平成17年1月5日・初版 MonkeyBanana2.Com Free Counter

ティアラヒロインSP「三人の性隷天使・第2部:ラスキア編」第2章「怪奇雲」/妄想博士・著

 性奴隷と化したミレイヤがステラ伯爵の肉棒を綺麗に掃除をしているとき、監視レーダーが異常を探知しシステムが警報を発した。  (ピー! 未確認飛行物体…2個探知しました…モニターに映します)  警告を告げる電子音声に、監視レーダーを操るコンピューターが反応、メインモニターへ画像を映し出した。 太陽を背にした二人のティアラヒロインが、もの凄いスピードで飛んでくる映像がまるで映画のように浮かび上がった。 勇ましいBGMが流れてきそうなほど、ヒロインの姿は美しく勇壮としている。 「来たか! んっ…何と二人揃ってか! 白いレオタードが流星天使ラスキア、紅いミニスカが紅天使フォルティア… なるほど、両方とも噂以上の上玉…ひっひっひ、二人とも必ず生け捕りにしてやろう!  さて、とりあえず鬼族ゼロ戦隊を向かわせろ! そして、その後は…フォーメーションC…分断作戦に切り替えだ!  個別撃破の基本方針は変えないぞ!」  ステラは迎撃作戦に絶対の配備をしていたので、本来ならゲーム感覚でスクリーンに指示を出すだけで良い。 何しろ罠と迎撃手段は何重にも張り巡らされている。 ただ、多少計算外だったのはティアラヒロインが二人一緒なこと。 来た順番で個別撃破していくつもりだったから、一味で現場に出ているのはアンヴァン子爵だけだ。 分断作戦の完璧を期すなら片翼よりも両翼の方が良い。 「ぐふふっ、モニター監視はこのタイラント男爵にお任せ下さい! ステラ伯爵は現場に出られて直接指示を… ふっふっふ、二人とも確実に生け捕りにして頂かないと困りますからな! しかし、獲物が二人まとめてとは…堪りませんな。 しかもあの巨乳…エネルギー満タンの牝獣ミレイヤといい勝負…考えただけでも、ムラムラして来ますな!」  タイラントの言葉の通り作戦が上手くいけば、三人娘が揃ってコスチュームを剥ぎ取られ、生の巨乳を震わせながら、 次々に昇天していく…まさに夢の中の出来事を実現出来る。 そのためには自分が現場に立ち、直接指揮した方が確実…ステラは頭脳をフル回転させ、そう結論を出した。 そういえばミレイヤに舐めさせている肉棒が、完全に回復しビンビンにそそり立っている。 「ひっひっひ、まだ掃除していたか、ミレイヤ…念入り過ぎて回復してしまったようだな!  ならば出掛けにもう一発…といいたいところだが、ここは我慢しておこう! ひっひっひ、どうせ現場にて新たなヒロインを捕えるのだ!  溜め込んだ白濁液はそのときラスキアかフォルティアにぶちまけてくれる! ミレイヤのことはタイラントに委ねよう!  ひっひっひ、ひい〜ひっひ…」 「ぐふふっ、そういうことだ、ミレイヤ! 今度はお友達が我々の罠で悪戦苦闘する姿を見ながら…お尻の穴に出してやろう」  タイラントはミレイヤを抱きかかえモニター正面に座ると座位アナル挿入をした。 モニターを見ながらのアナルSEXだ。 「ああっ…! またっ…(ズブリ!)うっひいい〜いっ! おっ、お尻いい〜い…はいっ、入ったああ〜あっ!  ふっ、太いっ、大きいい〜いっ、うっうう〜う、突き上げて来るう〜う!」  半失神状態のミレイヤだったが、強烈なアナル突き上げと丹念な乳首弄りにより、今度も息絶え絶えに悶えさせられていく。 大きく見開かれたミレイヤの瞳には、ようやくモニターの中の二人のヒロインの姿が映った。 *************************************************  東京湾沖合いを飛行していたラスキアとフォルティアは、ほぼ同時に時空の歪み、その中に鬼ヶ島らしき島影を発見した。 概ね視界は良好。島の上空に細かい雲が見える程度で、障害は無さそうに見える。 …が、そんなはずも無い。 思った通り、第一の刺客が真上から現れた。 6機の飛行機が一直線にやって来る…プロペラ機…なんと旧日本軍のゼロ戦だ。  鬼ヶ島には、元々日本軍が残していった各種兵器がある。 50年以上前の兵器だが、保存状態が良いことと、鬼族により近代的に改良・改造されたため、侮れない戦力となっている。 第二次世界大戦でも活躍したゼロ戦は、速度も500km以上なので、ヒロイン達よりはるかに早く、身軽で操縦性が抜群であるため、 生身のヒロインを捕獲迎撃するには最適である。 武器は4門の炸裂麻酔弾(命中すると炸裂し、周囲に麻酔薬を撒き散らす弾)が装備された機関砲を装備していた。 (ダッ、ダダダ…ダッ!)  正面から機銃を掃射しながら突進してくるゼロ戦に、ラスキアとフォルティアは空中で一旦静止すると、手をつないで身構えた。 静止した目標だから照準は容易…機銃掃射を浴びせながら、ゼロ戦隊はヒロイン達に突っ込んだのだが…効果や手応えの全くないまま、 突き抜けたように通り過ぎてしまった。  鬼族ゼロ戦隊から放たれた機銃弾は全弾命中し、ラスキアとフォルティアを麻痺させるはずだった。 だが、炸裂するはずの弾丸は、余程軽くいなされているのか、全く信管が反応しないまま、不発弾となり、 悉くチョップとキックで叩き落されていく。  速度が勝る場合は、効果の有無にかかわらず、一撃離脱を繰り返す…これは空中戦のセオリーである。 飛行速度では200km以上の差があるから、このときのゼロ戦隊も一撃離脱をしてから反復攻撃を考えていたのだが、 今相手にしているのは単独のヒロインではなく、ペアであることを忘れている。 「さあ、今度はこちらの番ね! 二人ならば、速度の違いも克服出来るわ! 反復攻撃なんて許さない…フォルティアお願い!」 「行くわよ…ラスキア! ハンマァ〜シュート! トイヤッ!」  フォルティアは自分を軸にして、ハンマー投げの要領でラスキアを回転させると、ゼロ戦に向かって投げつけた。 ラスキアの飛行速度は普通300kmだが、フォルティアのパワーが加われば音速に近くなる。 たちまち、ラスキアは最後尾のゼロ戦に追いつき、尾翼にまたがると、何本かのビスを抜きはじめた。 (バラッ! バラッ!)  ビスを抜かれた尾翼は風圧で空中分解していく。 尾翼が骨組みだけになったゼロ戦は、コントロールを失い、錐もみ状態で墜落していった。 ラスキアは墜落直前に2機目に飛び移ると、同様の方法で料理し、3機目に飛び移った。  これは青鬼の機だ。ラスキアは高速で飛ぶゼロ戦の上を軽いステップで縦断すると、風防を叩き割った。 「お招き頂いた流星天使ラスキアよ! よくもミレイヤをあんな目に…青鬼、覚悟っ! はあ〜あっ、トイヤッ!」  挨拶もそこそこに、ラスキアは怒りを込めて青鬼の延髄にチョップを放った。 「ぐっはああ〜あっ!」  グラッとバランスを崩した青鬼のゼロ戦はどこかでショートしたのか、煙を噴き出し、ラスキアを空中に残したまま、墜落途中で爆発した。  一方、先頭の3機は旋回を終えると、残ったフォルティアへの反復攻撃の為、態勢を整えた。 フォルティアは空中で静止しながら、ゆっくり左腕を突き出すと、照準を先頭のゼロ戦に合わせ、パワーブレスから治癒ビームを照射した。 治癒ビームはフォルティア唯一の光線技である。 