平成14年3月15日・初版 平成16年7月9日・改訂(扉絵を追加)

聖天使ミレイヤ・「春のイベント!恥辱の路上痴態」/AK−3・著 (ヒロイン原案:悪の司令官)

イラスト:悪の司令官
風下と奈緒美が編集をしている、地元向けミニコミ誌「タウン・ナビゲーター」は地元でも注目されるようになり、 市のイベントの企画、運営を任されるようになった。最近は学校の体育祭も春に開催するところが多くなったので、 「この市橋(いちはし)市の体育イベントも春に開催してはどうか?」ということになった。 この案を出したのは奈緒美であった。案を出したのがアクノ企画ということでこのイベントの企画、運営を 任されたのであった。しかし、風下と奈緒美の2人しかいないアクノ企画。とてもスタッフの人数が足りるはずもなく、 市の体育課の職員もスタッフとして手伝うことになった。企画もすんなり決まり当日を向えた。  イベントといっても、市民レベルの体力測定を行い。数値の高い参加者には市の用意した粗品を進呈という、 ありきたりのもではあったが…。 奈緒美はスタッフの一員として、握力の担当になった。 「所長。私も参加してもいいですか?」 「バカ、おまえが参加したら、粗品はおまえが独り占めにしちゃうじゃないか!今日は、スタッフの一員だから、ダメ!」 風下に怒られた奈緒美は舌をペロっと出し、笑顔で誤魔化した。 「さあ、始めるか。」 風下が、奈緒美に声をかける。市のグランドのアナウンスがイベントの始まりを告げた。 そのアナウンスを聞いた奈緒美は、握力計を握り、測定の仕方を説明する。  奈緒美も今日は市のイベントのスタッフということで、胸にネームプレートをつけていた。 「はい、ここでは握力の測定をしますね。このようにグリップの部分を握って…」 奈緒美はやり方を説明しながら、軽く握力計を握ったが、針は85kgを指していた。一見、どこから見ても 普通の女性にしか見えない、奈緒美の驚異的な握力に、参加者しようと集まった人たちは、呆気に取られるしかなかった。 「うわぁ、この女の人すごいなぁ。」 「あれじゃあ、彼女が一番だ」 「おれじゃあ、とても勝てない…」 「彼女なら、空き缶も簡単に握り潰すだろうな」 「この人と握手したら、手が潰れちゃうよ」 奈緒美の説明を見ていた人たちは、口々に言っていた。 「この人、松原さんっていうんだ。覚えておこう。」 そう言いながら、奈緒美のネームプレートを見て、名前を覚えて帰る人もいた。 そんな騒ぎを隣の背筋力コーナーでニコニコしながら、横目で見ている、女性スタッフの姿があった。 彼女の胸のネームプレートには「森永」と書いてある。彼女はこのイベントの手伝いでアクノ企画が急遽、 臨時アルバイトとして雇った女子大生であった。  背筋力はあまり人気がないのか、暇をもてあましている森永は握力コーナーにやってきた。 「すみません。ちょっと手が空いたので、私にもやらせてください。」 彼女は遠慮がちに、奈緒美に声をかけた。 「ええ、どうぞ。こっちも、だいぶ人がはけてきたので、やってみてください。」 奈緒美はそう言うと、森永に握力計を渡した。 森永は、奈緒美のネームプレートを見ると、奈緒美に声をかけた。 「松原さん、さっきのあなたの握力85kgでしたね」 森永は奈緒美の記録を確かめるように聞くと、グリップを握り締めた。 ”グググググッ!” 森永が握力計を握り締めると、針が130kgを指していた。さらに力を入れる、森永。 ”ガシャッ!” 森永が握った握力計は針が飛び、壊れてしまっていた。