!」 ムバルがレナを嬲り者にしている光景に股間を熱くしていた兵士達は 我先にとレナのお椀型の形の良い乳房にむしゃぶり付いた。 行き場の無くした男は脚の指を、耳を、太股を、臍までも襲った。 レナ 「ひ、ひぃっ、あ、あうっ、い、いやぁあああーーーーーーーーーー」 股を引き裂かれ後ろ手に縛られた娘1人を男が6人で嬲り者にしていた。 乳首を噛まれ、耳に舌を入れられ、太股をしゃぶられ、乳房を揉まれて喘ぐレナ。 激しく腰をくねらせ首を振って耐えるレナ。 悪魔のような笑いを浮かべ意地悪く責め上げるムバル。 レナ 「ん、んんぅ、ぁん、はぁぅ、や、やめ… あ、ぁあん、ひあああぁ」 全身を硬直させ、快感に負けまいと頬を真っ赤に染め、涙に濡れた顔を背け 喘ぎを出すまいと息を止め唇を固く噛みながら耐えるレナ。 だが性技に長けた男達の前に乙女の抵抗は脆くも崩れ始めていた。 レナ 「や、やめて、やめて下さい、ぁ、あふぅっ、い、いやです」 乳房を乱暴に絞り指の腹で乳首をコロコロ玩ぶ兵士。 形のいいレナのヘソを舌で舐め上げる兵士。 耳たぶをカリカリと嬲るように噛む兵士。 許しを請いながら望まない快感の虜となって苦しげに身悶えるレナ。 レナ 「いやぁっ、あうぅぐむむぅ」 ムバル 「ふっふっふ 淫乱な娘だな。あそこはもうグショグショだぞレナ姫」 ラフレシアの生きた宝石と詠われたレナ姫を、思うが侭にできる征服感は まるで美酒を味わうようにムバルを心地よく酔わせていた。 レナ 「あ、ああ、ああ……っ、あひぃいーーーーーーーーーー」 熱い疼きが全身を貫き、電撃を受けたように身体を弓なりに反らせるレナ。 四肢が硬直し悲鳴を上げてよがりるレナ。 声にならぬ声をあげ、浮かせていた腰をベッドに激しく着け レナはがくがくと大きく痙攣してやがて動かなくなった。 レナはなす術も無く絶頂を迎え、失神した後の身体を痙攣させていた。 ムバル 「やりすぎたか…まだ男を知らぬ娘ではちと 過激だったようだな… だが、いずれワシの顔を見ただけで、股を濡らすようになるじゃろう…」 力が抜けぐったりしベッドで脚を大きく広げたまま横たわるレナ。 その魅惑的な太股の付け根からは 蜜がとめどとなく流れ落ち ベッドのシーツに水溜りを作っていた。 ----------------------------------------- 高札 ----------------------------------------- 二人の兵士に引き立てられ緊縛された身体で城の回廊をよろよろと歩くレナ。 その姿を腰を低く落した二人の男が薮の中から窺っていた。 クルト「間違いないのか シード?」 シード「ああ、遠くからだが俺はレナ姫を見たことが有る。髪は短くなっているが間違いはない」 クルト「どうする?」 シード「兵隊は俺が倒す。お前は弓で援護してくれ」 クルト「わ、わかった」 シードとクルトは暴君ムバルの粛正から、一旦は家族と共にラフレシアからの脱出を図ったが ナーガ族の待ち伏せに遭い二人を覗き殺戮されてしまった。 家族を失った二人はナーガとムバルへの復讐を誓い国に戻ったとき、 レナ姫が生きて牢に捕われている噂を知り、その救出に城に潜入していた。 その二人の姿を離れた場所で水晶球を通して見ている者がいた。 ナーガ 「残党か…姫を助けようというのか…よかろう…ガイアの手がかりはレナ1人… 小娘1人捕らえるのはいつでも出来る…ガイアの剣の秘密を調べる必要がある… 望み通り逃がしてやろう…」 ナーガは深いフードに覆われ隠された口を歪め、不気味な笑いを浮かべると 水晶球を置いた黒曜石のテーブルの椅子から すくっと立ちあがった。 ナーガはレナをわざと逃がすことにした。 それは、祭壇の壁の中から伝承の剣を見付けたものの その剣の力に疑問を持った為だった。 神を倒すほどの力はあの剣にはない…ならば、伝承は偽りなのか… それとも、もっと隠された力が有るのか? それを知る為、わざと王族のレナに剣を使わせてみたのだが、結果は同じだった。 レナを逃がそうとガイアの剣は我が手にある。 いずれレナが現れようと呪文の前にレナは無力なのは解っている。 