平成14年12月13日・初版

流星天使ラスキア・「撮影快調?!主役はラスキア!」/AK−3・著 (ヒロイン原案:悪の司令官)

学生生活もようやく落ち着いた真理。最近では余裕も出てきたのか、サークルにも顔を出すようになったようだ。 そのサークルは「特撮映画研究会」である。ただ、もっとも、彼女の場合ヒロイン役としてスカウトされたのだが…。 ”バターン!” 「お、おにいちゃん!私、映画に出るんだって!しかも主役だよ」」 真理はそういいながら、マンションの扉をあけ、飛び込んできた。 扉の音と、真理の声に驚き振り向く綿辺。 「おい、おまえが映画にだって?まさかAVじゃないだろうな?」 「もう、おにいちゃん!本当なんだからね。ウソだと思うなら風下さんに聞いてみれば?」 「風下に?」 「うん。いま風下さんの事務所で劇団の監督さんと面接してきたよ」 そんな、やりとりをしていると電話が鳴った。 ”プルルルル…” 電話の主は風下であった。 「もしもし。あ、風下か。ん?そうそう、そのことで、おまえのとこに電話しようと思っていたんだ。…」 風下の話では「知り合いの劇団で映画を自主制作することになり、ロケをやっていたところ主役の女優が怪我をしたので、 代わりの女の子がいないか?」ということであった。 条件を聞いているうちに、真理がピッタリであるということになった。 そこで真理を呼び、面接をしたところ、主宰者が「怪我をした女優以上にピッタリだ」だということで、抜擢されたのである。 問題は、従姉妹で兄代わりの綿辺がOKするだろうか?ということになり、親友の風下が説得をすることになったのだ。 綿辺は風下に呼び出され、アクノ企画の事務所へ出向いた。 事務所には劇団の主宰者、小嶋と監督の伊原が来ていた。 「…ったく、風下のたのみじゃ、断る理由もないな。わかったよ。でも、奈緒美ちゃんじゃダメだったの?」 「ははは。じつはおれもそう思ったけど、相変わらず、雑誌の編集が忙しいし、もう、撮影が始まっていて、 撮り直しが効かないらしいんだ。奈緒美だと、例の怪我をした女優よりも体格が良すぎて、だめらしいんだ。 ただ、こんどワンダーウーマンのパクリを作るときは…って、言われたけどな」 「保利越のりか…。たしかに彼女なら奈緒美ちゃんのほうが一回り大きいかもな。ハハハハハ。奈緒美ちゃんのワンダーウーマンかぁ。 もしかしたら、本物よりも強いんじゃないか?で、真理の役ってなんだ?」 「あ、大事なことを忘れていた。じつは彼女の役はスーパーガールなんだ。 この映画のタイトルは”スーパーガール危機一発”っていうんだがな」 「ス、ス、スーパーガール?」 綿辺は驚いたものの、内心は興味深々であった。 綿辺はスーパーガールフェチでもあった。 「真理のスーパーガールか。意外といいかもな…」 真理は早速、次の日から稽古場に入った。 劇団には気になる女優がいた。彼女の名は大木菜めぐみ。長年、チョイ役ばかりをやり、もう30半ばを過ぎていた。 女性としては成熟をし、色気もあるのだが、演技力がなかったのだ。 しかし、彼女はそれに気付かず、次々と入ってくる若手の女優たちに主役を奪われ、逆恨みをするようになっていた。 「なんなの?あの小娘、いきなり入って主役?生意気だわ」 真理もご多分にもれず、めぐみのターゲットとなっていた。           ・           ・           ・           ・           ・ 数日後、スタジオでのリハーサルである。綿辺は仕事がオフということで見学に来る予定であった。 シーンはスーパーガールの真理が邪鬼を追いかけるが、逃げられ袋小路に迷い込むシーンであった。 監督の伊原が真理に指示を出していた。 「いいか。このシーンはスーパーガールが不死身であることを強調する大事なシーンだ。何が起きても、驚くなよ」 スーパーガールになった真理が邪鬼たちに攻撃をされるシーンである。 