その奈緒美を超える超人的握力を見た風下。 「おいおい、スーパーウーマンの力比べかい?勘弁してくれよ。」 風下はジョウダンを言いながら、森永の体つきを確かめるように足下から身体を嘗めるように視線を走らせていた。 「この地球に奈緒美を超える怪力女性なんていたのか?まさか、この人がミレイヤ?!」 風下は小声でつぶやく。 その声が聞こえたのか、奈緒美は壊れた握力計を森永女史から握力計を受け取り、言葉をかけた。 「この握力計、最初から壊れていたみたいですね。私たちみたいな女性が、85kgや100kg以上の握力なんか あるわけがないですよね。」 奈緒美はそう、言いながら森永女史にウィンクをした。 「そうそう、森永さんの背筋って何kgなんですか?チョッと計ってみましょうよ。」 「ええ〜、いまですか?何kgかな。高校時代は180kg近くあったんですけどねぇ。」 「え、森永さんって、そんなに力があるの?そう言う感じには見えないけどなぁ?」 風下が2人の会話を聞いて驚いていた。 「それでは、やってみましょうか?」 森永は、そう言うと、おもむろに背筋の測定を始めた。 ”グググググ!” 器具の鎖を森永が引くと、針はアッという間に200kgを指していた。 ”ググッ!” さらに力が入ると針は350kgを指していた。 「ふぅう、こんな感じかしら。あれ、高校時代より今のほうがあるんだ。こんどは松原さんの番ね。」 森永に促され、奈緒美が背筋の測定を始めた。 ”ググッ!” 針はアッという間に380kgを越えた。奈緒美はさらに力を入れた。 ”ブッチン!” 器具の針が振り切り、最後は鎖を引きちぎってしまった。 それを見ていた風下は、あきれた口調で、2人に言葉をかけた。 「まったく、しょうがないなぁ。君たちはスタッフなのに、器具を破壊しに来たのか。もう、ここのコーナーは 終わりだね。器具がなくては、計測のしようがないよ。こんなに力が有り余っているなら、こんどは違法駐車の 取り締まりのキャンペーンでもやるか?」 「所長、それって、どういう意味ですか?」 「はっはっは、君たち2人なら、乗用車どころか10tダンプだって持ち上げちゃうんじゃないか?君たちのパワーが あれば、レッカー車なんかなくったって違法駐車の移動ができるんじゃないかって思ってしまうよ。そうだ、君たちの 100m走のタイム、測ってみるか?」 風下はそう言いながら、ポケットからストップウォッチを取り出した。 「最初はどっち?」 風下が二人の顔を見比べながら促した。 「じゃあ、私からいきましょうか。」 森永がそう、言いながらジャージを脱ぎはじめた。ジャージの中には、いかにも体育会系という、鍛えぬかれた体が 隠されていた。しかし、森永の力強くも女性らしさのあるパーフェクトな身体。その上には少女のような顔立ち。 あまりのギャップにに風下と奈緒美の2人は「ハッ!」と息を飲み込んだ。 「それでは、風下さん、お願いします!」 風下は森永の声でわれに帰った。奈緒美や森永の周りににわかに人だかりができた。 「それでは、いくよ!ヨーイ・ドン!」 風下の声を合図に森永はかけだした。 「うわぁー、この人凄く早いぞ!」 「まるで、バイオニック・ジェミーみたいだ!」 周りに集まった観衆は、森永の驚異的な足の早さに度肝をぬいた。 ゴールを駆け抜けた森永。 「ただいまの記録…。え゛〜!は、8秒76?!」 風下のコールに観衆は沸き返る。 「す、すごい!世界記録じゃないか?」 「この人、人間じゃないんじゃないの?」 目の前で展開される信じられない光景に、観衆は呆気にとられていた。