平成14年2月15日・初版 平成16年6月11日・改訂(扉絵を追加)

聖天使ミレイヤ・「倒せ!銀行強盗!!貸金庫の罠」/AK−3・著 (原案:悪の司令官)

イラスト:悪の司令官
 今月のタウン・ナビゲーターの発売も無事終わり、ホッとしていたのもつかの間、今度は事務所の支払いが待っていた。 車を運転する奈緒美は、その機動力をかわれ、余計な手数料がかからない為に遠い銀行まで支払いに行っていた。 風下は近所の酒屋へ支払いに出かけていた。酒屋などの近所の情報は風下たちにとっては、立派な情報源であった。 風下が事務所に戻ると、奈緒美の机の上に彼女が持っていったはずの銀行通帳と現金が置かれていた。 「あれ、奈緒美のやつ、大事なもの忘れやがった。まったく、しょうがないなあ。届けてやるか。」 風下が事務所を出ようとすると、電話がかかってきた。 ”プルルルル!” 「ハイ、タウンナビ…」 受話器越しに所長の耳に飛び込んできたのは、奈緒美の慌てた声だった。 「あ、所長!すいません。通帳とお金、忘れちゃったんです!」 「あぁ、わかってるよ。いまから、そっちに行くから、少し待っていなさい。」 風下は苦笑しながら電話を切ると、銀行に行く支度を始めた。 風下は銀行に行くため、バスに乗った。バスが銀行の前を通るとき、風下は銀行の異変を感じていた。 「あれ?銀行のシャッターが下りているぞ?おかしいなぁ。」 少し不審に思いながらも、車内放送に気がつき、あわててチャイムを押した。 ”ピンポン!” バスを降りた風下。今日はいつになく風が強い日である。 「うー寒い!そうか、あそこの銀行は風が強い日は表のシャッターを下げて、裏口から出入りするときがあるんだっけ。 あれ?いつもなら、張り紙がしてあるのにな。きょうは風が強いから紙が飛ばされたのかな? あ、もう3時だいそがなくっちゃ。」 あわてて、裏口にまわる風下。裏口はいつもと変わりはないようであった。 駐車場に置いてある奈緒美のカローラを横目で見ながら、風下は裏口から店内に入ったのであった。 風下が来るのを待ちわびている、奈緒美。 「あ、もう3時だわ。所長は、なにをやっているのかしら。きょう、お金を支払わないと、また電話が 停まってしまうのに…」 そう、奈緒美がつぶやいているときであった。銀行の中で乾いた音が走った。 ”パン!パン!パン!” 乾いた音の発信源はライフルの音であった。 「店の中にいるやつは、全員手をあげろ!ここの支店長は、いるか!」 「お、俺だ。要求はなんだ。金なら幾らでも出す、せめてお客様だけでも解放してくれ。」 銀行強盗である。強盗団のリーダー格と思われる男は支店長に意外な要求をした。 「おれたちがほしいのは金なんかじゃない。ここの貸し金庫にしまってある、宝石だ。 ある場所は調べがついている。貸し金庫の103番だ。そこの鍵をよこせ!」 奈緒美にとっては、いざとなればミレイヤに変身をして、強盗達をアッと言う間に片付けてしまうのだが、 さすがに公衆の面前で変身をするわけにもいかず、ここはおとなしく強盗に従うしかなかった。 「…。しかたがない。これが103番の金庫の鍵だ。」 「おまえ、この鍵は本物か?ま、いいか。あとで確かめるか。ほら、手を上げたら、壁際に全員かたまるんだ! 逆らうとこうなるんだぞ!」 ”パパパパン!” 一人の強盗がライフルを威嚇射撃した。天井には無数の弾痕が付いた。奈緒美を含む人質たちは恐る恐る、 店の隅に固まっていた。しかし、奈緒美はその場所が裏口に少し近づいたのを見逃してはいなかった。 「困ったわ。こんなところで変身なんかできないし…。どうしよう。」 そのときである。風下は何も知らず、銀行の中へ入ってきた。強盗はすかさず、風下の姿を見つけた。 「おい!そこのオッサン!手を上げろって言ってるのが、わかんないのかよ!」 強盗たちの罵声に事態を知った風下。奈緒美は裏口から入ってきた風下のほうを振り向く。 「あ、奈緒美!」 