平成15年8月22日・初版
新・流星天使ラスキア「飛び散る汗!ラスキアの華麗なる艶技」第4章/妄想博士・著
「さあ、ラスキア、リボンの演技だ! しっかりがんばるのだぞ!」
赤鬼の呼び掛けと淫らな予感により、ラスキアは深い失神から目覚めた。
ぼやけた視界の中に消耗した青鬼に代わり、淫らに目を輝かせている赤鬼が浮かび上がる。先程の口内射精から完全に回復しているのか、
真っ赤な肉棒は元気一杯にそそり立っている。
「…うっう〜ん…まっ、まさか…まだ、続くなんて…」
ラスキアの嘆きを肯定するかのように、赤鬼の腕がゆっくりと伸びて来た。
両方の太ももに手を廻されたラスキアは軽々と抱え上げられた。そそり立った肉棒が、入り口を捜しているのか、
ツンツンと股間に当たる。頭の中の整理がつかないまま、即挿入OKの駅弁スタイルにさせられてしまったのだ。
「…ああっ…一体何を…?」
ラスキアと恋人同士の距離に近づいた赤鬼の顔は肉欲に満ちている。赤鬼はそこも真っ赤な舌を操りながら、ラスキアの問いに答えた。
当然、内容は最悪のものだ。
「ふっふっふ、だからリボンの演技をする…と言っただろう! まあ言い方を変えれば、リボンを使って大人の女の喜びを
教えてやるわけなのだが…。ふっふっふ、もっと言い方を変えれば、貴様を犯すと言うことだ…ラスキア…そうら!」
赤鬼は数本のリボンを取り出すと、要所要所に巻きつけていく。
一本のリボンで手錠のようにラスキアの両手首を縛り、別の一本で足枷のように足首を固定した。
残ったリボンはラスキアの首と赤鬼の首、背中と背中、腰と腰、両方の太ももに掛けられ結ばれた。
これで、ちょうどベビーハンガーの要領でラスキアは首から赤鬼に吊るされた格好になったのだ。
「ふっふっふ、お待たせしたな…ラスキア! それでは一つになるぞ!」
赤鬼は自由になった手を振りかざすと、垂れ下がったリボンの端をつかんで引き絞った。
背中の通されたリボンの輪が絞られ、ラスキアと赤鬼を一まとめに縛り上げていく。
「ああっ…」
ラスキアは巨乳を押し潰すように、赤鬼に密着した。
「ふっふっふ、青鬼にはアクロバテックに激しく責められたようだが、俺様は少し大人っぽくねちっこく責めるぞ。
どちらが好みかな…ラスキア?」
次に腰と腰を繋いだリボンが締められた。自然とラスキアの中へ赤鬼が滑り込んで来る。
「うっ…ああっ、うっひっん!…はっ、入ったああ〜あ! うっああ〜あ、深いい〜い! …んっ、むにゅう!」
最後の「むにゅう!」は、赤鬼の舌が絡んで来たために言葉にならなかったラスキアの声だ。首に掛けられたリボンが絞られ、
唇と唇が重なったのを良いことに赤鬼が舌を入れて来たのだ。
デープキスを最後に肉体の自由を全て奪われたラスキアは、子宮を突かれながら舌を弄ばれる。
上下の口はネチョネチョ・クチョクチョといった下品で湿った音を競うように奏でている。
しかも赤鬼は両手を休めていない。ラスキアの肌の上を指が自在に這い回り、お尻の割れ目、特にアナルを中心に責め立てて来る。
「んっふっ、んっ、んっはあ!…はっふっ、んっ、んんっ…んふっ!」
甲高い喘ぎ声の変わりに、激しく息を漏らしながら、ラスキアはただ悶えさせられた。
(シュル・シュル・シュル…。)
長く余ったリボンの端が揺れ動く。
あるものはリズミカルで心地良さそうな、あるものは弱々しいが毅然とした軌跡を描く。
それは気持ちを表わす手段を持たないラスキアの代わりに、感じたままを表現しているように見える。
中でも一段と激しく情熱的な軌跡を描くリボン。それは他でもない腰と腰を繋いだものだ。
今回の挿入はリボンの拘束により密着しているため激しくはない。