光線に破壊力はないが、名前の通り傷を治癒したり、邪悪なものを更生させる効果がある。 鬼族の操るものは全てが邪悪なエネルギーで稼動している。 そのためゼロ戦のエンジンやプロペラはビームを浴びると更生し、いきなり逆回転を始めた。 先頭のゼロ戦…赤鬼機が空中でつんのめるように失速すると、後続機が追突していく。 3機のゼロ戦はもつれ合いながら、海へ墜落して行った。 ************************************** (さすがラスキアとフォルティア! 6機の戦闘機をあっという間に始末したわ…これなら、私を地獄から救い上げてもらえるかも…。 でも、次にバンテッド一味の罠が…気をつけて!)  犯されながらモニターを見ていたミレイヤに、希望を取り戻させるほどラスキアとフォルティアは強く、鬼族は弱い。 これほどの惨敗はタイラントも予想していなかったようで、鬼族ゼロ戦隊の不甲斐無さに怒りを爆発させた。 「くっ、こんなに簡単にやられおって! 真正面から行くからダメなのだ…。ただ、第一波は油断を誘うための言わば捨て駒。 鬼族の後ろに我らが居ようとは、ラスキアもフォルティアも知らないはずだからな…。そうら、ミレイヤ…本当の勝負はこれからだぞ!」  ミレイヤに突き刺された肉棒は、ヒロイン達の活躍に対抗するかのように、一段と硬度を増しより深く食い込んでいった。 「うっ、はああん…ラスキアア〜ン、がんばっ…うっうう〜う! フォルティア〜ン、きっ、気をつけ…あっふう〜ん!  ふっ、太いっ、あっ、当るう〜う! 駄目え、負けちゃあ…ああっ、いやああ〜ん!」  ミレイヤはアナルの奥を突き上げられる度に、瞳をかっと開き、モニターの中の希望を祈る思いで見つめている。 だが、映像を撮っている側…ミレイヤの希望であるヒロイン達の前方には、行く手を遮るかのように、 不気味な雲がムクムクと広がり待ち受けていた。 その光景はミレイヤには見えない。 もし見えたとしても伝える手段は皆無…祈ることしか出来ないのだ。 *********************************************  さて、その雲の中では悪の発明家アンヴァン子爵が、満を持して待ち構えている。  用いる武器は自らが開発した生物兵器ヌーヴォラだ。 ヌーヴォラはティアラヒロイン捕獲用に生み出されたクローン生物である。 雲に邪悪な知能を植え付けた様な単細胞生物で、アメーバーのように分離・合体をする。 普段は綿菓子のようにフワフワしながら、雲に紛れて浮かんでいるが、獲物が絡むと一斉に集結してまとわりついて来る。 そのフワフワした綿のような触感でまとわりつくと、途端にスライム状に変化し、獲物の動きを封じこめてしまうシンプルだが 厄介な生物兵器である。  アンヴァンはヌーヴォラには絶対の自信を持っていて、一回は分断作戦を拒否している。 ヌーヴォラならば、ティアラヒロインを二人まとめて捕えることが出来るというわけなのだ。 今もソファー型に変形させたヌーヴォラの上で、アンヴァンはくつろぎながら、先程のステラ伯爵とのやり取りを思い出しニヤニヤしている。 「くっくっく、失礼ながら、分断作戦など不要では…ステラ伯爵。ヌーヴォラならば二人まとめて一網打尽にして見せますよ」 「もちろんアンヴァンの自信作に不安など抱いてはいない。ただ、ティアラヒロイン一人に全力を注いだ方が良くはないか?  ひっひっひ、念には念を入れるということだ」 「くっくっく、命令とあらば従いますが…随分と心配性ですね、ステラ伯爵。さては何か別の理由でもおありですか?」 「ひっひっひ、その通り、別の心配が二つある。