風下が奈緒美のほうへ駆け寄ろうとするが、3人の強盗たちに取り押さえられ、袋叩きにされていた。 「あ、所長!…ごめんなさい。でも、今がチャンスね。」 奈緒美は心のなかで風下にあやまりながらも、こっそり抜け出そうとしていた。 強盗たちは風下に暴行を加えるのに夢中になって奈緒美が外へ出ようとしているのには気付かなかった。 ”ボコボコ!ゴンゴンゴン!” 「い、いてぇーー!」 風下が強盗たちに殴る蹴るの暴行を受けている音を聞きながら、裏口のドアを開けようとしたが、 ロックされていてドアが開かない。外を見張っている仲間が、風下が店内に入るのを見た後、ドアをロックしたのであった。 「あ、いつのまにかロックされているわ。でも、私には意味がないわね。」 奈緒美はそう、つぶやきながら手に力をこめると、あっけなくドアが開いてしまった。 奈緒美の怪力で、ドアノブを破壊したのであった。 ”コロン”  奈緒美が怪力で外したドアノブには彼女の手の跡がクッキリと残っていた。 「さあ、ここからは私の出番ね」 奈緒美がころがしたドアノブの音に気がつき、見張り役が駆けつけてきた。廊下に出た奈緒美を見つけ、 ライフルを奈緒美の首筋に突きつけた。 「あ、このアマ。どこに行きやがる。逃げる気か!」 奈緒美は強盗の言葉に臆することなく、ライフルの銃身を握った。 「逃げはしないわ。それよりも、こんなもの持っていて物騒じゃないの?」 奈緒美はそう言うと、銃身をさらに握り締め、アメのようにねじ曲げてしまった。 奈緒美の怪力にあっ気にとられ言葉も出ない見張り役の男。奈緒美はこの男に、声を荒げて言った。 「こんなもの発砲したら、あなたが危険よ。だから、物騒だって言ったじゃないの!」 「な、なんなんだ?この女!」 奈緒美の怪力に見張り役はひるんだ。奈緒美はその隙を見逃さず、蹴りを入れた。 ”ドスン!” 鈍い音とともに、見張り役は数メートル後ろの壁に叩きつけられ、気を失った。 「こんどこそ、本当に行くわよ」 そう言うと奈緒美は正面を向き、両手の指先を伸ばして、両方の中指をこめかみにあてた。 「ティアラ・アップ!」 すると奈緒美の額が輝き、金色のティアラが現れた。 続けて胸の前で腕をクロスし、そして両手を広げた。 「チェンジ・ミレイヤ!」 奈緒美が声を上げると同時に、身体が光に包まれていった。そして、奈緒美が本当の姿を現したのだ。 ”バーン!” ミレイヤに変身した奈緒美は、ドアを蹴破り店内に駆け込んだ。 「あなたたち、もう観念しなさい!ここにいる人質を解放するのよ!」 「なんだと、それなら、ここにいる男はどうなってもいいのかな?」 そこには、強盗にライフルを突きつけられ、震え上がっている風下の姿があった。 ミレイヤは強盗の言葉に従うしかなかった。 「あなたたちの要求はなんなの?」 「ここの貸し金庫に保管されてる宝石さ。ちょうどいい。ミレイヤ。おまえに持ってきてもらおうか。」 「いやよ、なぜ、私が強盗の手伝いをしなければ、いけないの?」 ミレイヤの反抗的な態度に怒りを覚えたのか、風下に突きつけられたライフルの引き金に指がかかった。 「ミレイヤ、この男がどうなっても、知らないぞ。」 「わ、わかったわ。」 自由を奪われた風下の姿にミレイヤは強盗に従うしかなかった。 その姿を見た主犯格の男はミレイヤに貸し金庫の鍵を投げた。 「2Fにある、貸し金庫室の103番だ!さあ、早く取ってこい!」 ミレイヤは仕方なく2Fの金庫室に入り、103番の貸し金庫を空けようとした。 その瞬間、ミレイヤは全身の力が抜けていくのを感じた。 「なんなの?身体中の力が抜けていくわ。」 意識が朦朧とし、その場に倒れこんでしまったミレイヤ。主犯格の男は痺れを切らし、2Fに上がってきた。 「おい!なにをやっているんだ!早く降りてくるんだよ!」 意識が朦朧としているミレイヤは、声も出ず、うずくまっていた。 「ハッハッハ!罠にかかったようだな。おまえは、もう、おれたちのオモチャになるのさ。 