平成16年11月10日・初版
ティアラヒロインSP「三人の性隷天使・第1部:ミレイヤ編」第2章「囚われたミレイヤ」/妄想博士・著
青鬼が案内したのは、タイラントが蹴り飛ばされて来た物置のような部屋だ。
タイラントはひっくり返した棚の上で仰向けのまままだ倒れている。完全にKOしてしまったようだ。
「あらあら、まだお休みしているようね。うふふっ、怪力自慢のようだったけど、ミレイヤキックがカウンターで決まったら無理無いわね…。
さあ、青鬼、『王位継承の証』はどこにあるのかしら?」
「わっ、判った…。あっ、このタイラント男爵の下敷きになっている棚だ。この巨体をどけないと…」
ミレイヤは笑顔で頷くと、タイラントの下につま先を滑り込ませた。
「ふ〜ん、それでは寝ているところ恐縮だけど、もう一度蹴り飛ばすしかないようね! ミレイヤ・キック…あっ!」
足の甲に乗せて蹴り飛ばすつもりだったが、タイラントの巨体はへばりついたように動かない。
それもそのはず、タイラントは伸びているではなく、しっかりと床に踏ん張っていたのだ。
「ぐふふっ、噂には聞いていたものの…さすがはティアラヒロイン、大したパワーだ!
たが、これしきのことでKOされるタイラント様ではないぞ!」
タイラントは寝たままで、瞳を開き、ギラリと輝かせた。
好敵手を見つけた純粋な喜びによる輝き…と思ったのもつかの間、性的な欲望を剥き出しにした不純で濁った輝きに変わった。
「ぐふふっ、眩しいほどの純白…絶景とはこのことだな!」
下からミニスカを覗き込まれていることに気付いたミレイヤは、はっとして後ろへ飛び下がった。
無論、青鬼を連れてのつもりだったが、飛んだ拍子に指から角がすり抜けてしまった。
条件反射に近い反応だっただけに、青鬼のことまで気が回らなかったのと、タイラントの腕が伸び、
青鬼の足首をがっちり押さえつけていたからだ。
「あっ、しまった! 青鬼が…」
「ほほう、ティアラヒロインも恥ずかさに我を忘れることがあるのか? ぐふふっ、案外、小娘らしいところもあるではないか!」
ゆっくりと起き上がりながら、タイラントが言った。
一撃でぶっ飛ばされたにもかかわらず、余裕綽々の言葉だ。
隣ではこれで一安心とばかりに、青鬼が角をなでほっとした表情を見せている。まるで安全圏に逃げ切ったような態度だ。
全く懲りない悪者の姿に、ミレイヤの正義の魂が燃え上がった。
「ええい、どちらにしても同じことだわ! かえって二人まとめての方が、手間が省けて好都合よ!
さあ、いくわよ! タイラント男爵、青鬼、二人とも覚悟しなさい!」
「ぐふふっ、先程は油断したが、今度はそうはいかないぞ! 俺様の怪力を思い知らせてやる!」
青鬼を庇うようにタイラントがぐうっと前に出た。
倍近い巨体だが、恐れるに値しない。
ミレイヤは渾身の力を込めて、タイラントの顔面めがけ、右ストレートを繰り出した。
「ミレイヤ・パアァ〜ンチッ! ああっ、嘘っ…!」
パッシ〜ン!という乾いた音が響き、信じられないことが起こった。
タイラントのグローブのような手が、ミレイヤパンチを受け止めてしまったのだ。
「ぐふふっ、なるほど…俺様の掌を痺れさせるとは、パワーの効いた見事なパンチだ! ようし、今度は俺様の番だ、ええいっ!」
ミレイヤの右手を捕らえたまま、タイラントが反撃に転じた。相撲で云う鉄砲のように、空いている右手を拡げて突き出して来たのだ。
ミレイヤは反射的に左手でタイラントの突きを受け止めた。
“パアッ〜ン!”
