平成13年3月16日・初版

バットガール最大の危機・第6章/A(S)・著

キャットウーマンズ プレイ (前編)  雪深い森からバットガールが帰還したのは翌日の夜だった。昼には目を覚ましていたが、 人目のこともあり夜まで身を隠してから下山した。その夜も身を切り裂くような寒さであり強風の 吹くたび体力を奪われるようだった。ゴッサムシティーの南に位置する高層マンションの一室に非常階段を かたかた昇ってたどり着くなり、バットガールは前のめりに倒れ、そのまま朝まで熟睡した。    「……ニュースをお伝えします。先日の脱走劇よりその行方が分からなくなっておりましたテロリスト、 ノーラ=クラヴィンスがゴッサム近郊の山荘で額を撃ち抜かれ死亡しているのが確認されました…… ゴッサム市警はクラヴィンスを捕獲したと通報した第一発見者であるバットガールに事情を聞くことに している模様です……繰り返します……先日の……」  目覚まし代わりに用いているラジオが部屋に響き、ゆるやかに光が部屋を満たしはじめ、バットガールは 伸びをすると、ようやくに立ち上がりキッチンで水を注いで渇きを癒した。そして彼女の名を呼ぶその放送に 耳を済ませた。  「……?」  それからリビングへ戻る途中、姿見の前を通った。真紅のマスクをした女の顔、紅の唇、紺色の スパンデクス地のコスチュームを全身に張り付かせている女、光沢が身体の起伏に併せて踊る。 そのしなやかながら鍛え上げられた体の線に沿って。そして伸びやかな脚と白いエナメル質のロングブーツ。  それからおとといの夜のことを思い出す……バットガールを見るノーラの淫靡な笑み。そしてその眼差しの 下で繰り広げられた狂乱。  「……昨日、わたしの出た後になにが有ったの?」  バットガールは市警に電話をすると、担当刑事に話を通してもらった。制帽が見つかったこと……そして その制帽から興味ぶかい指紋が検出されたこと……バットガールの嫌疑はすぐに晴れたことが分かった。 受話器を置いたバットガールは静かに呟いた。  「……キャットウーマン……あなたなのね」  続けてオフィスに有休をとることを連絡したバットガールは、姿見の前の安楽椅子に腰掛け着替え始めた。 右脚を左脚の腿の上に横たえ白いブーツの後ろについているジッパーをゆっくりと下げる。そして今度は 左脚を腿の上に乗せ、ジッパーを降ろす。アキレス腱のところまで下ろすと、ブーツをゆっくりと外した。 白い素足が現れる。バットガールはそれをいとおしげに愛撫した。ノーラの舌先が丹念に刺激した指の先 ……気を失いそうな官能の記憶。  それからバットガールは右腕の真紅のグローブを外す。左手をグローブの端にかけ、少しめくってから、 指先から引っ張り、最後に端から引き降ろして外した。同様に左腕を外した。  バットガールはそれから白く突き出しているバットベルトの端を手にとり、穴から外し、引いた。 くびれたウェストの周りを白い光沢を帯びたベルトが滑る。 ツツッー  スパンデクス地のコスチュームと擦れてかすれた音が立つ。バットガールはベルトの過ぎたウェスト周りを 優しく撫でた。手から伝わる暖かさが、腰周りを満たす。時折、バットガールは自分がなぜスーパーヒロインなどを して、危険な目に有っているのか分からなくなることが有ったが、今この瞬間だけは誇らしい気持ちに なるはずだった……しかし、今朝は空しい気持ちが募るばかりだった。  その時、眩しい日差しが部屋に飛び込んできた。バットガールは仮面にかけていた手を止めて、白い光の 束を見つめた。それからバットガールは遮光カーテンを閉めて、部屋を深い暗闇で満たした……今日から キャットウーマンとの戦いが始まる。闇を倒すものは闇でしかない。光の力はいつも闇を生みだし、 活気付けるだけだ。闇の中で、鏡の中にいる真紅のマスクの下の自分の瞳を見つめていたバットガールは いつしか、その指先で彼女自身の身体を苛めはじめた。催淫剤が体に残っているのだろうか、鏡の中の スーパーヒロインは数分もしないうちに、椅子にひどく浅く腰掛ける形となり、真紅の唇を引きつらせる癖を 見せ、左手はコスチュームをこぼれそうな胸をゆっくりともみしだき、右手の指先は口の中で妖艶に 濡らされた後で、その敏感な部分を生地の上からゆっくりと撫で上げた。 