ただ、ラスキアが少しでも動くと、入れっ放しにされた肉棒がずれて肉壁を擦る。しかも太い肉棒はムクムクと成長しながら
ラスキアを内側から圧迫していくのだ。
ねちっこく、執拗な赤鬼の総攻撃の前にラスキアは対抗する手段を持っていない。
パワーベルトも無ければ、手足の自由も無い。強いて言えば正義の心で耐え切ることしかないのだが、プレジャージュエルがある以上、
それはとても無理な相談なのだ。
失われていく希望の光のかわりに、ラスキアの目の前が七色に光った。
絶頂のオーラを感じたプレジャージュエルが発光したのだ。
拘束により行き場所を失っていた運動エネルギーが股間に集中していく。そして肉体の命じるままに、赤鬼の肉棒をきつく締め付けた。
青鬼よりも熱くて濃い液体が子宮に直接かけられて行く。
「んっ〜、んんっ〜!んふっ〜!…んっふ、むふっ!…んっ〜!んっ〜!…んっんふっ〜!」
ディープキスで絶叫出来ないラスキアは激しく息を洩らした。唇の隙間からダラダラ垂れる唾液すら押さえることが出来ない。
犯されているのにだらしない姿で昇天する屈辱を噛み締めながら、ラスキアは徐々に意識を飛ばしていく。
抜け殻となった肉体にたっぷりと精液を注ぎ込んだ赤鬼が絡めた舌をようやく抜いた。
「ふうっ…なんと素晴らしい肉体だ! 思った以上に出してしまった。…んっ、もうお休みか…ラスキア?
ふっふっふ、まだ演技は始まったばかりではないか!」
赤鬼はリボンを緩めるとラスキアを抱え上げた。昇天の余韻でツンと張った巨乳がボヨ〜ンと揺れる。
呆れたように大きく息を吐いた赤鬼は、迷わずビンビンに立った乳首にしゃぶりついた。
パラレルワールドのティアラヒロインは巨乳の中にイオンエネルギーを貯蔵している。
ご存知のように剥き出しになった乳首からはエネルギーを吸い取ることが出来るのだ。おまけにイオンエネルギーは強壮効果抜群…
どんなに萎えていても、瞬時に回復させてしまう。
入れっ放しにされた肉棒がラスキアの中でムクムクと回復を始めていく。そしてすぐに太さ・硬さとも、射精前と同じに戻していく。
赤鬼に抱えられたまま、仰け反るように失神していたラスキアは、またしても邪悪な予感に目が覚めた。
「…ううっん…はっ! ああっ…まっ、また、同じ大きさに回復してるっ! いっ、いやん! おっ、奥に当たってるっ!」
疼き始める辛さを必死でこらえるラスキアの前で、ようやく乳首から口を離した赤鬼がニヤリと笑った。
途端にラスキアの身体が肉棒を軸にクルリと半回転した。
肉棒と肉壁が擦れ、ラスキアは堪らず悲鳴を上げた。
「きゃあああ〜」
「今度はこの大きな乳を揉みながら後ろからだ! ふっふっふ、ラスキア! 余りの気持ちの良さにリボンの演技を忘れるなよ!」
耳に息を吹きかけながら赤鬼がささやいた。同時に二つの掌が、巨乳を覆うようにむんずと捕えてくる。
「ううっ、やっ、止めなさい!ああっ、胸を揉まれたらエネルギーが逆流して…。うっくっ、嫌なのに…うっうう〜う!」
爪先立ちになって両手を大きく上げ、お尻だけ不恰好に突き出しながら、巨乳を揉まれるラスキア。
立ちバックの姿勢だが、相変わらず赤鬼の腰は動いて来ない。
ただ今度は激しく巨乳を揉みしだかれる。危惧した通りエネルギーが逆流し、ラスキアの肉体は全身性感帯と化して行く。
そして背後の赤鬼はピッタリと肌を密着させたまま、ねちっこくラスキアの乳首を指で転がしていく。
ラスキアは縛られたままの両手を上に掲げ、必死に悶えることしか出来ない。自然、動きに合わせてリボンがシュルシュルと振り回される。
「うっはあ〜! 駄目えっ! 動くと、動くと中でずれちゃうっ…うっうっん! ああ〜揉まれるっ!