邪鬼たちは袋小路に追い込んだスーパーガールに容赦なく物を投げつけるシーンであった。 邪鬼の姿が消え、袋小路に取り残されたスーパーガール真理。 ”ガシャーン!” 真理めがけて、水槽が落ちてきた。 「いやぁん!」 次々と物を放り投げ真理を襲う邪鬼たち。 テレビから、冷蔵庫、タンス、仏壇、スクーター…。やがて電柱や乗用車も飛んできた。邪鬼たちは地球外生物で怪力という設定だ。 もちろん、邪気たちが投げるものはハリボテであった。 ”ズシッ!” スーパーガール真理は降ってきたグランドピアノを受け止めた。 もっとも、真理は本物のピアノでさえ片手で持てる怪力なのだが…。 「いいぞ、その調子だ。まるで本物のピアノを受け止めたみたいだぞ」 伊原は声を上げ興奮をしているようであった。 「もう、ラスキアなら本物のピアノだって片手で受け止めるのになぁ…」 真理は心のなかでつぶやいていた。 そのときである、女邪鬼が真理をめがけて自販機を投げてきた。 「あ、あれは!」 真理はとっさに自販機をよけた。 邪鬼が投げた自販機は本物だったのである。 「キャー!」 真理は悲鳴をあげて、自販機をよけた。 ”ズシーン!!” 自販機は地面に叩きつけられたが、中の飲料品のせいか、勢いが止まらず、ゆっくりと回転した。 ”ゴロン!” 「カァーット!おい、だいじょぶか?」 伊原が真理に駆け寄った。 真理の足元には自販機が転がっていた。 「間一髪でよけたようだな。なんていう反射神経だ。まるで本物のスーパーガールみたいな身のこなしだったな」 真理の顔は青ざめていた。 「監督、少し休ませてください。なんか急に気分が…」 「そうか、少し気を落ち着かせるか。いったん休憩だ」 真理は自販機を投げた邪鬼がめぐみだったのをしっかりと見ていたのであった。 「もう、あんあものぶつけたら、普通の人なら死んでるのよ」 真理は自販機をよけながら右手で振り払っていたのであった。 真理はめぐみを追いかけながら、右腕をさすっていた。 「おい、さっきの自販機、へこんでいるぞ。彼女に当たったんじゃないか?このへこみ具合、彼女の腕の太さじゃないか?」 スタッフの1人が転がっている自販機の凹んだ部分を指差していた。 真理はめぐみを追いかけスタジオの隣にある資材倉庫に入った。まわりには撮影用の機材が所狭しと置いてあった。 真理が資材倉庫の中を見回してると、天井から照明機材が降ってきた。 「あ!」 ”ガシッ!” 真理は降ってきた機材を受け止めた。 その姿を見ていためぐみが顔を出した。めぐみは舞台へ逃げていった。 ”ドッスン!” 真理は受け止めた照明器具を投げ捨てると、めぐみを追いかけた。 「あなた、普通の人間じゃないようね。正体をあらわしなさい!」 真理をにらみつけるめぐみの顔は、もはや人間の形相ではなかった。日頃の怨念が彼女を邪鬼の姿に変えてしまったのであった。 「しかたがないわね。どうしてこの劇団には邪鬼が多いの?今度は本物のスーパーガールが相手よ!」 真理はそう言い放つと両腕を腰のあたりでクロスさせた。 「ティアラアップ!チェンジ!ラスキア!」 真理の身体が閃光に包まれた。光がやむと真理はラスキアに姿を変えていた。 「子分たちよ、出ておいで!」 めぐみが姿を変えた女邪鬼、妖鬼がそう叫ぶと、あっというまに子分邪鬼たちが現れ、ラスキアを取り囲んだ。 「へっへっへっへ。スーパーガール役の女の子が、まさか本物のスーパーヒロインだったとはな。いっちょまえに仮面なんか付けやがって」 子分邪鬼はそういうとラスキアに襲い掛かった。 「ちょっと、何をするの?」 ラスキアは軽く身をかわした。ラスキアによけられ、勢い余った邪鬼は壁に激突した。 もう1人邪鬼がラスキアに飛びかかった。 「もう、かわいい女の子に大の男が何人ががりで襲い掛かるの?エイ!」 ラスキアは襲いかかってきた邪鬼の腕をつかみ投げ飛ばした。 ”ガッシャーン!” ラスキアに投げ飛ばされた邪鬼は舞台まで飛んで行った。 