しかし美女はどんなしぐさをしても、色っぽいな。そばで見るときれいな肌じゃないか。どれ、どれ…」 男のいやらしい手つきに、思わずわれに帰るミレイヤ。しかし、全身の力が入らない。 声を出し抵抗するのが精一杯であった。 「な,何するの、いやっ、やめてっ。ま、まさか、この金庫の中に…」 声を荒げて抵抗を試みるも、メテオ・クリスタルのせいで力を奪われ、男の思うがままにせれるミレイヤ。 そう、強盗がミレイヤに取りに行かせた貸し金庫の中の宝石こそ、邪鬼たちがほしがっていた、ミレイヤの弱点、 メテオ・クリスタルなのであった。 ミレイヤの前で、男は正体を現した。強盗一味は、メテオ・クリスタルを追うため、全宇宙を駆け巡っている 邪鬼たちなのであった。  メテオ・クリスタルとは遙か6500万年前、地球に飛来した巨大隕石に大量に含まれていたと言われている 謎の物質である。この物質は、ある一定以上の身体能力が優れている生物の生体エネルギーを吸収し、微弱の 放射線に変換しながら少しずつ蒸発する性質があると言われている。一説には恐竜が滅んだ原因とも言われている。 邪鬼達は、宇宙征服の野望の為に、メテオ・クリスタルを集めているのであった。 「お嬢さん、ようやく事態がわかったらしいな。だがな。このメテオ・クリスタルで力を奪われた、ミレイヤなんて、 所詮ただのコスプレねえちゃんさ。おれが、ここで身ぐるみを剥いでしまってもいいのだが、せっかくだ。 このさい大衆の面前でスーパーヒロインのストリップショーでも開催するとするか。さぁ、こっちへくるんだ!」 全身の力が抜けたミレイヤは、邪鬼になんの抵抗もできず、ただ叫ぶばかりであった。 「や、やめて!その汚い手で私を触らないで!」 「な、なんだとぉ!このアマ!こっちが下手に出ていれば、いい気になりやがって!こっちに来いって言ってるのが わかんないのか!」 ミレイヤの反抗的な言葉に逆上した邪鬼はミレイヤを後ろ手に縛り上げ、階段から蹴落とした。 本当ならこんなロープぐらいは簡単に引きちぎり、形成逆転といきたいところだが、世間は甘くなかった。 このロープは邪鬼たちがミレイヤを縛るために開発した、メテオ・クリスタルの粉末入り特性ロープなのであった。 「う、うぅぅ。ロープが切れないわ…」 自分の不甲斐なさに、涙が頬をつたうミレイヤ。邪鬼の姿へ戻った主犯格の男が仲間の邪鬼たちに指図をした。 「おい!、そのコスプレオネエチャンを入り口のドアにハリツケにしてやれ。 そうだな…どうやら、この男とは知り合い見たいだから、こいつの目の前に飾ってやれ。」 「い、い、い、いやぁ、や、やめて!」 親分格の邪鬼は、そう言いながら風下を指差した。風下の目の前でハリツケにされたミレイヤは声で抵抗するしかなかった。 「さぁ、これから世紀のスーパーヒロインのストリップショーをやろうじゃないか。 こんなキレイな裸を見られるなんて、今日の人質は本当に運のいい連中ばっかりだな…」 親分格の邪鬼の思わぬ行動に歓声をあげる人質の男たち。そして、その男達を白い目で見つめる女たち。 一方、ミレイヤは、自分の哀れな姿にひたすらチャンスを待つしかなかった。 「いや、いやよ。やめてー!お願い!や、やめてぇーー!」 ミレイヤの悲鳴のような声が店内に空しく響く。邪鬼たちは、そんなミレイヤのことなどお構いなしに、 彼女の服を脱がせはじめた。目の前で繰り広げられる、スーパーヒロインのストリップショーに、人質の男たちは、 歓声をあげていた。女たちもスーパーヒロインの裸体に興味を覚えはじめていた。 「へっへっへ。まずはこの邪魔なスカートを脱いでもらおうか…。さぁ、このコスプレオネエチャンのスカートを 剥ぎ取るんだ!」 親分格の邪鬼は目の前にいる風下に命令した。風下は、ほどなく、縛られていたロープをほどかれた。 「えっ?おれが?」 「いいんだよ。さぁ、早く脱がせるんだ!」 突然の指名に驚いていた風下だが、ここは仕方なく、邪鬼に従うしかなかった。 