「……はっ……あん……あ」  バットガールの目が一瞬、目の前の姿見に映る自分を捉えた……また胸の突起がボディースーツの下から 突き出ているのが分かる。バットガールの赤い舌が一瞬のうちに下唇をさっと舐め、左指が緩急をつけて その突起を弄ぶ。 「……んっ」  低い息遣いの中に、やや高い鼻音が混じる。それから、バットガールの濡れた右指が股のやや奥深いところへと 滑るように入っていき、その中心に軽く触れ、強く触れた。 「っあんっ……はあ……あ」  息遣いが少し早くなり、併せて抑えた低い声が混じる。鏡の中のスーパーヒロインと再び目を合わせて、 彼女は自身の濡れたボディースーツに包まれた肢体が緩やかに蠢くのを意識した。そして乳首を責めていた 左手をゆっくりと下へと滑らせ、その引き締まった腹部の筋肉に沿って滑らせた。 「ううん……ん……あん」  バットガールがその腹筋を愛撫するさまを眺めていた鏡の前の彼女は、顎を上向きに突き出して控えめな 声をあげた。  最後まで達する前にバットガールは安楽椅子を降り、棚から一本のテープを取り出して、 それをビデオデッキへと滑り込ませると、その前のソファへ浅く腰掛けた。  テープは数秒の闇から唐突に始まった。画面の中では彼女に馴染みの深い真紅の仮面をしたやや気取った 女性が万歳をした格好でその手首を真上で縛られており、その首元には一本の荒縄が巻きつけられていた。 この縄もまた一旦上へと消え、それから画面の奥の方の黒い機械から伸びるスロットに結び付けられている。 その後ろには黒いビニル地のコスチュームをつけた黒い仮面の女が立っている。  「ニャーオウ……バットガール……あなたの処刑はこう。あなたの脈拍、呼吸数、声色、声量、発汗量から あんたが絶頂に達するまであとどれくらいかが分かる」  そういって、キャットはバットガールのつるされた手首に巻きついたメタリックなリングを撫でた。  「このリングがあなたのデータを集めてるの。そしてそのデータはこの細い線を伝って、あの後ろの マシンへと繋がる。あのマシンはあなたの絶頂に合わせて、スロットを下げていく。そして、絶頂を迎えた瞬間、 あんたは絞首刑で即死というわけ……ところでバットガール……あなた酸欠の状態では快楽が倍増するって 知ってた? そう……」  そういって、キャットはバットガールの首に巻きつけられた縄をいとおしげに撫でた。 「感じれば感じるほど……あんたは死へと近づいていく。そして絶頂を味わうことなく、あんたは 消えることになるのよ」 「……なぜわたしをすぐに殺さないのかしら」  バットガールは少し怯えたような低い声で、しかし毅然として訊いた。キャットウーマンはすぐには答えず、 背後からゆるやかに両手で宿敵の胸を揉んだ。バットガールの眉根が寄り、逃れようと身を捩じらせるが その都度、首の縄が引っかかってうめき声をあげて引き戻される。 「バットガール……あなたはなぜか……私の嗜虐心をくすぐるわ」  そしてキャットウーマンはバットガールの耳を優しく歯を立てて噛んだ。 「……っ……ん」  バットガールの身体が一瞬引きつる。 「完璧な容貌……完璧なボディー……完璧なセクシーさ……そして完璧な精神……ふふ……登山家みたいな ものかしら……つまり」  熱い吐息を耳に吹きかけつつ、両手は胸のふくらみを紫紺のスパンデクス地越しに揉む。やがて、乳首と 思しきところをその指先でゆっくりとこねくり回す。 「……ッ……んん」  やや腰をかがめ、鼻にかかった声をあげるバットガール。 ガクンッ  「んん」  スロットが一段階下がり、バットガールの首の荒縄がやや引き上げられ、バットガールはかがんだ腰を 上げざるを得なかった。 「……つまりね……そんなものほどその高みを極めたくなる……そう……」  背後からバットガールの上気して赤くなった耳を再び優しく噛む、そして頬をゆっくりと舐める。 そのたびに捕われのバットガールの息つかいに音が混じる。乳首に当てられた指先を細かく振るわせる。 「……征服したくなる……の……ニャーオウ」 「ッ……ああん」  指先からと耳元の同時の刺激に耐えられず、バットガールは思わず声をあげた。