ああっ、揉まれたら…逝っちゃうっ! はあはあ…いやっ、ああっ、いやあ〜ん!」
「そうら乳首がビンビンに立っているぞ。我慢などせず、もっと声を出すのだ! ふっふっふ、それにしてもこの揉み応え…
何という心地良さだ!」
赤鬼の指先に力が入り、乳搾りのように揉みしだかれる。汗で濡れた巨乳は揉まれるたびに、キュッ、キュッと小気味の良い音を立てる。
その音とともにエネルギーがポンプで送られるように逆流していく。
突然、目の前が真っ白になるほどの感激がラスキアの身体中を駆け巡った。
エネルギーの供給過度と赤鬼の責めによって、ラスキアの昂ぶりがついに限界を超えたのだ。
ラスキアは首を仰け反らせながら、四肢の全てをピンと伸ばし、踊るように身体を震わせた。頭上のリボンは何故か重力に逆らい、
ピーンと真っ直ぐに天を指した。もちろん首のジュエルは神々しい光を発している。
「…うっあああっ〜! 逝くっ、逝くうっ、いやあん…逝っくうううう〜うっ!」
ほとばしるような叫び声をあげながら、ラスキアは身体の中に居座ったままの肉棒を締め上げた。
「うっ、突然、逝ったのか? …うっ、うっおおっ! なっ、何なのだ、この締めは…くわっ!」
赤鬼が絶句し、熱い液体を注入して来る。ラスキアは無我夢中になりながら、その全てを子宮で受け止めた。
妖鬼の肉体改造により、ラスキアは精液を受け入れ易くされている。
もちろんアフターフォローも万全だ。ラスキアは身体を細かく震わせると、隙間からこぼさないようにもう一度萎えつつある肉棒を
締め付けた。
「くっふう〜! 勝手に昇天しておきながら、まだ締め付けて来るのか…。何も知らない小娘かと思いきや、
わがままで欲張りな本物の淫女ではないか! ふっふっふ、よかろう…演技のフィニッシュついでにもう一発くれてやる!」
絶叫や締め付けで忙しかったラスキアは、人心地がつくと天高く舞い上がろうとした。
ちょうど赤鬼を発射台に見立てたロケットのように、肉体もリボンも天を指してピンと伸び切っている。
だが、昇天ロケットは発射直前になって、突然バランスが崩れた。
発射台であるはずの赤鬼がバタリと背中から倒れ込んだのだ。当然、未だに合体しているラスキアも引きずり倒された。
「ふっふっふ、失神するつもりだろうが、そうはいかないぞ…ラスキア!」
またしても、肉棒が入ったまま身体を回転させられる。精液で濡れているから回転はスムーズだ。
ただ軸が萎えているとは言え、壁が敏感になっているラスキアは、摩擦に耐え兼ねうつろになりながらも悲鳴を上げた。
「…うっう〜ん…はあはあ…うっひ! きゃあああ!」
昇天しつつも失神の機会を失ったラスキアは悲鳴とともに正気に戻った。
今は仰向けの赤鬼の上に跨っている…騎上位の体勢だ。
首だけ持ち上げ乳首に吸い付いている赤鬼の姿が、ぼんやりとした視界の中に浮かび上がった。
「はあはあ…ううっ、また乳首が舐められて…はっ!だっ、駄目っ! また回復して…うふっん、大きくなるう〜うっ!」
途端に身体の内側が圧迫され、ジンジンと熱を帯びて来る。
何回ダウンさせても立ち上がってくるボクサーを相手にしているときのように、限の無い戦いを続けるラスキアは呆然としている。
ただ戦いといっても、一方的に犯され、逝かされているのはラスキアのサイドなのだ。
「ふっふっふ、最後はこちらも少し動いてやろう! さあ、ラスキア…俺様の上で力一杯舞い踊れ! そしてリボンを操り、
満点を叩き出すのだ!」
エネルギー補給により、今まで以上に膨れ上がった肉棒を突き上げながら、赤鬼が指示を出してくる。