ガイアの剣にパワーが戻ったときこそ邪神復活が叶うと考えたナーガだった。 レナが草に脚を取られ倒れようとしたき、抱き起こそうとした兵士の1人が 突然背中を反らせ苦悶の声を上げた。 訝ったもう1人の兵士が、背後に立つ怪しい男に剣を抜こうとしたとき その男の眉間を矢が貫いた。 兵士が驚愕に大きく目を開けたまま背中から倒れる。 男がレナを抱き起こし素早く藪の中に隠した。 レナ 「あ、あなたは…」 男は縄をナイフで立ち切ると自分の着ていた粗末なフードをレナに着せた。 シード 「レナさまの味方です。俺はシード。こいつはクルトと申します。急ぎましょうレナ様」 シードと名乗った精悍な男は 弓を持った男を手短に紹介すると レナを急かせ城からの脱出を促した。 3人が薮から裏門へと走ったとき、周囲が騒がしくなり兵士の足音が身近に近づいて来た。 だが兵士達が突然炎に包まれ、その声が悲鳴と怒号に変わった。 騒乱の中3人は無事裏門を抜けると、シードは干し草をつんだ馬車にレナを隠し ゆっくり城を離れていった。 ----------------------------------------- ラフレシア城の正門前に高札が立てられ、その周りには人々が集まってり、 高札を読む声に聞き入っていた。 その高札にはこう書かれていた。 「前王の戦死と王妃様の自害で発狂したレナ姫様が、昨夜何者かにかどわかされた。 姫を無事連れ戻した者には、金貨1000枚と兵士長の称号を贈る。 又、奪還に繋がる有力な情報をもたらした者には、金貨50枚を与える。 尚、パーティを組んだ場合は称号はそのままであるが、賞金は頭割りとなる。」 通報だけで金貨50枚は大金だ、それだけあれば1年や2年は遊んで暮せる。 まして金貨1000枚なら大荘園の主の年収だ。 高額の懸賞金は男達ばかりかおしゃべりな女達の間にも直ぐに噂は広まっていった。 ムバル王の署名と紋章の印が入った高札を見ながら、 肩をいからせた大男やはしこそうな小男がきょろきょろ辺りを見回しながら 仲間を探し、より詳しい情報を求めて話をし合っていた。 ムバル王は神官のラルと将軍のザクを前に、熊が徘徊するようにうろうろと 王座の前を堂々巡りしていた。 ムバル王 「レナ姫を必ず探しだせ! そしてワシの前に連れてくるのだ!」 将軍のザクに”お前の責任だと”言わんばかりの剣幕で怒鳴るムバル。 ”災難だ”という不満顔を表にだしながら、暴君の命令を聞くザク。 神官のラルは その場を取り持つように口を挟んだ。 神官ラル 「高札を立て懸賞金をつけております。 この国から逃れられぬ以上、必ず吉報が参ります。暫くお待ち下さい殿下。」 将軍ザクは、神官ラルの国民懐柔策と残党をほぼ掃討した今、 レナ姫を助け出す者がいたことに驚きながらも、 国境周辺の警備を増強し追手の部隊を編制していた。 将軍ザク 「…ラフレシアからの脱出は不可能だ、 ならば城下に潜伏しているか、国境近くの森に隠れる以外はあるまい。 城下なら懸賞金目当ての情報があるだろう 国境は固めた 後は森だな… 1人は剣・1人は矢で殺されていた。レナを救出したのは2人組か… それと…城の裏口に新しい轍の跡が有った…馬車から調べれば…」 考え込んでいる将軍のザクに ムバルの甲高い怒声が飛んだ。 ムバル王 「助け出したのは前王の家臣に違いない。必ず突き止め根絶やしにするのだ。解ったな!」 ----------------------------------------- シードとクルトはルキアの森の入り口近くの粗末な小屋にレナを案内した。 小屋にたどり着いて直ぐ、シードから粗末な衣装を着せてもらったレナは、 牢獄と陵辱でたまった疲れからそのまま倒れる様に寝込んでしまった。 街の様子を調べに行っていたクルトが心配そうな顔で、シードに相談していた。 クルト 「どうする? レナ様に懸賞金がかけられているぜ」 シード 「ここなら、暫くは安全と思うが…グズグズしていられないな」 クルト 「レナ様は、まだ眠ったままなのか?」 シード 「ああ…余ほど辛い思いをしたのだろう、丸二日、死んだように眠ったままだ」 クルト 「国境の要所には警備兵が大勢いるし、森にはナーガ族が待ち伏せしている。