「お、なんだ。なんだ?」 「おいめぐみと、真理ちゃんが自主的にリハーサルを始めたぞ」 投げ飛ばされた邪鬼と妖鬼の姿を見て、スタッフたちは真理とめぐみが立ち回りの稽古を始めたのだと思い込んでいた。 「まったく、あんたたちは役に立たないね。私が相手よ。覚悟しなラスキア!」 妖鬼はそう叫ぶと舞台へ飛び降りた。 子分どもの不甲斐なさに、妖鬼は自らラスキアに襲い掛かったのである。 「ラスキア?なんじゃそりゃ?」 やがて舞台には妖鬼を追いかけてラスキアが出てきた。 「おい!あの女は誰だ?あれがラスキアか?おい、かまわん。カメラをまわせ!」 監督の伊原が叫んだ。 「このやろー!」 子分邪鬼が鉄パイプでラスキアに襲い掛かってきた。 ”ガシッ!” ラスキアは振り下ろされた鉄パイプを片手でつかんだ。 ”グシャ” ラスキアは鉄パイプを取り上げねじ曲げた。 「すごいぞ。なんて迫力だ」 伊原は間近で見るラスキアのパワーに興奮をしていた。 「やっつけるのは簡単だけど、このままではめぐみさんが…」 ラスキアは様子を見るため、後ずさりをした。 ”バチッ!” ラスキアの足元から火花が散った。老朽化した機材の電線が被覆の絶縁不良を起こしラスキアの足から、電気が流れ込んだのだ。 ラスキアの身体に電気ショックが起き、彼女の身体からパワーベルトが外れてしまった。 「あぁ…、身体中の力が…。意識が…」 ラスキアの身体中から力が抜けてきた。力を失ったラスキアに妖鬼が後ろから羽交い絞めにした。 「さぁ、ラスキア。どうしたの?女が相手じゃ不足かい?ガキのくせに生意気なんだよ!」 妖鬼はそういうと、ラスキアの胸をつかんだ。 「あら?まだまだ子供だと思っていたら、身体の発育は1人前のようね。ずいぶん立派なオッパイだこと!」 「い、いやぁん。やめて!」 ラスキアは男のごつい指と違う、初めて味わう繊細な感触に戸惑いをみせた。 「なんなの?この気持ち。だんだんヘンな気持ちになっていくわ…」 「あら、あら、この子、感じているの?顔はまだ子供のくせに身体だけは大人びているのね」 妖鬼はラスキアの胸元に指をすべらせ、コスチュームの中へ入れた。妖鬼の繊細な指はラスキアの乳首を転がし始めた。 「あはぁん。い、いやぁん…。や、やめて…」 ラスキアはいままでに感じたことのない繊細な感触に、身を悶えていた。 ちょうど、ラスキアが妖鬼につかまったころ綿辺はスタジオに入ろうとしていた。 急に入った撮影の仕事を終わらせたのである。 「いやぁ、まいったなぁ。早いとこ行かないと撮影がおわっちゃうな。フィルムも余っているし、真理の勇姿を撮らないと。 ん?ここだな。真理がいるスタジオは。ん?なんだ?中がずいぶん騒がしいな?入ってみるか。なんだ、こいつ?」 綿辺の足元にはラスキアに投げ飛ばされ気を失った邪鬼が倒れていた。 「ウフフフ。ラスキア、スタッフの男どもが、こっちを見ているわよ。ほら、ごらん」 妖鬼はそういうとラスキアの顔をつかみ、スタッフの方へ向けた。 そのとき、綿辺がスタジオに入ってきた。 「あ、撮影中か。ん?あれは、ラスキアじゃ。なんでこんなところに…」 綿辺は思わぬところで、ラスキアの姿を発見し、カメラを構えた。 「あ、ラスキアが邪鬼に囚われている。あ、あの邪鬼、女だ!」 ”ビリビリビリ!” 妖鬼はラスキアのコスチュームの胸元を引き裂いた。コスチュームからはラスキアの豊かで張りのある胸が飛び出した。 「おー、なんてきれいなオッパイだ。服から飛び出してきたぞ。すごい!」 スタッフたちはラスキアの張りのある豊かな胸に歓声をあげていた。 ”カシャ、カシャ!” 綿辺は無意識のうちにシャッターを切っていた。 「す、すげぇ、前に見たときより大きくなったんじゃないか?それに、なんて色っぽいんだ」 綿辺はファインダーをのぞきながら、興奮していた。 妖鬼は、ラスキアの仮面に指をかけた。 「ウフフフ。なんてきれいなオッパイなの?