一つはここでアンヴァンが全て決めてしまうと、私の出番がなくなるということ。 もう一つは、アンヴァン一人ではティアラヒロイン二人相手は荷が重いということ…おっと、これは戦闘の話ではなく、その後の話だ!  ひっひっひ、捕まえたティアラヒロインを鬼ヶ島まで手を付けずに運ぶつもりはアンヴァンにもないはず…。 ただ、ミレイヤで思い知ったのではないか? ティアラヒロインの肉体がどれだけ凄まじいかを…。 どうだ、短時間であの肉体を二つも相手に出来るのか?」 「なるほど、ステラ伯爵の出番はとにかく、確かにティアラヒロインの肉体を二つ引き受けるのは問題ですね。 一人に集中した方がより深く犯せるし、なにより…二人相手は目移りしてしまいそうな自分が怖い。くっくっく、分断作戦承知致しました!」  こうして分断作戦が決まり、担当割当もなされた。 空に留まったヒロインを捕え犯すのはアンヴァンの役目。 海に落ちたヒロインを獲物とし弄ぶのはステラだ。  アンヴァンは青白く端正な表情を淫らに歪めた。 「空に留まるのは流星天使ラスキアか、紅天使フォルティアか…。くっくっく、どちらにしても徹底的に開発して上げましょう!  おやっ、どうやらいらしたようですね。さあ僕の可愛いヌーヴォラ、準備はよろしいですか! 狙いは分断…片方を海に落とすのですよ!」 ゼロ戦隊を簡単に料理したラスキアとフォルティアは鬼ヶ島上空に到着しつつあった。 「青鬼はラスキアチョップで叩き落したわ、フォルティア!」 「私も赤鬼を撃墜したわ、ラスキア! 少しあっけなさ過ぎるような気はするけど…」 「確かに…ただ、とにかくこれで幹部は一掃よ! 残るは邪鬼だけ…雑魚ばかりよ、さあ、急ぎましょう!」 「ええっ、そうね! あの島が鬼ヶ島、上空は小さい雲が多いけど…一気に突き抜けて上陸してしまいましょう!」  この時点において、ラスキアとフォルティアは敵が鬼族だけだと信じ込んでいたし、 バンテッド一味が絡んでいようなどとは夢にも思っていなかった。 『恥辱の初戦』はずっと以前の話だし、地球上の事件ではないから無理もない。  ぐっと増速した二人はほぼ同時に雲の中へ突っ込んだ。 だが途端に雲が蜘蛛の糸のように身体に絡み付いて来た。 「何…この雲…エエイ、トイヤ! ハアッ、トイヤ! ううん…フワフワしてて手応えが無い!  それに細かく千切れるだけで…また再生してくる!」  鬼ヶ島まであとわずかのところでラスキアとフォルティアは、新生物兵器ヌーヴォラにまとわりつかれ、意外な苦戦に陥ってしまった。 うっとうしい事、この上ないのだ。 「トイヤ! エイッ、トイヤ! ううん、これでは・・・きりが無いわ!」  力技は通用しないため、結果として、ヌーヴォラから逃げるか、振り払うしかないラスキアとフォルティアは次第に防戦一方になっていた。 先程決められた対ティアラヒロイン戦術は分断した上での各個撃破である。 だからラスキアとフォルティアを分断し、片方を海に追い込むこと(海にはステラが別の罠で待ち構えている・・・)が ヌーヴォラ達の役割である。 ティアラヒロインはマントというアイテムによって飛行が可能になっているから、海へ落とすとなると・・・片方のマントが 徹底的に狙われることになる。 (スー、ストン!)  ヌーヴォラがマントに絡みつきスライム状に変化をするため、マントはひらめくことが出来ず、フォルティアの高度が一瞬下がった。 コスチュームが真紅で目立つ分、フォルティアの方にどうしても攻撃が集中する。 何度も振り払うフォルティアだったが、執拗な攻撃に対応していく内に、徐々にラスキアとの高度差が生じて、単独戦闘を余儀なくされていく。 