そのなかで、何もなかったかのように、 クールダウンする森永。奈緒美はその姿に、密かにライバル意識が芽生えていた。 「私なら、7秒台たたき出してみせる…」 心の中で密かに誓いながら、奈緒美は支度をしていた。 「次、私が行きまぁーす!」 奈緒美は、いつのまにかジャケットを脱ぎ、ポロシャツにスパッツ姿となっていた。 奈緒美のきれいな脚線美に、何人かの男はトイレに掛け込んでいった。 「おい、あの女の人、さっき背筋力で器械の鎖、千切ったんだよな。よくあんな華奢な身体ですごいパワーが 出るよなぁ。」 人々は奈緒美を見て口々に、そう言っていた。 「それじゃあ、お願いします!」 奈緒美がスタートラインに立つと、風下がコールした。 「ヨーイ、ドン!」 奈緒美がかけだした。しかし、いつものようなスピードがでない。結果は8秒89であった。 それよりも、100m走ったあとの奈緒美が、ひどく体力を消耗していたのを森永は見逃さなかった。 奈緒美は走りながらも、観衆の中に変わった石をペンダントにしている若い男がいたのを見逃してはいなかった。 「あ、奈緒美さんの体力がものすごく消耗している。だいじょうぶかしら?」 奈緒美の青ざめた顔を心配そうに覗き込む、森永。 風下もストップウォッチを森永に渡しながら、奈緒美の顔を覗き込み、様子をうかがっていた。 「奈緒美くん、だいじょうぶか?だいぶ疲れているようだけど…」 「ええ、久しぶりに走ったら、なんか…」 そういいながらも、奈緒身の顔は青ざめていた。 「さあ、そろそろ、店じまいだ。今日は、2人のスーパーレディーぶりを堪能させてもらったよ」 風下は、そう2人に言いながら、後片付けを始めた。 「それじゃあ、私も手伝います。奈緒美さんは、まだ調子が悪いみたいですから。あと、これをお返ししておきます。」 森永はポケットから見覚えのあるストップウォッチを取り出した。よく見ると、画面にさっきまで無かったひびが 入っていた。 「それ、故障してるみたいですね。私が試したら、変な数字が出ましたから…」 森永はそう言いながら足元のダンボールをヒョイ!っと持ち上げた。それを見た風下は目をシロクロさせていた。 「森永さん、そのダンボールは機材が一杯入っていて、今朝は男2人がかりで運んだんですよ!」 「え、そうなんですか?このぐらいの重さなら、私は楽勝で運んでしまいますけど…」 森永の怪力で、あっという間に片付けがおわった。奈緒美も体力が回復してきたのか、顔色も元に戻っていた。 「さあ、片づけも終わったし、これから打ち上げ&反省会でも行くかな。あ、そうだ、森永さんもいかがですか?」 「えっ?私もご一緒させていただいて、いいんですか?それなら、是非、お願いします!」 森永は、奈緒美のことに興味を抱いているようであった。          ・          ・          ・ 3人はアクノ企画の近くの居酒屋に移動していた。 森永を入れた、アクノ企画のささやかな打ち上げがはじまった。 「森永さんのフルネームって、なんていうの?」 風下がたずねた。別に下心があるわけではないのだが、奈緒美は風下をにらみつけていた。 「え?わたしですか?森永・カレン・真理っていいます。わたしは日系ブラジル人なんです。風下さん、奈緒美さん。 今度から『真理』って呼んでいいですよ。そのほうが私も慣れているし…。なんか森永さんて呼ばれると、 自分じゃないみたいなんで」 「え?じゃあ、私とおなじじゃない。