そのボディースーツの 光沢が腰の悩ましい動きにつれて身体中を速やかに駆ける。  ガクンッ  「レベル……2」  キャットウーマンは冷たく耳元で囁きながら、なお胸を責める手を休めない。やがて、右手のみ するすると爪を立てながらスーツを降りていく。腹筋を優しく愛撫し、白い革のベルトとウェストの間に 滑り込み、ウェストを締め上げ、やがて、ボディースーツの上から敏感な部分に触れる。  「っ……あん……やめ……て……ああん」  既に首もとの縄はバットガールの身体を否応無く上へと持ち上げる。その白いエナメル質のロングブーツは つま先で伸び上がる形になっている。それが、バットガールが声をあげるたびに、地に付いたり 伸び上がったりする。  「ふふ……首をしめられてよがるなんて……あなたマゾヒストなのかしら?」  背後からスーパーヒロインの耳を舐め、耳たぶを噛む。それに併せて、バットガールが腰をガクンッと 落としかけるが、その都度、「ウッ」と低いうめき声を漏らして上へと引き戻される。 キャットは右手を股の下から入れ直し、敏感な性器から股の亀裂に沿ってその中を指を走らせる。 アナルを過ぎ、尻の割れ目の頭まで来た。堪らず、セクシーヒロインは更に伸び上がって甲高い声をあげる。  「はあ……ああ……あああんっ」   ガクンッ  スロットが落ちる。  「ッ……うう」  いよいよスーパーヒロインは常につま先で伸び上がらなくては、窒息する段階にまで達しつつあった。 しかしその苦しみとは裏腹に、加えられる刺激に対する感度はますます高くなってきた……キャットウーマンの 予言どおりになってきた、と思った。  乳首を弄んでいた左指を止め、キャットウーマンは熱い吐息を吹きかけるように耳元に囁いた。  「スーパーヒロインさん……あなたの乳首、ツンッと立ってるわよ。ホラ……硬いでしょ」  といいながら、左指で紫紺のボディースーツの上から突き立った胸の中心をやわらかくはじいてやる。 やわらかくも強張ったバットガールの乳首ははじかれる責めに、けなげに耐えているようにも見える。  「ッあん!……はあはあ……ああああん」  低い声を上げてよがるバットガール。その舌が妖艶にひらめき、その下唇を舐める。上目遣いで やや呆けたような表情で刺激に身を任せるているようにも見える。その時、後ろにいるキャットウーマンが 顔を前に出し、一瞬バットガールと見つめ合っていたかと思うと、素早くバットガールに口づけをした。 既に首をしめられているバットガールに逃れる術も無く、また酸欠で朦朧とし始めた脳内にそれを拒む 意志も生まれず、ただ宿敵の貪欲な舌の動きに全てをさらけ出し溶け合った。スクリーンからはバットガールが キャットの背中の後ろで切なげに身もだえしている様と、その妖艶な動きに合わせてボディースーツ上の 光沢が踊るさまが分かる。やがて、キャットウーマンがバットガールの背中に戻ると、更に激しく右指を 股の線に沿って滑らせ始めた。  「ッ……あああんんッ!」  大きく身体をのけぞらせる正義のヒロイン。顎を突き上げて押し寄せる官能を引きとめようとするが、 その我慢は更に深い官能を呼び寄せてしまい、バットガールは快楽の罠に完全に嵌っていた。  ガクンッ  「レベル・フォー」  冷たい宣告。既にバットガールは白いエナメルのブーツのつま先では間に合わず、首は容赦なく 締め上げられている。右手の指先から加えられる刺激はますます激しくなり、突き立つ身体の中心を 人差し指の腹で倒し、指先でつと触れる。  「っあああんんんんッ……はあ……ああッ」  スクリーンからは、バットガールのボディースーツの下腹を中心に濃い染みが広がり始めているのが 分かる。それをキャットウーマンは右指でスーツをつまみ、身体から離しては、指を離し、スーツを ペッタリと下の肌にくっつける責めを幾度か行った。濡れたボディースーツが肌に合わさるたびに、 乾いた音が響き、スーツの下の肢体の淫らな起伏を露にする。  ペシッ……ペシッ……ペシッ 「ッんん……はああん……やめ……な……さ……い……あああああん」  既に脳は朦朧とし、キャットのスマートな責めに抗する術もなかった。よがり声にかき消された空しい 言葉をかけながら、バットガールは快楽の海に消え入ろうとしていた。 (……ああ……もう……もう……ダ……メ)  その瞬間、バットガールの身体が伸び上がったまま大きく硬直し、そしてガクンッと腰を引きつらせた。  「あああああんッ!」  声をあげ、また姿勢を立て直す。  ガクンッ  「レベル・ファイブ……最後のレベルよ」  締め上げられた首はほぼ完全に酸素の供給を阻止していた。時折激しく動くと、呼吸路が確保されて 荒い息をつける。バットガールは朦朧とした頭で逃れる術を考えようとしていた。  「バットガール……スロットの周期が早くなってるわよ。でも次の周期であなたはおしまい」  言うなりほほに口付けてそれを優しく舌で舐め上げるキャットウーマン。右指でボデイースーツの 下から控えめに突起する身体の中心をはじいた。  「っんんんん!!」  耐えられず顎を突き上げてよがるバットガール。その瞬間、紅の唇の端をこぼれたヒロインの唾液の 白い筋がツッーと糸を引いて、顎の先から落ちた。それを左指で素早く救い上げた背後のキャットは、 それをスーパーヒロインの目の前で弄んでみせる。  「あらあら……もう限界なのねぇ……正義のセクシーヒロイン……いいのよ……我慢しなくて……地獄へ 堕ちればいいわ」  ますます激しくキャットはスーパーヒロインのうなじに吸い付く。それから股下より入れた右指で 突き立った秘部を、濡れたボディースーツの上から高速で振るわせた。後ろから彼女を攻め立てる キャットウーマンの黒いビニル質の手の動くままにバットガールの身体も揺さぶられ、首の縄をぐいぐいと 締め付けられて、引き戻される。バットガールは極度の酸欠から半ば白い目を剥いてよがっている。  「っああああんんん……はあああああんっ」  声をあげた瞬間、再び白い唾液の糸がスーパーヒロインの顎から伝った。がくがくとバットガールの 身体が痙攣し始めている。  「ふふふふふ……バットガール……これで終わりよ!」  キャットウーマンは左手でバットガールの尻の双球を分け入り薄地のコスチューム越しに、アナルへ指を 深く差し入れると同時に、右指でスーパーヒロインの身体の中心の突起をしごいた。  ガクンッ  「はああああアアアアアアアアアアアああんんんッ!!!」  スクリーンの前でバットガールは脚の指先を引きつらせて果てた。他方でスクリーンの中では、 セクシーヒロインがスロットの下がる寸前で跳び上がり、ちょうど逆上がりの要領で長い伸びやかな両足を 腕を真上から吊るしているロープに絡みついた。そして、その逆さに宙吊りとなった状態で、首もとの縄が 緩んだのを利用して拘束から逃れ、最後にブーツの尖ったヒールの先を擦り合わせて、手元の縄を断ち切り そのまま背中から落ちて受身をとって立ち上がった。この間数秒。この後、バットガールとキャットウーマンとは 格闘になるのだが、済んでのところで逃げられてしまった。部屋に残されたバットガールは回っているカメラを 押収して帰還した。  バットガールは達してしまった後の気だるさの中で、レベル5の先に待っていた世界のことをぼんやりと 考えた。  誘拐事件……ゴッサムシティー一の富豪、ホテル王チャールズ=リュップマンの令嬢ジェニファー=リュップマン ……通称ジェニー……十一歳になったばかりの美少女。  三月。ゴッサムが暖かくなってきた頃、突如勃発した事件に全米が大騒ぎすることになった。綿密な 調査の末に、バットガールはシティーの南の果てにある廃工場に当たりをつけた。誘拐犯はおそらく一人、 その犯行半径を絞り込んでいったところへ、手口のプロファイリングをバットガールなりに進めて手にした 結論である。夕方にオフィスから帰り着いてから、IQ200の知能を全力で稼動して推理を推し進めた。  春の夜。バットガールは廃工場へと忍び込んだ。月の光がボディースーツの動きとともに踊る。  「ああ……それで良い……気をつけろよ……これは秘密取引だ……サツに知らせやがったら承知しネエ……」  携帯電話を切った大柄な筋肉質の男は傍らの少女を見た。11歳。あどけないが、大きなその目の形は 整っており、その歳にしては驚くぐらい顔の輪郭が整っている。見つめられて視線を外すジェニファー。 