どうする?」 シード 「森を抜けるしかないだろう…だが、その先の当てがない…」 クルトとシードが相談しているとき、小屋からレナ姫が現れた。 クルトとシードの二人は昼間の光の元でレナの姿を見て思わず息を呑んだ。 粗末な村娘の衣装を着ていても、陽光を浴びて輝くプラチナブロンドの髪・ 愁いを含んだ大きな瞳・すらりと伸びた手足・気品と利発な顔立ちから レナが高貴な娘だということは隠せなかった。 シード 「レナ様! お目覚めですか。」 レナ 「あなた達が私を救ってくれたのですね」 両手を前垂れで祈るように組むレナの透き通るような一声に、 絵から抜け出した天使を見るように緊張したクルトは吃りながら答えた。 クルト 「そ、そうです。俺はクルト。こいつがシードです。」 レナ 「クルトとシードですね。 改めて礼を言います。ありがとう」 名前を言われたシードもクルトも緊張からレナがお辞儀すると、同じ仕種をしていた。 それを見て白い奇麗に整った歯を見せて微笑む少女はまさに天使だった。 レナ 「さっき、森を抜ける相談をしていたようですが…」 クルト 「そ、そうです。ですが、ルキアの森にはナーガ族の奴等がいます。」 シード 「それに、この国から逃げ出しても何処へ行くか…」 レナ 「では、ローレンシアへ連れて行ってくれませんか。 ローレンシアは母の兄の国です。私に力を貸すと約束してくれています。」 クルト 「そうか、ローレンシアが味方になってくれるなら安心だ。決まりだな!」 シード 「ローレンシアに向かうとして、ルキアの森をどう抜けるかだな…」 何事にも安直なクルトは、ローレンシアへ行けば何とか成ると喜んでいたが 慎重なシードはナーガ族の待ち伏せをどう回避するかに苦慮していた。 クルト 「姫様、腹が減ったでしょう。飯を作りますよ」 シード 「料理は俺が作る。お前はレナ様の衣装と旅の食料を買って来てくれないか」 シードに仕事を頼まれたクルトは、いい所を横取りされた気分に不満を持ったが、 気がかりな懸賞金のこともあり、もう一度街の様子を探る必要もあると思い直すと、 その足で街へと向かった。 ----------------------------------------- 手慣れた仕種で料理を作るシードをレナは感心しながら見ていた。 箱入り娘で育ったレナは素材の料理の仕方等見るのは始めてだった。 レナ 「シードは料理も出来るのですね」 シードの作る料理を見つめながら、お腹から きゅるきゅる と音を立てるレナ。 それを聞いて微笑むシード。 端たないと思わず顔を赤らめ両手で顔を覆うレナ。 そんなレナの仕種に、クルトはレナに対する敬慕以上の感情を抱き始めていた。 シード 「もう直ぐですよレナ様。小屋に食器が有ります持って来て下さい。」 シードに言われ、レナは素直に こくりと肯くと小屋へと入って行った。 くびれたウエストからか、まぁるい形の良いヒップを揺らせながら歩く魅惑的な後ろ姿を見ながら、 シードは、愛くるしいレナを抱きしめたい感情に駆られながら、手を休めず料理を作っていた。 ----------------------------------------- クルトが街から戻りレナが小屋で衣装を着替えているとき シードは落ち着かない態度のクルトに不信を抱き詰問していた。 シード 「レナ姫に懸賞金が掛けられていると、言っていたなクルト」 クルト 「あ、ああ…そうだったな」 シード 「賞金はいくらだ?」 クルト 「ど、どうしたんだシード。なぜそんな事を聞くんだ?」 シード 「裏切ったのかクルト」 クルト 「聞いてくれシード、金貨1000枚と兵士長の職が手に入るんだぞ」 シード 「キサマ! やはり裏切ったな」 シードがクルトに飛び掛かるのとクルトがリングダガーを抜くのと同時だった。 もみ合うシードとクルト。 クルトの腹から零れ落ちる密告の賞金。 シードの腹にダガーを突き立てるクルト。 裏切った後悔と仲間を刺した驚きから転げるように逃げ去るクルト。 腹を押さえながらレナに緊急事態を告げようとよろめきながら歩むシード。 小屋の扉が軋みながら開いたとき、 レナは振り返って 腹を押さえよろめき倒れるシードを見た。 