さぁこんどはこの仮面を剥がして、この子の正体を暴いてやるわ」 「お、おねがい。それだけはやめて。お兄ちゃんが見てる…」 「お、お兄ちゃんって…。ま、まさか…」 ラスキアの一言で、綿辺は我に帰った。 「お兄ちゃんだ?おもしろい。そのお兄ちゃんに、そのチンケな仮面を剥いでもらうか。おい、おまえ!こっちにこい!」 ラスキアの目線の方をみた妖鬼の先に綿辺がカメラを構えている姿があった。 「さぁ、こっちに来るんだ」 綿辺は、いつのまにか両腕を邪鬼につかまれていた。 「やい、離せ!」 綿辺は必死に抵抗をするが、邪鬼たちにはかなわなかった。 舞台に上げられた綿辺の顔を妖鬼がのぞきこむ。 「フフフ。このオヤジがお兄ちゃんか…。どうだい?たまには大人の女もいいだろ?」 妖鬼はそういうと、綿辺の腕に胸を押し付けた。 「う、うるせぇ!クソババァ!」 ”ペッ!” 綿辺は妖鬼の顔にツバをはいた。しかし、綿辺の股間は妖鬼の胸の感触に反応をしていた。 妖鬼は綿辺の脹らんだ股間をつかんだ。 「なに強がってるんだよ。ここだけは、正直に反応してるだろう?」 妖鬼はそういうと、綿辺の股間を握りしめた。 「う、うわぁ、いてぇ!」 妖鬼の怪力で股間を握られた綿辺は悲鳴をあげた。 「わかったら、逆らうんじゃねぇ!このロリコンめ!さぁ、この小娘の仮面を剥がすんだよ」 妖鬼に股間を握られ、額からアブラ汗を流す綿辺はしかたなく、ラスキアの仮面に指をかけた。 「ご、ごめん。ラスキア…」 綿辺はラスキアの仮面に手をかけた。 「お願い、や、やめて!お兄ちゃん!」 綿辺は、ラスキアの哀願に一瞬、戸惑いを感じたが仕方なく仮面を剥いだ。 「い、いやぁ!」 ラスキアは叫びながら、綿辺に抵抗をした。 ”バチン!” 「うわぁぁぁーー!」 綿辺はラスキアに殴られ、舞台の端まで飛ばされてしまった。 パワーベルトが外れているとはいえ、人間の綿辺などは簡単に吹っ飛んでしまうパワーなのだ。ましてや、自身の身の危険を感じ、 眠っていた、怪力が目覚めたのであった。 しかし、ラスキアの仮面ははがされてしまった。 「あ、あれは真理じゃないか!」 スタッフたちはラスキアの正体が真理だと知り、声を上げた。 「なによ、この子娘。まるで悲劇のヒロインじゃない!」 ラスキアがあわれな姿になっても、スタッフに注目を浴びることに妖鬼はさらなるジェラシーを感じていた。 「う、ぅぅー…」 ラスキアに投げ飛ばされ気を失っていた綿辺が目をさました。 「あ、あそこにあるのは!まてよ、いま起き上がったら邪鬼たちにばれてしまうな」 彼の手の先にはラスキアのパワーベルトが転がっていた。なんとかラスキアを助けたい気持がはやったが、冷静にまわりを見回していた。 「くそ!あと10cm手が長ければなぁ…。あ、あれは」 綿辺は自分の手元を見た。。 「あ、ラスキアのマスク…」 綿辺の手には、さっき奪ったラスキアのマスクが握られていた。。 「先っちょを、折り曲げて、と!」 綿辺は彼女のマスクを指先に持って、手をさらに伸ばした。 「よし、OKだ」 綿辺はマスクの先をベルトに引っかけ、たぐりよせた。 「OK!OK!」 綿辺はベルトをつかむと、スックと立ち上がった。 そして、ラスキアに向って走り出した。 「ま、真理。い、いやラスキア!ベルトだ!」 綿辺の声にラスキアが顔を向けた。 綿辺は、すかさずラスキアにベルトを投げた。 「や、やっぱりラスキアの正体は真理だ…」 ”カシャ!” ラスキアの腰にベルトが巻きついた。 「この野郎、余計な真似をしやがって」 ”ゴン” 綿辺は邪鬼に殴られ、その場で、うずくまってしまった。 「ありがとう!綿辺さん。さぁ、これから大逆転よ。もう、容赦しないわ。妖鬼たち、覚悟なさい!」 ラスキアがそう叫ぶと、両手の中指をコメカミに当て目を閉じた。 ”シュッ!” ラスキアのコスチュームが復活した。剥がされていた仮面もいつのまにか付いていた。 