ただズンズンと子宮を突き上げられるラスキアには、言葉に反応する余裕など少しもなかった。
「あっうっ!…はあはあ…うっはっ! …いっ、いやあっ! 突き上げて…うっううっ…来るっ! あひっん、すっ、凄過ぎるうっ!」
もう両手…リボンの動きなど気にすることも出来ない。
だが、シュルシュルとリボンは赤鬼の注文通りに宙を舞っている。まるで神がかりとなった祈祷師のように、ラスキアは前へ横へ、
そして頭上でリボンを振り回していたのだ。
結果として、上になっていてもラスキアの不利は変わらない。赤鬼の書いた筋書き通り、ただ悶え、ただ肉体を昂ぶらせていくだけなのだ。
「ああっ、逝ったばかりなのに…あっううっ! はあはあ…また逝かされちゃう…うっはああ〜!」
先に出された精液が溢れ、肉がぶつかり合う度にピチャピチャと音を立てる。もちろん巨乳は下から揉み上げられ、
キュッキュッと湿った音を立てている。
濡れた音で酔い痴れたように、ラスキアはすぐに感極まった。
自然に首が仰け反り、目の前に白い霞がかかっていく。そして真っ白になった視界が、一瞬だけまぶしい輝きで照らされ、
鮮明に映し出された。
何かがピーンと天に向かって伸びてゆく。
(あっ、これはリボン…)
同時に、ラスキアは自分の肉体がリボンに負けないくらい登りつめていたことに気が付いた。
「ああっ、ああ〜、あっ〜!うっあああ〜あ!逝く、逝くう、逝っくううう〜うっ!」
まるで果実を握り潰し果汁を搾り出すかのように、身体の中へどっと液体が注がれる。
種を含んでいるのは同じだが、液体はさわやかな果汁と違って、ドロドロとして中途半端に熱い。
そして子宮にジワジワと染み込みながら、無数の種をラスキアに植え付けていく。
細胞が次々に犯されて行くのを知りながら、ラスキアは何の対処もせず、肉体を置き去りにして、天高く旅立っていた。
完全に白目を剥いたラスキアは何も見ることは出来ない。仮に瞳に映されたものがあったとしても、今のラスキアでは、
何も考えることが出来ないだろうが…。
ただ読者のためには必要なので書いておこう。
赤鬼の腹の上で仰け反りながら失神しているラスキアの瞳には、電光掲示板に記された数字が並んでいたのだ。
「流星天使ラスキア…リボンの演技。6点、6点、6点、6点…6点」
またしてもラスキアの昇天は満点と採点されていたのだった。
完全に失神したラスキアをよそに、次の演技がセッティングされていく。
最後の種目はこん棒の演技。
荒々しい躍動感を表現しなければならない種目だ。リング・ボール・リボンと、三つ続けて満点を出しているラスキアには、
当然パーフェクトが要求される。
「ふっふっふ、起きろ…ラスキア!」
瞳を開けると赤鬼の淫らな笑みが飛び込んで来る。
「…うっ、ううっ〜ん…はっ! あっ、赤鬼…」
「さあ、ラスキア…次はいよいよ最終種目の『こん棒』改め『肉棒』だ。ふっふっふ、知っての通りこの種目には二本のこん棒、
いや肉棒が必要だ! 青鬼も加わるぞ! さあ、胸を突き出せ! 恒例のエネルギー補給をさせてもらうぞ!」
エネルギー補給を待つ二本の肉棒が、だらしなくブラブラ揺れている。
「ああっ…二本も…回復したら…また…」
度重なる失神によりフラフラになっていたラスキアは、繰り返されようとする陵辱に絶望を感じた。
逆襲するにしても、一旦逃げ出すにしても、この状況では不可能だ。
誰一人救いに来ることはないし、きっかけさえも掴めない。きっかけが皆無な以上、鬼族の欲望のままに弄ばれることは自明の理。
つまり絶望の中で犯され、昇天させられ、中に出されなければならないのだ。
だが、そのとき…。
(タッタッタ!)