ペアで闘うことにより互いの死角を消していたが、一人になるとやはり背後の敵に弱いのだ。  フォルティアのマントのホックを外そうとしているヌーヴォラがいる。 上空で戦うラスキアが見つけたが、既に距離が開いてしまっている。 「ああっ、フォルティア…首に雲が! 今助けに行くわ…トイヤ! あんっ、邪魔!」 「えっ! ああっ、マントが外れると…落ちちゃう! ラスキア…ああっ、間に合わない!(ハラッ!) きゃあああ…ぁぁぁ…ぁぁぁ…(ドッボ〜ン!)」  マントを失ったフォルティアは宙に浮いていることが出来ず、まっ逆さまに落下すると、大きな水飛沫を上げて海に沈んでしまった。 「ああっ、フォルティア!」  フォルティアを救うために高度を下げようとしたラスキアだったが、そもそも自分のことだけで精一杯。 余裕が無いのに無理をしたことが災いした。 隙を見せたラスキアの胸、足、腰、腕にヌーヴォラがまとわりつき、すぐにスライム状に変化していく。 「ああっ、しまった! エイッ、トイヤ! ああん、間に合わない・・・エイッ! ああん、どうしよう・・・!」  胸と腕のスライム変化したヌーヴォラを振り払う間に、首、顔、尻、そして再び胸と腕に別のヌーヴォラが絡みついてしまい、 対応が間に合わない。 しかもフォルティアとの戦闘を終えたヌーヴォラ群も加わり、ラスキアの姿は見る見るヌーヴォラに包まれていく。 雲の中では、スライム状に変化したヌーヴォラの一部がヌルヌルとラスキアの肌を這い廻り、 触手に変化した別の一部がコスチュームを捲くり、内部へ侵入しようとしている。 パワーベルトも留金を外されかけてしまっている。 「いやらしい真似は…止めなさい! ああん、ベルトが…まずい、一旦逃げなきゃ!  ええいっ、恥ずかしいけど…一回コスチュームを脱ぎ捨てて…トイヤッ!(ビリビリビリ…!)」  自らコスチュームを破り捨て全裸になったラスキアは、ヌーヴォラを振り払うと素早く変身ポーズを取った。 「スーツ・リバース!」  ティアラから眩い光がほとばしり、ラスキアの身体を包んでいく。 光は白く色を変え、布となってラスキアの肌に張り付いた。 あらわになった巨乳や生尻を、再生された白いコスチュームで包み直したラスキアは空中に浮いたまま身構えた。 今度は十分に距離を取っている。 「ふう〜、危ないところだったわ! でも、一度逃れてしまえば、もう捕まらないわよ! スピードならばこちらが上…ああっ!」  ヌーヴォラはというと、大半がラスキアの脱ぎ捨てた古いコスチュームにまだまとわり付いたままだ。 無機質ながらどことなくいやらしく、ラスキアの残り香や体温を楽しんでいるようにも思える。 「まだ私の古着にまとわりついているなんて…なんていやらしい生物、まるで変態ストーカーね! よ〜し、思い知らせて上げましょう!  コスチューム焼却…ラスキア・イオン・フラッシュ!」  ラスキアは脱ぎ捨てたコスチュームのマイナスイオンをスパークさせ、瞬時に光の炎を起こした。 脱ぎ捨てたコスチュームが、まとわりついていたヌーヴォラもろ共白い炎で燃えていく。  ティアラヒロインのコスチュームは、ティアラリングの発する光と、戦闘エネルギーから取り出されるマイナスイオンを交合させた 特殊繊維で出来ている。 強靭だが、脱いでしまえば五分で(光とイオンの供給が損なわれ)自然消滅してしまうプリペード・コスチュームだ。 ただ、脱ぎ捨てた場合でも様々な利用方法がある。 イオンを過度に注入しイオン爆弾にすることが出来るし、光のバランスを高め、万病や怪我を治癒する特殊シートにすることも可能だ。  