偶然ねぇ」 最初は、真理にライバル意識を燃やし、風下が真理の名前を聞いたときはジェラシーさえ感じた奈緒美だが、 真理が自分とおなじ日系ブラジル人と知ると、急に親近感さえ出てきた。もっともそれ以上の、真理の秘密を 感じてはいたが… 「真理ちゃん…でいい?真理ちゃんって、今、いくつなの?」 奈緒美が尋ねた。 「いま、23です。こんど大学4年になります。大学に入る前に1年だけOLやっていました。」 「へぇ、若いなぁ。でも、まだ20歳ぐらいかと思った」 そんな会話の中に1人の若い男が割り込んできた。首から変わった石のペンダントをしていた男である。 その仲間か、あまり人相の良くない、男が2,3人、後ろにいた。 「あ、昼間のスーパーウーマンがいる。おねえさんたち、おれたちと飲みなおそうよ。 こんなオッサン、放っておいてさぁ。」 「この野郎、オッサンだと!てめぇ、上等じゃんかー!」 酔いが回っていた風下がペンダントの男に殴りかかろうとしていたが、奈緒美が止めに入った。 「所長!こんなところで、やめてくださいよ。もう。」 しかし、奈緒美はいつものような怪力が発揮できず、風下は男を殴ってしまった。 ボコッ! 「てめぇ、いてえじゃねえかよ!」 男は風下に殴りかかろうとしたが、こんどは真理が止めに入った。 「お兄さんたち、こんなところでケンカはやめましょう!」 そういいながら、真理はペンダントの男の腕をつかみネジふせていた。 「い、いてぇ!う、腕が…」 「そんなに、ケンカがしたいのなら、私が相手をしてもいいわ。さぁ、外へ出ましょ」 真理は男の腕をつかんだまま、外へ引きずり出してしまった。男の仲間たちも後を追って外へ出て行った。 「所長、私、見てきます」 奈緒美は、真理たちの後を追って店を飛び出した。 「ま、まてぇ〜…。こ、こ、こ、このやろー。に、に、逃げるのかぁ?」 奈緒美の後を追って腰を上げたものの、まだ酔いがまわっている、風下はその場に座り込んで寝てしまった。 奈緒美が外に出ると、通りを挟んだ反対側の駐車場で怒号が響いていた。 「この、アマ!なにするんだよ!はなせ!」 しかし、この怒号のあと、アメ車が宙を舞い爆発する音が聞こえた。 「あ、真理ちゃん!」 奈緒美はそう、心の中で叫び駐車場へ駆け出していた。通りは車の往来が途切れず、ヤキモキした奈緒美は 意を決したようだ。 「仕方が無いわね。真理ちゃんが危ないわ」 奈緒美はそうつぶやくと、周りに人がいないのを確かめるように周囲を見回した。 そして両手の指先を伸ばして、両方の中指をこめかみにあてた。 「ティアラ・アップ!」 すると奈緒美の額が輝き、金色のティアラが現れた。 続けて胸の前で腕をクロスし、そして両手を広げた。 「チェンジ・ミレイヤ!」 奈緒美が声を上げると同時に、身体が光に包まれていった。そして、奈緒美が本当の姿を現したのだ。 ミレイヤに変身した奈緒美は、通りを行き交う自動車を飛び越え駐車場に舞い降りた。 男たちの怒号と、男たちに向かい合う、真理の姿、さっきのアメ車の爆発にいつのまにか黒山の人だかりができていた。 「おいおい、ドラマの撮影か?」 「おい、おい、新しい特撮もののロケか?」 「あの、ピンクの女の子が新しいスーパーヒロインみたいだぞ!」 「いや、あの大男の前にいる子が主役みたいだ」 群集は、この異様な光景に、いきなり始まったドラマのロケシーンとカン違いしていたようだ。 「真理さん!」 「あ、あなたは?」 そこには、仁王立ちになっている真理と、大の字にノビている男たちの姿があった。 真理の前にはこの男たちの親分格のような大男が立っている。 「こ、この男たちは?」 