掌が思い切りぶつかり会う。勢いを殺しているにもかかわらず、受け止めた左手がぐっと押し込まれる。
怪力を自称しているだけあって凄まじいパワー。ミレイヤが対戦した相手の中でも図抜けている。
体重差は問題外、身長差は優に30センチを超えるし、腕の太さは倍以上違う。
タイラントは両手をがっしり組み合わせると、上背を利用し圧し掛かかってきた。
「くっ、本当に怪力、ただのでくの坊ではないようね、タイラント男爵! でも、パワー比べならティアラヒロインが宇宙一よ!」
タイラントの巨体を活かしたパワーは確かに脅威だ。
ただ、ミレイヤのスーパーパワーが劣ることはない。
ミレイヤはぐっと足を踏ん張ると、下から突き上げるようにタイラントを押し返した。
「ぐっ…しっ、信じられん! 俺様のパワーを押し返すとは! むっおおっ、こんな小娘に負けてなるものか!」
一段とタイラントのパワーが増した。
それでも両者、がっし!と組みあったまま微動だにしない…いや、僅かながらミレイヤ優勢だ。
ミレイヤはじりじりとタイラントを押し上げながらチャンスを伺った。一気に勝ち切るほどの差はない。
「邪悪なパワーになんか負けるものですか! ええいっ、いい加減に諦めなさい、タイラント男爵! 暑苦しいわ!」
タイラントの腕が震え始めている。スタミナ切れが迫っているのかも知れない。
「ぐっ、いかん、力負けしそうだ! そっ、そうだ、青鬼殿! 頼む、加勢を! ぐうっ、このままでは…」
そういえば青鬼の姿が見えない。逸早く逃げ出したのだろうか。いずれにしてもここでの加勢は面倒だ。
「もう少し…もう少しだけ頑張るのだ、タイラント男爵! あれさえ見つかれば…。くそっ、おかしい、この棚ではない!」
青鬼の言い訳じみた声が響いた。青鬼は何かを必死で探している様子だ。
気にはなるものの、ミレイヤは力比べへの集中を途切れさせるわけには行かない。
優勢といってもほんの僅かな差しかないのだ。
「あっ、あった! こんなところにあったのか!」
今度は打って変わった歓喜溢れる青鬼の叫び声が響き渡った。
(お仲間が苦戦しているのに呑気なものね。一体、何があったと云うの?)
さすがに気になったミレイヤはちらっと声の方へ目をやった。
奥の棚から青鬼がジェラルミンケースを抜き出している。
ケースの中身も問題だが、これでミレイヤにはより差し迫った問題が出来てしまった。
少なくとも青鬼が戦闘に参加して来る。そうなると力比べを続けていては対応することが出来ないのだ。
ここは僅かな優勢を捨てても、距離を取った攻撃に切り替えるべきなのか…。
それとも優勢を活かしたまま一気に力比べの勝負をつけ、その後に青鬼を倒すのか…。
ミレイヤは戦法を逡巡してしまった。
ほんの一瞬、迷いが生じたのである。そしてこの一瞬の迷いが事態をとんでもない方向へ向けてしまったのだ。
一瞬の間に、ジェラルミンケースを抱えた青鬼は、飛び跳ねるように近づいて来た。
「ご苦労だったな、タイラント男爵! さあ、これで逆転間違いなしだ…覚悟しろ、ミレイヤ!」
タイラントとがっしり組み合ったままのミレイヤ。そのミレイヤに見せ付けるように、青鬼はケースを開けた。
中には半透明で緑色の塊がついた首輪が入っている。
「ああっ、それは…メテオクリスタル…力が抜ける…」
メテオクリスタルとは…遙か6500年前に地球に落下した巨大隕石に多く含まれていたと言われている、謎の物質。
近くにいる特定の生物の生体エネルギーを緑色に輝きながら吸収してしまう、ミレイヤ唯一の弱点である。
ミレイヤのスーパーパワーが一気に失われていく。
押され気味だったタイラントのパワーがとてつもなく強く感じられてくる。
ただ、ここでタイラントは一気に勝ちに来るのではなく、なぶるように徐々に押し込んで来た。
ミレイヤのパワーダウンに合わせるように、パワーを絞っているのだ。
力比べも互角の体勢に盛り返されてしまった。
そう、はたから見れば力比べは互角の体勢だ。だが、その実、ミレイヤは指先すら動かすことが出来なくなっていた。
両足を踏ん張り、両手を斜め上向きに伸ばしたまま、タイラントと組み合っている無防備極まりない姿勢。
その姿勢のまま完全に押さえ込まれてしまったのだ。
青鬼はゆっくりとミレイヤの背後へ廻ると首輪をはめた。
首輪はまるで意志があるかのように、メテオクリスタル特有の妖しい光を発し始めている。
「ふっふっふ、あっという間に形成逆転だなミレイヤ!馬鹿な小娘だ…鬼族とバンテット一味を相手にし、簡単に勝てるとでも思ったのか?