今回、ラスキアは光の炎を使ってコスチュームを焼却した。 光の炎は、怪我や傷を暖め治癒する一方で、ばい菌やウイルス等、悪性の物だけは容赦なく燃やす正義の力を持っている。 ヌーヴォラが邪悪な生物であるからこそ効果絶大なのだ。  下等生物なりに危険を感じたのか、残ったヌーヴォラは向ってこない。 「いけない…いつまでもこんなところでモタモタしている場合じゃないわ! それにしても雲状生物を罠に使うなんて、 鬼族にしては出来過ぎ…はっ、何…この邪悪な気配は…」  先を急ごうとした瞬間、ラスキアは異様で邪悪な気配を感じた。 “シュルシュル…シュパー!”  雲の陰から幾枝にも分かれた黒い帯がラスキアに真っ直ぐ伸びて来た。 「はっ、何者…?! 流星真空カッターチョップ! トイヤッ!」  流星と名が付くのは、スピードを最大限に生かしたラスキアの必殺技だ。 ラスキアが半身の姿勢で虚空を手刀で切り裂くと、そこには真空が発生…いわゆる「かまいたち」が作られる。 “ブチッ、ブチッ…ブチンッ!”  大半の帯を切り落とし、そのまた大半の帯からは身をかわした。 だが、帯の数は余りにも多い。最後に残った二本だけがラスキアの右腕と胴にクルクルと巻きついてしまった。 「くっくっく、たったの二本だけでしたか、さすがはティアラヒロイン、見事な反射神経ですね」  帯が引かれピーンと張る。不気味な笑い声は帯が放たれた小さな雲の中から響いている。 「一体、誰なの…姿を現しなさい!」  ラスキアの声に応えるように、雲がスウッと薄れ、黒い服を着た男が現れた。 細身で色白の貴公子然とした美青年。高級仕立ての黒服がピタリと様になっている。 「鬼族ではないようね! 貴方は一体、何者…?」 「くっくっく、お目にかかれて心の底からうれしく思います、流星天使ラスキア!  僕は宇宙貴族アンヴァン子爵、バンテッド公爵の一味で一番イケメンの天才発明家です。 これから永い付き合いになるはず、どうぞお見知りおきのほどを…」 「バンテッド公爵って、あの…奴隷商人バンテッドのことね! ミレイヤを捕らえたり、巧妙な生物兵器を仕掛けたり、 鬼族にしては出来過ぎだと思っていたけど、貴方達がサポートしていたとは…呆れた悪のコラボレーションね!」 「くっくっく、それをいうなら、ミレイヤを代わる代わるに犯したり、巧妙なテクニックで何度も何度も逝かせたり…ですね。 本当にミレイヤは美味でしたよ。さあ、ラスキア、お待ちしていました。次は君の番ですよ!」 「なんていうことを…もう許さない! 鬼族ともども叩き潰して上げるわ! アンヴァン子爵、覚悟しなさい!」 「くっくっく、君の方こそ覚悟しなければなりません。身体に巻きついている帯…これは僕の発明した調教鞭ですよ。 この鞭で君の肉体は僕の自由自在…」  巻きついた帯、いや鞭が良からぬものであることくらい、ラスキアはとうに見抜いている。 怒りに燃えるラスキアは瞬時に張った鞭を断ち切ると、先制攻撃を見舞った。    ラスキアは時速300kmの高速で飛行するが、特筆すべきはその加速度だ。 飛行機なり車なり、動くものは何でもトップスピードを出すまでに加速の時間が必要だ。 静止状態から1、2、3…100kmと徐々に加速し、やがて時速300kmに達するのが普通、 またこの間、最短でも10秒程度は必要になる。  ところがラスキアを含めティアラヒロイン・フライングは加速の時間を必要としない。 厳密に言えばゼロではないが、限りなくゼロに近い時間…瞬時に静止状態からトップスピードに移ることが出来るのだ。 時速300kmは秒速83mだから、ラスキアは0.5秒で40mを移動することが可能。 