静まり返った会場に、突然、誰かの足音が響いた。やがて、開けっ放しの扉から一人の少女が駆け込んできた。
「ああっ、やはり…鬼がいる!…夢ではなかったのね!あっ、倒れているのは流奈さん?」
何かのきっかけをつかめるかも…多少の甘い期待を持ったラスキアだったが、桃子の姿を見た途端、更なる危機を覚悟するしかなかった。
無力な人間ではピンチが拡大こそすれ、チャンスのきっかけなどになるはずも無い。
今度こそ、桃子のことを庇うことが出来ないラスキアは、精液で汚れた喉から声をしぼりだした。
「ああっ、桃子さん…こんなところに来ては駄目っ! 早く、逃げて!」
必死で叫ぶラスキアと立ちすくむ桃子。蔑むように二人を見ていた赤鬼と青鬼は、顔を見合わせニヤリと笑った。
「ふっふっふ、誰かと思えば、人質だった人間か…。今度はラスキアのおまけとして犯されに来たか?」
「ふっふっふ、それよりラスキアの昇天をじっくりと見物させる方が楽しかろう! いづれにしても、再度捕まえた方が良いようだ!」
ラスキアを追い込む要素は、多ければ多いほど良い。
赤鬼と青鬼は瞳をギラつかせながら、桃子の方へ足を踏み出したが…。
(ボコン!)
「ぐわっ!…なっ、何だ?…ボール!」
(ガン!)
「げっ!…これは…こん棒!」
出会い頭に鬼達の顔面をボールとこん棒が見事に捉えた。投げたのは鬼達が舐め切っている人間…桃子だ。
「気絶している間に、夢にご先祖様が出て来て説教されたわ!『鬼を見ただけで気絶するとは何事だ!』と。
もう、怖がったりしない…私のご先祖様は、平安の昔、鬼退治をした坂田金時…足柄山の金太郎よ!…ええい!」
気合とともに桃子が転がしたのは、これも競技で使われる本物のリングだ。
「ふっふっふ、こんなもの…くぐり抜けてやる!」
赤鬼がくぐり抜けようとしたとき、リングの回転が変化し、罠のように足に絡んだ。足をとられた赤鬼は、突っ込んだ勢いそのままに、
顔面を激しく床に打ちつけた。
「ふっふっふ…うおっ…ぐはっ!」
「オリンピックのプレッシャーに比べれば…怖いものなど何も無いわ!…ええい!」
青鬼に投げられたのは、競技で使われるリボンだ。リボンはクルクルと青鬼に巻きついて行く。
「ふっふっふ、こんなリボンで俺様を縛れると思っているのか!」
いつでも引き千切れると余裕をみせた青鬼だったが、この考えは甘かった。
(ご存知のようにリボンの端には固い柄がついているため…)リボンが巻きついたところで、遠心力で勢いを増した柄の部分が、
顔面に叩きつけられた。
「ふっふっふ…無駄なことを…ぎゃん!」
「御先祖様からお告げがあったわ…。『このベルトを流奈さんに返せ!』と…。今、返すわよ…そおれっ!」
オリンピック代表ほどになると、コントロールにミスはない。ベルトは回転しながら宙を舞うと、ラスキアの腰にピタッと巻きついた。
桃子の登場は、新たな危機では無く、脱出のきっかけ。いや、それどころか逆転のお膳立てまでしてくれたのだ。
みるみる肉体の疲れが取れ、気力が充実して来る。
「ドレスアップ!!」
スーパーパワーを取り戻したラスキアは、すかさず強化コスチュームで身を固めると、足元にあった二本のこん棒を手にした。
エネルギーが残り少ないため、直接打撃攻撃は無理だが、相手が消耗している赤鬼達なら間接攻撃で十分だ。
「赤鬼と青鬼…。あっ、逃げようとして…そうはさせないわよ!」
ラスキアは立ち上がると、大きく振りかぶって、二本のこん棒を投げた。
”ヒュゥゥゥゥゥゥ!”
こん棒は空気を切り裂きながら宙を滑り、まるで誘導ミサイルのように鬼達の角へ向かっていく。
”バアア〜ン!”