さあ、さっきのお返しさせてもらうぞ! そうら青鬼パンチだ!」
「(ドスッ!)あうっ!(バキッ!)はううっ! ううん、エネルギーが…身体も動かない!」
押さえつけたままタイラント男爵が上からニヤニヤと笑いかけた。
ギラギラと眼を輝かせた品の無い笑顔だ。
「ぐふふっ、青鬼殿、面白そうだな! どうだ次は俺様にも痛めつけさせてくれないか?」
手が放され拘束が解けた。
ただ、首輪のせいでミレイヤは立っていることすらままならない。
ミレイヤは無様だと思いつつもその場にへたり込んでしまった。
「ふふん、性奴隷仕様か…見事なアクセサリーを作るものだ。おやっ、折角の首輪を外そうとしているのか、ミレイヤ?
ふっふっふ、無駄だ! それに似合っているのに勿体無いではないか! そんなことを考える娘には…タイラントキックだ!」
「(バシッ!)うぐっ! ああっ…力が入らない! いつもならこんな首輪、引き千切れるのに! (ドスッ!)あうっ!
駄目…今のパワーでは外せない…(ズンッ!)ぐっ!」
痛めつけられるミレイヤを蔑むように見下ろしながら、今度は青鬼が説明を始めた。
「ふっふっふ、その首輪は一生ものだ、ミレイヤ! 長い付き合いになるはずだから、詳しく教えてやろう!
コード番号ミレイヤK01…対ミレイヤ専用の新兵器『エネルギー変換首輪』だ。
首輪に付いた緑の宝石はメテオクリスタルとプレジャージュエルの化合物でな…貴様の戦闘エネルギーを吸収し、
性感エネルギーに増幅変換するいいとこ取りの効果がある。水にも強いし、減ることも無い。なにより、昇天した時の輝きは素晴らしいぞ!
ふっふっふ、どうだ、いやらしい気持ちになって来ただろう? 何なら今すぐ、あの美しい輝きを見せてやっても良いのだぞ!」
拒否するよりも先に、タイラントの左腕が伸びてきてミレイヤの腰に巻き付いてきた。
何しろ二対一。はっとしたのもつかの間、ミレイヤは軽々とタイラントの小脇に抱えられてしまったのだ。
腰と一緒に丸太のような腕に挟まれてしまったから、両手の自由も効かない。
両足と髪がダランと力無く垂れ下がる。
逆にミニスカがハラリとまくり上げられる。
これで純白のパンティは丸出し。しかもご丁寧に青鬼の方を向けられている。
「はっ! いっ、いや〜ん、パンティが丸見え…」
「だから俺様を人質にして、隣の部屋に行くのは止めた方がいいと言っただろう。言うことを聞かない小娘は…ふっふっふ…タイラント男爵、
お尻ペンペンのお仕置きをしてやるが良い!」
青鬼の淫らな声が響く。純白のパンティには突き刺さるような視線も感じる。
その途端、肉体的というよりも精神的なダメージを目的とした屈辱的な攻撃が始まった。
「ああっ、いやあ〜ん!(パッシン!)はうっ!(ペッシン!)はううっ! やっ、止めなさい…首輪さえ無ければ!