男はゆっくりと座り、少女の青い瞳を見据えた。  「いよいよ取引が成立した……あんたの出荷日も決まったと言いたいところだが……すまないな ジェニー……あんたは俺の顔を知ってしまった」  男はゆらりと立ち上がり、ジェニファーを見下ろす。  「おまえ可愛いな……大切に育てられたんだろ」  少女は怯えながら首を振る。  「そうでもないのか?……まあそんなことはどうってことないんだ……」  男はデニム地のロングパンツのベルトに手をかけ、ゆっくりと外す。そして、チャックを下ろし、 パンツと下着とを同時に下ろした。  「イヤ……いやです」  言い放ち、ジェニーは一目散で駆ける。工場中に置かれた廃棄処分の重機の間を逃げまどう。 男は脱ぎかけたパンツを慌ててはきなおす。  「おいおい……待てよ……ジェニー……ハハハ」  男はしばらくは一緒になって追いかけっこをしていたが、やがて足を止め、じっと周りを見つめていた。  「ジェニー……影が見えているよ……そこにいるんだね」   すると、ある重機の陰で物音がした。  「そこかっ」  言うなり男は走り出し、ジェニーの後を追う。ジェニーは必死で逃げるが、そこは……廃棄物の詰まった ドラム缶で行き止まりになっていた。座り込む美少女。歩み寄る男。  「ゲームセットだね、ジェニー」  手を伸ばしかけたその瞬間のことである。  「お待ちなさい」  毅然と言い放つ女性の声が工場に響いた。  「チッ!サツか!?」  男はピストルを抜き、声の方向をうかがった。  工場は生産ラインを見守るために、天井近くにぐるりと工場を一周できるような柵つきの小さな回廊が 設けてある。非常灯表示で薄明るいその回廊の片隅に、女のシルエットが浮かんでいる。胸の膨らみ…… 引き締まったウェスト……そしてエロティックなヒップライン。  「バットガールか!?」  男はその方向へピストルを撃った。  「ご名答……トォーゥッ」  バットガールはそこから驚くべき跳躍を見せた。サテン地の真紅のマントがその全身を一瞬隠す。 その後、マントが晴れ、空中で彼女の総身が惜しげも無く非道な誘拐犯に曝された。光沢の浮かぶ紫紺の タイトなボディースーツ。白いベルト。白いエナメル質のロングブーツ。真紅のグローブ。跳躍に併せて、 彼女の身体の筋肉がボディースーツの下で蠢き、光沢が動く。  そして着地。男から十メートル。バットガールが脚蹴りをくわえようと大きくスライドした瞬間、 男の拳銃が少女の頭に突きつけられてるのに気づいた。  「ストーップ……ストップだ」  男は少女を引き寄せる。少女は泣いている。 「……グスッ……バットガール様ぁ」  ジェニーは泣きながら、尊敬するスーパーヒロインを熱のこもった上目遣いで見上げる。  「ジェニー……泣かなくて良いのよ……バットガールお姉さんが絶対助け出してあげるからね」  それから拳銃を少女に突きつけている卑劣な悪党を、キッと見据える。 「……悪党はやっつけないとね」 「エラい自信じゃねーか。分かってるんだろうなオマエの立場は」  「フフ……立場をわきまえていないのはあなたのほうよ」  真紅の仮面の下で不敵に微笑む金髪のセクシーヒロイン。   「何を!?」  と男が改めてバットガールを見ようとすると、フッとスーパーヒロインの姿は消えていた。 有り得ネエ……男は困惑し、周囲をとりつかれたようにめくら滅法見回した。汗が額に浮かぶ。 畜生、どこ行った……と上を見上げたその瞬間。  「トォーウッ」  バットガールの硬いヒール地のブーツが目の先に飛び込んできた。  グワッシャーンッ  男は蹴りを顔面に浴び、後ろへと吹き飛んだ。拳銃がくるくると回って遠くへと弾き飛ばされる。 バットガールは天井の鉄骨をつかんで埃のついた手をパンパンとはらって、吹き飛ばされ朦朧としている 男に近づいていった。  「バットガールお姉さまぁーッ」  ジェニーがしゃくりあげながらバットガールへと駆け寄る。バットガールは腰を下げて、彼女の頭を 撫でてやった。  「怖かったでしょう……もう大丈夫よ」  そして立ち上がり、仰向きに倒れこんでしきりに頭を振って意識を取り戻そうとしている誘拐犯へと 近づいた。  パシュウッ  乾いた空気音。その瞬間、バットガールは腿に激しい痛みを感じた。