乾いた破裂音とともに、赤鬼と青鬼の角が一撃で粉々に打ち砕かれる。
「…ぐはっ!…うっ、角がああっ…!」
「…うがっ!…ぎゃっはあ〜!」
角を失い、バランスを保てなくなった赤鬼と青鬼は、腰砕けのままの姿勢で床に這いつくばった。
赤鬼、青鬼の身体が、見る見る内に、緑に変色していく。邪鬼へのランク落ちだ。
邪鬼となった赤鬼と青鬼を、どこからともなく数人の邪鬼が湧き出て来ると、担ぐように連れ去っていく。
「一、二、三…五人…もしかして…邪鬼が審判団だったのね!」
ふっと見上げた電光掲示板には、いつの間にか、こん棒6点の数字が並んでいた。
「凄いコントロール…さすがは流奈さん!…あれっ、違う…似ているけど、別の人だわ…」
ラスキア=流奈なのだから人違いでは無いのだが、桃子はすっかり別人だと思い込んでいる。
ティアラヒロインは変身しても、体型や顔のつくりそのものは全く変わらない。ただし、特殊なメーキャップが施されることと、
表情・雰囲気が一変してしまうため、全くの別人に見えてしまう。桃子が思い違いをするのも無理は無いのだ。
だがラスキアにとって思い違いは好都合。ラスキアはあわてて話を桃子に合わせた。
「いっ、いえ…気にしないで! 私はヒロインで、流奈さんは普通の人間だけど、よく似てるって言われるわ!
それより、ごめんなさい…耳飾りを盗まれてしまって…いつか必ず取り返すから、それまで待っていてね!
それから、べルト…ありがとう! 本当に助かったわ!」
「あっ、耳飾りのことは諦めろってご先祖様が…だからもう要りません。ただ…そのベルト…流奈さんに渡せって、ご先祖様が…」
「あっ…そっ、そうよね…うふふ、もちろん後で流奈さんに渡しておくわ!」
頭脳明晰のはずだが、邪念が多いせいか、話にボロが出る。ラスキアは慌てて話題を変えた。
「そういえば…流奈さんから言付かっているのだけれど…彼女、足をけがしてしまったみたいで、オリンピックは辞退するって…」
「ええっ! そっ、それでは…私が代表…ああっ、夢にまで見たオリンピック…」
後は言葉にならなかった。桃子はラスキアに抱きつくと、感激の余り激しく泣いた。
「そうよ、桃子さん…代表おめでとう!がんばってメダルを取ってね!」
一旦、感激した桃子だったが、急に何かを思い出したようにシュンとした。
「ただ…あのお守りはもう無い。また、同じ演技が出来るのかしら…特にコントロールに不安が…」
ラスキアは桃子の瞳をジッと見ると、きっぱりと言った。
「貴方は日本代表なのよ! 鬼の角を頼りにしていてどうするの? 心配ならば…練習するしかないでしょう!」
「そっ、そうよね…絶対この手でメダルを持ち帰ってみせるわ!」
ラスキアの気迫に、一瞬怯んだ桃子だったが、瞳の輝きをすぐに取り戻しはっきりと頷いた。
ティアラの輝きが桃子の瞳に映っている。その色はまぎれもないゴールドだった。
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さて、パラレルワールドでの新ラスキア第一話はこれで結びを迎える。
本当は今後の展開も含め、書いて置かないといけないことがあるのだが、どうしてもつながりが悪くなる。
そこで、少し手を抜かしてもらい、手元にあるプロットを記して置くことにする。
今回は、これでお許し願いたい。
・とにもかくにも今回の事件により、角の破片の一つは鬼族が手に入れた。
・残りの破片を先に探さないと、大首領の復活が実現してしまう。
・ただ、残りの破片が幾つあり、どこにあるのか…さすがのティアラも判らない。
この点では鬼族の邪鬼による人海戦術は正しいことを認めざるを得ない。
・困った流奈は人海戦術に対抗するべく、情報の集まる場所を模索した。
・引っ掛かったのは吹けば飛ぶような零細企業「風下探偵事務所」…ちょうどアルバイトの募集もしている。
・迷わず流奈は、アルバイトに応募することにした。
・もちろんパラレルワールドの流奈は、そこで運命の出会いがあることを知らない…。
果たして、次に流星天使ラスキアが遭遇する、新たな事件とは、いったい何か?
パラレルワールドから新しい情報が届きしだい、お知らせしよう。
***完