だが、内心では役得に喜んでいる風下であった。 「ごめん…。ミレイヤ…」 「い、いやぁ!やめてぇー!風下さんにそんなこと、されたくない!い、いやよ!やめてっ!」 あまりの恥ずかしさと、自分の哀れな姿にミレイヤは泣き叫ぶほか、なかった。 「おおぉぉーっ!」 ミレイヤの引き締まった、それでいてボリュームのある脚線美に人質の男たちは、歓声をあげた。 「この女が、ただの女ではないことを証明しようじゃないか。」 邪鬼は唐突にミレイヤに向けて銃を乱射した。 ”スパパパパン!” 「い、いたい!や、やめてぇぇぇーー!」 嵐のような銃弾でミレイヤのコスチュームはボロボロになり、右側の豊満な胸があらわになってしまった。 「おぉぉーー!」 「あ、ミレイヤの胸に当たった弾丸が弾き飛ばされている!」 ミレイヤの豊満な胸に思わず歓声をあげる人質たちであった。 「い、いや〜ん!や、やめて!は、恥ずかしい!」 「さあ、こんどは、このボロボロのコスチュームを剥ぎ取るんだ!さぁ、早くしろ!みんなが待っているんだぞ!」 邪鬼は風下に命令をした。しかたなく風下はミレイヤの胸元に手を掛けるが、その手は震えていた。 「ほ、本当に、ごめん。ミレイヤ」 「い、いやー!やめて!風下さん!お願いっ!」 邪鬼たちはもちろん、人質になっている男たちも、ミレイヤの一糸纏わぬ姿に、目が釘付けになっていた。 引き締まった身体。それでいて、豊かな胸元、あまりにも完璧すぎる、スーパーヒロインの恥ずかしい姿に 男であれば興奮しないはずがなかった。 「ほら、見ろ!こんなに弾が当たっても、傷一つできないぞ!今度は、こいつで、アソコを攻めるんだ」 邪鬼は風下にバイブレーターを渡した。 「さあ、はやく、こいつをあそこにブチ込むんだ!ほら、言葉では『いや』と言ってるが、あそこだけは正直だぞ。 もう、こんなにグチョグチョだ。さぁ、はやくブチ込むんだよ」 ミレイヤの秘部にバイブを入れる風下。しかし、風下の顔にもかすかな笑みが浮かんでいた。 「か、風下さん!な、なに考えているの!もう、いやぁ!や、やめて!…あぁ、あぁん、あぁ、あぁ、あぁ、あぁ、 いっ、いや、いやあぁぁぁっ!」 ミレイヤの精神は拒否をしているものの、身体は敏感に反応してしまっていた。 「へっへっへ。ミレイヤって、すごく敏感なんだねェ…。ほら、バイブがこんなになっちゃったよ」 ミレイヤの秘部に挿入されたバイブは彼女の敏感に反応した「スーパーお○んこ」の締め付けでペチャンコに つぶされていた。風下は秘部からペチャンコに潰れたバイブを抜き取り、人質たちの間の前に差し出した。 「おぉぉぉーー!スーパーヒロインはアソコもスーパーパワーなんだ…」 「これが、鋼鉄のお○んこか!」 ミレイヤの秘部の驚異的なパワーに人質たちは口々に歓声をあげた。 「も、もう止めて…お願い…。こ、こんなの、いやぁぁーー!」 あまりにも恥ずかしい姿に泣き叫ぶミレイヤ。しかし、日ごろの恨みを晴らすのか、邪鬼たちの攻撃は容赦なかった。 「こんどは、この鉄棒でミレイヤを殴るんだ。鋼鉄の身体を持つ女だ。手加減なんかしなくていいぞ!思い切り殴るんだ!」 邪鬼は、鉄棒を風下に預けたが、あまりにも重く風下には扱えなかった。 「まったく、役に立たないな。人間どもは。しかたがない、おまえが、やれ!」 リーダー格の邪鬼は横にいた手下の邪鬼に鉄棒を渡した。 「このやろーーー!」 奇声をあげて、ミレイヤに殴りかかる手下の邪鬼。日ごろの怨みを晴らすかのように、容赦なく、 ミレイヤに襲い掛かってきた。 「い、いやぁー!い、いたい!や、やめて!お願い!」 ゴン!ゴン!ドスン! ミレイヤに容赦なく殴りかかる邪鬼。ミレイヤの鋼鉄の身体にはダメージがないようであった。 やがて、鉄棒がミレイヤの体形に変形していった。 ”ドスッ!!” あたりに鈍い音が響いた。とうとう業を煮やした邪鬼はミレイヤの腹をめがけて剣道の「突き!」