「私が、やりました。おの大男はこいつらの親分みたいですね」 思ってもいなかった光景に、目をシロクロさせる、ミレイヤの姿。真理はミレイヤに向って涼しげに話した。 「ハッハッハ、間抜けな正義のヒロインの登場かな?」 大男はミレイヤに一べつをすると、真理に向って大声で言った。 「この、アマ!おれの子分たちを随分な目に合わせたな。俺が、仇をとるぞ!今日は、日頃の恨みを晴らすぞ!!」 真理に襲い掛かろうとする大男に、ミレイヤが立ちはだかった。 「待ちなさい!この地球の平和を乱す邪鬼たち!真理さんには指一本触れさせないわ!私が変わりに相手になるわ!」 ミレイヤはそう声を上げると、大男の腕をとった…が、彼の腕力を押さえきれなかった。 男の首には、さっきの若い男と同じ石のペンダントが下がっていた。 「あ、力が入らない。ま、まさか、その石はメテオ・クリスタル?」 メテオ・クリスタルの力に、ミレイヤの能力が吸い取られていった。 …説明しよう! メテオ・クリスタルとは遙か6500万年前、地球に飛来した巨大隕石に大量に含まれていたと言われている 謎の物質である。この物質は、ある一定以上の身体能力が優れている生物の生体エネルギーを吸収し、微弱の放射線に 変換しながら少しずつ蒸発する性質があると言われている。一説には恐竜が滅んだ原因とも言われている。 邪鬼達は、宇宙征服の野望の為に、メテオ・クリスタルを集めているのであった。 ミレイヤは大男に腕をつかまれ、動けない状態にされていた。 「い、いやぁ!はなして!」 「ハッハッハ!この石があれば、おまえなんぞはただのコスプレねえちゃんさ。さあ、このペンダントをおまえに プレゼントするよ。さあ、おまえたち、この女にさっきの仕返しをしてやるんだ!」 大男は首に下げていた、メテオ・クリスタルのペンダントをミレイヤの首に下げた。真理に倒された男たちは、 いつのまにか気を取り戻していた。男たちの首にはメテオ・クリスタルのペンダントが下がっている。 真理は男たちの姿に不審を抱き、よく見ると、肌が緑色に変色し頭から角が生えていた。 親分格の大男、その手下の子分たちはメテオ・クリスタルを追いかける邪鬼たちなのであった。 ミレイヤは邪鬼の子分たちに縛られ、この騒ぎを見物している群集の前で、嬲られていた。 スカートを脱がされ、、上半身を裸にされ、身体中を舐めまわされるミレイヤ。 まるで、公開ロケのレイプシーンのようであった。 「これは、新しいメーカーのAVの撮影かな」 「おい、見ろよ。このピンクの女の子、いい身体してるぞ!」 「見ろよ。ムチムチのフトモモじゃん」 「おい!見ろよ!服を脱がされたら、肌がピンク色になっていくぞ」 群集の前にさらされ、邪鬼たちに嬲られる恥ずかしさに、ミレイヤの身体が火照り、ピンク色に染まっていった。 「い、いやぁん、や、やめて…」 ミレイヤを嬲る邪鬼たちは、興奮してミレイヤを見入る男たちに声をかけた。 「お兄さん方、これから、この女がただの女ではないことを証明してみせようか?」 邪鬼は、そういうと鉄棒でミレイヤの腹部を数発殴った。 ”ガン!” 鈍い音が走る。 「い、痛い!や、やめて!」 しかし、ミレイヤの不死身の身体に鉄棒は負けてしまい、あっという間に曲がってしまった。 「この女、不死身だぞ!鉄よりも硬い身体だ!」 「そうだとも、この女の身体は鉄で殴ったぐらいではびくともしないんだ。でも、アソコはどうなのかな?」 ミレイヤの秘部をいじりまわしていた邪鬼は、そういいながらバイブレーターを取り出した。 「いいかい。