ラスキアはベルトからキラキラ輝く不思議な粉を取り出すと、驚異的な肺活量で周囲にいるスタッフ達に吹きかけた。 するとスタッフ達は、急に睡魔に襲われ、眠ってしまった。あとは邪鬼達だけだ。 「えぇい!面倒だわ。みんなまとめて相手よ。かかってらっしゃい!」 そういうと、ラスキアは両手を腰に当て仁王立ちになっていた。 邪鬼たちは鉄パイプを片手に次々とラスキアに襲い掛っていった。 ”ガシッ!” ラスキアは邪鬼の振り下ろす鉄パイプを片手でつかんでいた。 「このぉーー!」 両腕をふさがれたラスキアに背後から妖鬼が襲い掛かった。 ”が〜ん” 鈍い金属音が響いた。妖鬼が振り下ろした鉄パイプがラスキアの肩を打ち抜いた…はずだが、ラスキアの不死身の身体には 全く通用していなかった。 「もう、そんなもので私を倒そうなんてムダよ」 ラスキアはそういうと両手の鉄パイプを握りしめた。鉄パイプはアッというまに飴のように捻じ曲がってしまった。 「えい!」 ラスキアは両手の鉄パイプを束ねるようにし、振り回した。 「うわぁぁぁーー」 邪鬼は鉄パイプごと投げ飛ばされ舞台の壁に激突した。 ”シューーー” 鬼を失った邪鬼たちの姿は音をたてて消滅した。 ラスキアは後ろを振り向き妖鬼をにらみつける。 「さぁ、もう、あなた1人よ。覚悟して」 「く、くそ、生意気な小娘め!」 妖鬼はラスキアに飛び掛った。 ”ドス!” ラスキアは飛び掛る妖鬼をかいくぐり、回しげりをきめた。 「うっ…」 妖鬼はその場に倒れてしまった。だが妖鬼の顔は、いつのまにか、女優大木菜めぐみの顔に戻っていた。 ラスキアは一息つくと、あっという間にスタッフが撮影していたカメラからテープを回収し、文字通り握りつぶすと、 更にスタッフ達の唇を奪っていった。 「あ、おにいちゃん…」 ラスキアは倒れていた綿辺を抱き起こした。 「綿辺さん、綿辺さん」 ラスキアに揺り起こされ綿辺が目を開けた。 「あ、真理…。あ、ラスキア」 「綿辺さん、真理ちゃんは楽屋で休んでいますよ。あ、このカメラ、綿辺さんのですよね?」 綿辺は首をたてに振った。 ”メキメキメキ…” ラスキアは綿辺のカメラを握り潰してしまった。 「ごめんなさい。綿辺さん。でも、私の正体が知られてしまうのは、どうしても許せないの。証拠は消さないと…。 さぁ、楽屋で真理さんが待っているわ。行ってあげて。私も行かないと…」 ラスキアは、そう、いいながらクルリと後ろを向いた。 「綿辺さん、助けてくれてありがとう。また会えるといいですね」 ”ビュン!” ラスキアは夕日に朝日に向い飛んで行った。 「あ、真理!」 綿辺は楽屋に向い走り出した。真理が綿辺に手を振りながら走ってきた。 「あ、お兄ちゃん、遅いよぉ。もう、撮影終わっちゃったよ」 「おまえ、だいじょうぶなのか?邪鬼たちと戦っていて平気だったのか?」 「おにいちゃん、なに、わけのわからないこと言っているの?あ、そうだ。ラスキアが、お兄ちゃんに、お礼言っておいてだって」 真理はそういうと、いきなり綿辺に抱きついた。 ”チュッ!” 「ま、真理。な、なにをする…ん・だ…」 綿辺は急に気を失い、倒れてしまった。真理は超人的肺活量を生かし得意の記憶喪失キッスをしたのであった。 「うふふふ。おにいちゃん。ラスキアがかっこいい!って言ってたよ」          ・          ・             ・          ・          ・ 数ヵ月後、大木菜めぐみから、1通の手紙とビデオが送られてきた。 …真理さん、綿辺さん。先日は大変にお世話になりました。 このたび、やっと監督が撮影期間中に観た夢を参考にオリジナルビデオが完成しました。ご笑覧ください。 ビデオのタイトルは 「謎のスーパーヒロインラスキア、危機一発」、主演・大木菜めぐみ であった。 「へえぇ…。おにいちゃん、めぐみさん、主役になったんだ」 彼女はタイトルを観ながら、監督だけには記憶喪失キスをし忘れたことに気づき、苦笑する真理だった。 ***完