のように 鉄棒を打ち込んだのだ。 「うっ!い、いたい…」 「トドメだぁー!」 鉄棒を持った邪鬼は、こんどはミレイヤの後頭部めがけて殴りつけた。 さすがのミレイヤもこの攻撃には耐えられなかったのか、気を失ってしまった。 「はっはっはっは!もう、ミレイヤはお前らのオモチャだ。好き勝手にしていいぞ!」 「おぉぉぉぉーーーー!」 親分格の邪鬼から、思わぬ褒美をもらい、ミレイヤに群がる子分の邪鬼たちは、彼女の胸やフトモモ、 お○んこ…好き放題にいじりまわしていた。しかし、ミレイヤは気を失ったままであった。 ”バッシャーーン!” 突然、ミレイヤにバケツの水をかける音がした。ミレイヤをいたぶる邪鬼たちの隙をついて風下がミレイヤに 水を浴びせたのである。風下はメテオ・クリスタルが水に弱いことを覚えていたのであった。 冷たい水をかけられ、気を取り戻したミレイヤはクシャミをした。 「ハックショーン!」 ミレイヤのクシャミが、店内にこだまする。彼女のクシャミに吹き飛ばされた邪鬼たちは、壁や天井に叩きつけられた。 風下がミレイヤに浴びせた水によってメテオ・クリスタルの粒子が溶かされたのであった。ミレイヤの復活である。 水によって粒子が溶かされたロープは、もはや彼女にとってはただの紐でしかなかった。 ミレイヤが全身に力をこめると、ロープはあっけなく千切れてしまった。 そして、両手の中指をティアラに触れ目を閉じると、あっという間にコスチュームが元に戻っていった。 ”バーン!” ミレイヤは壁に蹴りを入れ、穴をあけた。 「さあ、こっちですよ!」 ミレイヤは邪鬼たちが気を失っている隙に、人質たちを解放した。 「ありがとう!ミレイヤ!」 人質たちは口々にお礼を言いながら、外へ逃げる。 「サンキュー!ミレ…」 風下がミレイヤにお礼を言いながら、人質たちといっしょに逃げようとすると、風下の首根っこを捕まえた。 「風下さんは、ここで待っていて。」 ”ドスン!” 「い、いてぇ!」 風下の腹に鈍い痛みが走った。と、同時に気を失いその場に倒れた。 気を取り戻した邪鬼たちは、その場から逃げようとしていた。 「待て!こんどこそ、逃がさないわ!」 「くそ!逃げろ!」 "バリーン!” 親分格の邪鬼は、自ら銀行のショウ・ウインドウに体当たりをし逃げ去って行った。後を追う、子分たち。 「う、う〜ん…」 風下が気を取り戻した。それに気付いたミレイヤ。 ”パシーーン!” 気が付いた風下を介抱するかのように見せかけたミレイヤは、風下に平手打ちを見舞った。 「い、いてぇぇーー!」 悲鳴をあげる、風下。 「風下さん、助けてくれて、ありがとう。でも、今日は少し痛いお礼をしないとね。」 ミレイヤは、そう言いながら風下にウインクをした。しかし、風下はミレイヤの平手打ちのあまりの激痛に、 再び気を失っていた。 「さぁ、早くここから出ないと。警察が来たら大変だわ。」 ミレイヤは風下を抱きかかえ、銀行を出た。            ・            ・            ・ 銀行の駐車場に停めてあるカローラの前で介抱する奈緒美。 「所長!所長!もう、しょうがないわね」 ”ギューッ!” 「いってえぇぇーーー!」 奈緒美の怪力で腕をつねられた風下はあまりの激痛に目を覚ました。 「あ、奈緒美。…い、いてえなぁ。」 「所長、だいじょうぶですか?」 「あ、だいじょうぶだ。腕以外はな。それより、ミレイヤは?」 「彼女ですか?私に所長を預けて、邪鬼たちを追いかけていきました。所長、彼女に随分ヒドイことを したみたいですね。全部聞きましたよ。」 「…」 奈緒美の追及に反論できない風下は、黙ってうなだれているだけであった。 「もう!所長のスケベ!!」 ”バッチーーン!” 「ウワァ、痛ってぇぇーー!」 奈緒美の平手打ちを食らった風下の悲鳴が夕闇にこだまする。 奈緒美の手形を頬に感じつつ、彼女の怪力ぶりを左手で頬をさすりながら再認識する風下であった。 ***完