この女のあそこは鉄よりも硬いんだぞ。よく見るがいいさ。」 邪鬼が見物の男たちに見せたものは、鉄でできているバイブレーターであった。その特製バイブを ミレイヤの秘蜜の花園へと挿入した。 「あぁぁぁぁん、や、やめて…はぁん、だ、だめぇぇぇぇぇ」 「おい、あれを見ろ!鉄のバイブが潰れていくぞ!」 「スーパーウーマンはあそこも、スーパーパワーなんだ!すごいぞ!」 「い、いやぁ、やめて!は、はなしてぇ!だ、誰か助けて!」 邪鬼たちに嬲られ、悲鳴を上げるミレイヤのあわれな姿。ミレイヤの悲鳴に真理が駆け寄ってきた。 「しかたが、ないわね。こんどは私がミレイヤの仇をうつ番ね」 一見、どう見ても普通の女にしか見えない真理の言葉に目をシロクロさせる、群集たち。 「おぉ!こんどはこの子が変身するのか?これはどこの番組のロケだ?」 「こんなカワイイ女の子がスーパーギャルになるの?」 「こんな、リアルなレイプシーン、見たこと無いぞ!」 「レイプシーンと特撮ヒロインのロケが一緒に見られるなんて、今日はツイテいるなぁ」 目の前で展開されるレイプシーンに群集も興奮していた。 居酒屋でも外の大騒ぎに客が一斉に外へ出て行った。その雑踏の音で風下も目を覚ました。 「うるさいなぁ。折角、人がいい気持ちで寝ているのに…。あ゛!奈緒美と真理ちゃん!」 風下は我に返り、客と一緒に店を飛び出した。 「なんなんだ?あの人だかりは。全く見えないぞ。あ、そうだ、バッグの中に双眼鏡があったっけ。」 風下は店に戻りバッグから双眼鏡を取り出した。 「大将!ちょっと2階に上がるよ!」 2階に上がった風下は、双眼鏡を覗くと、そこには邪鬼にレイプされ泣き叫ぶミレイヤの姿が。 その向うでは、大男が真理に襲い掛かろうとしていた。 「あ、あの大男、邪鬼だ!た、大変なことになっている…」 目の前で起きている異様な、いや、大事態に風下はなにか手助けができないか模索をしていた。 「…ミレイヤがピンチになっているということは、邪鬼はメテオ・クリスタルを持っているんだ…。 あ、メテオ・クリスタルといえば、水!水に弱いんだ。あ、いいこと思いついたぞ!ミレイヤ、真理ちゃん、 いま助けるぞ!」 そういいながら、風下は階段を駆け下り、居酒屋の大将に言った。 「大将、油と、紙と空き瓶、あるだけ貸して!これから、おもしろいこと始めるから…」 「油と紙と水?ダンナ、火炎瓶でも作るの?だったら、倉庫にガソリンがあるよ。客がみんなあっちにいっちゃったから、 おれも手伝おうか?これでも学生時代は学生運動で火炎瓶なんか随分作ったからよ。いやぁ、なんか血が騒いできたなぁ」 「大将!サンキュ!能書きはいいから、早く手伝ってよ!」 居酒屋の大将と風下は、店の空き瓶で火炎瓶を作った。中には1升ビンの火炎瓶もあった。 居酒屋の前の大通りは、この騒ぎを見物しようと渋滞になっていた。風下と大将は火炎瓶を抱え渋滞する車の列をすり抜け、 駐車場にかけつけた。 風下は見物人たちに火炎瓶を配り、邪鬼たちに投げるように指示をした。 「さぁ、これからロケシーンのクライマックスです。みなさんでこれを悪役たちに投げつけてください! あ、彼らは防火服を着ているので、遠慮しないでください!」 見物人たちはいっせいに火炎瓶を邪鬼たちに投げつける。駐車場のあちこちから火の手があがっていった。 「大将!早く119番して!」 ゴン! 「いて!…」 風下の頭に火炎瓶が当たってしまい、気を失ってしまった。 「なんだよ。このオヤジ。邪魔だぞ」 足元に倒れた風下を群集が引きずりだし、後ろに放り投げた。 