(ペッシン!)はあうっ〜う! はっ、放しなさい!」
「ぐふふっ、小生意気な小娘だ! 口先だけではなく肉体もだが…。どうれ、お次は生の美尻を見せて貰おうか…そうら!」
淫らな掛け声とともに、パンティが引き剥がすように膝までずり降ろされた。
プッリリ〜ン!と質感のある生尻が剥き出しになる。当然、恥ずかしい二つの穴まで丸見えになってしまう。
「ぐふふっ、やはり生は違うな! すべすべして、掌が吸い着くようだ。叩き甲斐もあるが、撫で廻すのも悪くない。
それにこの穴…ぐふふっ、時々、悪戯も混ぜてやろう!」
タイラントの汗ばんだ掌がミレイヤの生尻を撫で回す。
「いやらしい真似は止めなさい、タイラント…(パッシ〜ン!)はうっ〜あ!(ナデナデ)いっ、いやあ〜ん!
(ペッシ〜ン!)はあう〜うっ!(ズブッ)あふん…お尻の穴に指が…(ペッシ〜ン!)あはあっ!」
肉の音とミレイヤの叫び声が響く中、またしても青鬼の声がする。淫らで下品な笑い声だ。
「ふっふっふ、相変わらずの美尻…音もよく響くな! さて…予期せぬ訪問だったので、島の説明が不十分だったな、ミレイヤ!
そのままの格好で、お仕置きされながら聞いてもらおうか? この島はご推察の通り、我ら夜盗鬼族のアジト…鬼ヶ島だ。
そしてこの建物は島の中枢、管理センターというわけだ。3Fは司令室等の管理用、2Fが研究開発用の施設、地下室が牢獄と調教室、
そして、この1Fは倉庫と商談室だったが、貴様のために今日から対ティアラヒロイン専用の新兵器実験用フロアとして使用することにしよう。
期せずして最高の実験材料が手に入ったのだ。これくらいやらないと、協力してくれるバンテット一味にも申し訳が立たん!」
「冗談じゃないわ! 誰がモルモットなんかに…(パシッ〜ン)はあううっ!」
「ふっふっふ、試したい新兵器は沢山あるぞ。そうそう、ちょうど新薬の話をしていたところだったな!
ふっふっふ、ティアラヒロインのエネルギー…あのバイアグラ効果を人工的に再現させた強壮効果抜群の性欲増強剤を
バンテット一味が作り出したそうだ。1錠で性的な感度が10倍以上になるらしい。どうだ、タイラント男爵、
早速試してみるか? ふっふっふ、なんなら俺様は報告がてら、席を外してやっても良いぞ!」
「ぐふふっ、それはありがたい! 一番先にこのタイラントに味見をさせてくれるとは…。青鬼殿のお気遣いには
感謝の言葉も見当たらないようだ!」
「ふっふっふ、何、減るものでもあるまい。後の方が弄ぶ楽しみも増すというもの…」
本人の意向など関係なく、青鬼とタイラントの間でミレイヤの扱いが決まっていく。
これではまるで食べ物か玩具…。
ただ邪悪な考えの元では、囚われた無力なヒロインは物…それも性欲を満たす道具に成り下がってしまう。
この不文律に改めて気付いたミレイヤだったが、今はどうすることも出来ない。ただ愕然とするしかないのだ。
「ティアラヒロインの肉体は濡れ易い。薬を使うなら流れないよう気を付けることだ。
その後はたっぷりと…ふっふっふ、想像を絶する美味しさに驚くなよ、タイラント男爵!
それに華麗な美しさを誇るミレイヤの信じられないほどのギャップにもな…ふっふっふ、ふっふっふっふ!」
言いたいことだけ言い残し、青鬼の気配が消えていく。
敵の数は減ったものの、危険が間近に迫った。
もう譲り合いや激励に時間が割かれることはないのだ。
タイラントの腕に体をたたんで掛けられたまま、ミレイヤは幾つかのことを願わずにいられなかった。
初顔合わせのタイラント男爵が、信じられないくらい淡白であることを…。
またその肉体のポテンシャルが、怪力振りと相反して、情けないほど低劣であることを…。
ただ、その可能性は余りに低い。
それどころか鬼族を遥かに上回る気配すら感じてしまうのだ。
開発された新薬の人体実験。
それはミレイヤにとっても、いやティアラヒロインにとっても、敵を知る上で大事な実験となったのだ。
実験材料になるのは、両方ともミレイヤ自身の熱くなった肉体だ。
ミレイヤは屈辱と絶望をかみ締めながら、結果を出さなければならない。
今、まさに淫靡な実験が始まろうとしていた。
***つづく