そのため、この時のように多少の距離があったとしても、瞬く間に距離を詰め、攻撃を敢行出来る。 「まずは開脚でも…んっ、鞭が切れてる。おおっ、もうそこに…ぐっはあ〜!」  薄ら笑いをしているアンヴァンの顎にラスキアキックが炸裂した。 それもぶっ飛ばす蹴りではなく、アンヴァンに衝撃を吸収させる蹴り。 色白で整った顔がひっしゃげるほどの凄まじい破壊力だ。 アンヴァンは顔面を押さえて雲の上にガクリと膝をついた。 「うふふっ、邪悪な発明ですもの…どうせそんなところだろうと思い、すぐに切り落としたわ!  ただ、引きこもりのお坊ちゃまだと、武器無しでは勝負にならないかしら? 男の子ですもの…少しは鍛えた方がいいわよ!」  ラスキアはうずくまっているアンヴァンの髪を掴んで面を上げさせ、往復ビンタを叩き込んだ。 「(パァン・パァン…)うっはっ! 顔は…顔だけは、やっ、止め…(パァン・パァン…)くっ、僕も男…組み合えば…力比べなら、 女になんか負けませんよ!」  アンヴァンは青白い顔を紅潮させながら、ラスキアに組み付いてきた。 ただ、差は歴然。ラスキアのスーパーパワーに比べれば、青白い男のパワーなど幼児に等しい。 蒲柳に見えて、案外力持ちかも知れない…と思って注意していただけに、ラスキアはすっかり安心した。 新兵器を取り出す余裕を与えなければ、アンヴァンに遅れを取ることは有り得ないのだ。 「あらあら、それでパワー全開のつもり? アンヴァン、それでは男として頼り甲斐が無さ過ぎるわ!  あっ、またうざい雲…下等ペットが助けに来たのね! 独りで戦えないなんて、益々以って最低の男だわ!」  元々、ヌーヴォラはうざいだけの存在だ。 どんなにまとわりつかれても、手間はかかるが、スーパーパワーで振り落とすことが出来る。 結局、アンヴァンを倒してしまえば、ラスキアの勝利は動かないのだ。 ヌーヴォラにまとわりつかせたまま、ラスキアはアンヴァンを片手で押さえつけ首根っこを絞めつけた。 「むうっ、くっ、苦しい…むっ、う〜ん…」  たちまちアンヴァンは青白い顔を更に青白くして、泡を吹きながらぐったりしていく。 お坊ちゃまだけに失神間近になった途端、一気に戦意を喪失した様子だ。 これで残る相手はわずらわしいヌーヴォラだけ。 コスチュームを脱げば片付く相手のはずだった…だが、 「いけない…鞭が巻きついたままではコスチュームが脱げない! 振り払うしかないわ! トイヤ…えっ!(ピカッ、バリバリバリ!) きゃあああ、ベルトがっ…まさか電撃!?(ピカッ、バリバリバリ!)あわわわっ…痺れるう…ああっ、動けない…! (ピカッ、バリバリバリ!)きゃあ!コスチュームまで…!」  必死でヌーヴォラを振り払うラスキアに落雷のような電撃が襲った。 「ううっ〜ん、苦しい思いをしましたが…これでステラ伯爵のシナリオ通り逆転ですね。くっくっく、戦いの主戦力は僕ではなく あくまでもヌーヴォラ…、完全な読み違いですよ、ラスキア!  サポートに過ぎない僕に気を取られ、ヌーヴォラにしてやられたというわけです。下等生物だからといって舐めて貰っては困ります。 ヌーヴォラは雲の生物。当然、雷雲の性質も兼ね備えていますよ。それに案外、頭が良いのです…」  アンヴァンの甘ったるい声が得意げに響き渡る。 だが、ヌーヴォラに捕えられたラスキアはどうすることも出来なかった。 電撃を浴びたパワーベルトは瞬時にスイッチを解除。 一瞬にしてラスキアはスーパーパワーを持たない無力なヒロインとなってしまったのだ。  囚われの身となったラスキア…大空でピンチが始まる。 ***つづく