この大騒動と、もくもくと上がる黒煙。あっという間に消防車が駆けつけた。 しかし、あたり一帯は渋滞のため駐車場に近寄れない消防車は、居酒屋の裏手の川から水をくみ上げ、放水を始めた。 「放水始め!」 一斉に駐車場に放水が始まった。あたり一帯は放水で大雨のようになった。 「うわぁ、なんだ!この雨は?あ、ミレイヤを縛っているロープ!」 水に濡れたミレイヤを縛っているロープは緑色の光を失い、ただのロープになってしまった。 「あ、チャンス到来だわ!」 ミレイヤはロープを引きちぎり、両手をティアラにあてた。すると、あっというまにコスチュームが復活した。 「さあ、観客のみなさん。これからがハイライトですよ。」 ミレイヤは親分邪鬼を追いかけた。 「こんどは、こっちの仕返しよ!」 ミレイヤが邪鬼に蹴りを入れる。 「うわぁ!!」 ミレイヤの蹴りで遥か向うに飛ばされる親分邪鬼。 「あなたたちも、やられたいの?」 ミレイヤが子分の邪鬼を睨みつけると、そそくさと逃げ出した。 「さあ、これでロケは終了よ」 「なんだ、これで終わりか」 「なんか、最後はあっけなかったな」 ミレイヤの言葉で観衆たちは三々五々駐車場をあとにしていった。 「真理ちゃん、だいじょうぶ?」 「あ、ミレイヤ。あなた、やっぱり奈緒美さんね?」 真理の言葉にミレイヤの顔色が変わった。 「ウフフフ。それはどうでしょうかねぇ?さあ、私は戻らないと…。 奈緒美さんが戻ったら、よろしく言っていたって伝えてね。エイッ!」 ミレイヤは明け方の空へ飛んで行った。すると、入れ替わりに奈緒美が真理のところへ駆け寄ってきた。 「真理さん、だいじょうぶ?無事だったのね。」 奈緒美の声の方向に振り向く真理。 「あ、奈緒美さん。いま、ミレイヤが帰って行ったところですよ。まるで、奈緒美さんと入れ違いみたいに。」 「あら、残念ね。いつも彼女とは行き違いになってしまうのよ。真理ちゃん、仮に私がミレイヤだったとしても、 このことは風下さんにはナイショよ。それより真理さん、あなた、この星の人ではないのね?」 すでに、真理の行動に不審を抱いている奈緒美が真理に水を向けた。 「え?私ですか?ウフフ。いずれ教えますね。それより、風下さんは?」 「あ、そうね。」 「あ、所長があそこで、倒れているわ。」 奈緒美と真理は、風下を見つけ、駆け寄った。 「所長!だいじょうぶですか?」 奈緒美の声で風下が気が付いた。 「あ、おまえたち、だいじょうぶか?あれ?奈緒美は全然濡れていないけど、どこにいたんだ?」 「私は、真理ちゃんを追いかけたんですけど、走り出したら酔いが回ったみたいで、そこの軒下で 眠ってしまったみたいです。気がついたら、こんなふうになっていて…」 真理は、奈緒美の言葉に笑いがこみあげ、こらえるのに必死であった。 「真理ちゃん、奈緒美がなんか、おかしいこと言っているの?笑うのをこらえているようだけど」 「いいえ、べつに…」 真理はそう答えると、奈緒美にウィンクをした。 「なんだ。女同士はすぐに秘密をもつからなぁ。いやになっちゃうよ…」 「所長『ミレイヤが助けてくれてありがとう』って言っていましたよ」 そういいながら、奈緒美は風下にキスをした。 「あ、や、やめろよ。こんなところで。真理ちゃんが見ているだろう」 風下は奈緒美のキスに思わず顔を真っ赤にしていた。 「やだぁ、風下さんって意外とシャイなんですね。それとも、風下さんは奈緒美さんのことが…?」 「い、いや、そんなことはないよ…」 真理の言葉でさらに顔を赤くした風下であった。 ***完