駆け寄って抱きかかえたレナの手をべっとりとした血糊が赤く染めた。 レナ 「ど、どうしたのです! 何があったのですかシード」 シード 「レナ様…逃げろ…クルトが…裏切った…追手が…来る」 シードは刺された腹を押さえながら、弱々しい声でレナに森へ逃げるように告げ クルトから奪った金貨を差し出しレナの手を握り締めるシード。 剣とダガーを指差し、声の出なくなった口をパクパクさせながら森への逃亡を急かせるシード。 ----------------------------------------- 怪物 ----------------------------------------- 追手から逃れ1人ルキアの森を奥へ奥へと進むレナ。 せっかく巡り合えた僅かな味方のシードをクルトの裏切りで失った悲しみは レナの頬を涙で濡らしていた。 レナ 「…シード … 貴方のことは忘れません…きっと仇は討ちます。レナを見守って下さい…」 王妃 「逃げて! 逃げなさいレナ! そして王の仇を!」 自害した母の最期の言葉がまだ耳の中にこだましていた。 シードの言葉にならぬ声が最後の姿が瞼に焼き付いていた。 だが今は その悲しみを乗り越えて、ローレンシアへ向かわねばならなかった。 今のレナにとって、父と母の仇を討ち祖国を再建する希望はそれだけだった。 道草の葉で脚を切られながら獣道を進むレナの周りの空気が変わった。 森が一瞬騒ぎ、続いて静寂が訪れ死んだように静まりかえる レナの息をする音・息を吐く音・心臓の鼓動だけが静寂の森に波打っていた。 そのとき、前の茂みから突然黒い影が起き上がった。 それを見て立ち竦むレナ。 レナの前に現れたのは黒い鋼毛で全身を覆った、体長が3mほどもある熊だった。 その怪物の目の中に脅えながらも剣を構えるレナの姿が映る。 レナは全身の震えが止まらなかった。 始めてみる巨大な熊はレナにすれば伝説のモンスターのような怪物だった。 レナは剣を両手で構えながら腰を落し震える足をふんばって立った。 レナ 「…逃げれば殺される。…ここで死ぬ訳にはいかないわ…」 時間が止まったような静寂が巨大な怪物と美少女剣士の間にあった。 数秒が数分に感じられたとき、 レナを見ていた怪物が野獣の咆哮をあげ太い腕を振り落とした。 咄嗟に剣でそれを防ごうとするレナ。 レナ 「きゃぁああああああああーーーーーーーーー」 レナは衝撃で背後の茂みに数メートルも吹っ飛ばされた。 避けきれずに受けた肩に鋭い爪の傷痕があった。 右肩を抱くように庇うレナの左手の指先が赤く染まっていく。 最初の一撃で闘志は吹き飛び、怪物への恐れが、レナを捕らえていた。 腰が抜けたように立ち上がることもできずその場にへたり込んでしまったレナ。 威嚇するように怪物が大きな口を開け鋭い牙を見せる レナの引きつった顔の脅えた目に怪物が近づいて来た。 怪物が獲物を襲う素早さでレナに突進する 恐怖で大きな瞳を閉じることも出来ず竦むレナ。 そのとき、怪物の腹から尖った鹿の角が突然飛び出して来た。 一瞬何が起こったのか解らず怪物は自分の腹から突き出ている角を 不思議なモノを見るような仕種で見ていた。 首を捻り背後を振り返った怪物は、そこに筋肉を隆起させ上半身に呪文を描いた巨漢を見た。 巨漢は戦士の俊敏さで熊の腹を貫いたトライデントを引き抜くとそれで怪物の胸を刺し貫いた。 胸板を鑓で貫かれながら男を抱き捕らえようとする怪物。 その怪物の腹をダガーで引き裂く男。 男はダガーで引き裂いた腹に手を刺し込むと内臓を掴み出し 脚で蹴り上げて怪物を地面に叩き付けるように転がした。 憎悪の目を見開き男を睨みながら断末魔のう呻き声を上げる怪物。 レナは眼前の凄まじい戦いを呆然として見つめていた。 だが 怪物が倒れた後 レナの前に獰猛な姿を見せているのは 明らかにナーガの戦士 ラフレシアの民が恐れる狂戦士だった。 巨漢は怪物の腹から引き千切った内臓を握り締めながら 返り血を浴びた顔の鋭い目で新たな獲物を捕らえると、ゆっくりと レナに近づいて来た。 ------------------------------ ***つづく