見ると、左腿の後ろ側の ボディースーツに小さな穴が開き、そこから血が滲んでいるようだ。そこを手で抑えながら、びっこを 引きつつあたりを見回す……ちょうどバットガールの現れた辺り、非常灯の下に背の高い人影がある。 着ているのはトレンチコートだろうか。なお仔細に見つめようと目を凝らそうとするが、焦点が定まらない。 バットガールは大きくよろけた。 「……くっ……はあ……はあ」 心配そうにバットガールを見つめるジェニーの顔……それも歪んだ……堪らず、スーパーヒロインは左膝を ついて、右膝を立てる半座りの形となった。苦しそうに赤いグローブで額の汗をぬぐう、息遣いが荒くなり 始める。 (こ……これは……麻酔……薬……の……効果)  やがて、前に手をつき、バットガールは四つんばいの姿勢になる。そこへゆらりと人影が前かがみの バットガールの上に重なった。  バキーッ!!  「ぐはあっ!!……うぐぅ……んんっ」  背中を鉄骨で殴られ、スーパーヒロインは押しつぶされた格好となり、苦しげに身を捩ってうめいた。 たまたま仰向けになった時に、鉄骨を振り落とそうとする男の歪んだ顔と目が合った。  「よくも……やってくれたよなあ」   バキーッ!!  「っ!!……ウグッ……ぐはッ……はあはあはあ」  今度は腹への一撃。鈍い痛みが全身を麻痺させる。セクシーヒロインは何も考えられない。荒い呼吸に 合わせて、ボディースーツが上下し、光沢がヒロインの少し盛り上がった急所を照らす。  「この野郎ッ」  男は鉄骨をその急所の当たりへ振り下ろす。  バキーッ!!  「ッああああああああああアアアアっ!!!」  くぐもった悲鳴をあげ、のた打ち回るバットガール。背を向けると、尻の切れ目に沿ったボディースーツの 光沢が動く。バットガールは麻酔剤で朦朧とする頭と、全身の痛みと戦いながら、どうにか四つんばいと なり、マスクの下の焦点の合わない瞳で誘拐犯を見ようとした。  ドカーッ!!  男の蹴りがバットガールの顎に入った。  「ッ!!……うぐぅ……んんん」  後ろざまへひっくり返り仰向けになった後、身を捩るバットガール。もう気を失いそうだったが、 ジェニファーを守らなくては……という義務心だけが彼女を辛うじて意識のうちにとどめていた。 背をゆっくりと向け、手をつき、四つんばいとなる。しかし、その瞬間、左腕がガクンッと体を支えるのに 失敗して、バットガールの身体は前のめりにつんのめる。  「はあはあ……はあ」  歯を食いしばり、左腕を再びつきたて、そして右脚を立て、左脚を立てようとする……男はそのさまを 背後から半笑いで見ている……彼女のおぼつかないしぐさのたびにボディースーツのやや食い込んだ彼女の 尻がエロティックにくねり、光沢が滑るさまを鑑賞していた。だが、そろそろだ。  「死ねやッ……バットガール!!」  男は鉄骨を振り上げ、彼女の首と後頭部めがけて振り下ろした。  バキーッ!!  「ッ……ううんん」  低いくぐもったスーパーヒロインの声が工場に響き、バットガールはそのまま前へと乗り出すように 倒れた。あたかも、その先にいる怯えた少女を守ろうとするかのように。うつ伏せのヒロイン。  工場の床のじゃりじゃりとした感触でバットガールは目を覚ました。が、目を開くより先に、自分の 状況を分析した。後ろ手で硬い紐、そして膝を折り曲げるようにブーツの足首のところで硬い紐…… 計二箇所で拘束され、彼女は仰向けの姿勢だ。紐の縛り方が結構凝っているので、少し時間がかかりそうだ。 そして目を開く。ジェニファーがそれに気づき、うれしそうな心配そうな、そして泣きそうな顔をしている。 彼女もまた縛られている。後ろ手に、そして前に伸ばした足の先に。衣服の乱れはない。彼女は無事のようだ。 バットガールは窮屈な姿勢だったが精一杯微笑んで見せた。  「目が醒めたかい?」  バットガールの目の前に、ジェニファーの右隣に座った卑劣漢がゆっくりと立ち上がる。手にはピストルと 細い紐を持っている。  「提案があるのよ……あなたはわたしを捕まえた……その代わりにジェニーを放してあげて」  「バーカ……金が手に入らネエだろそれじゃ」  男はゆっくりとバットガールへと近づいた。それから男はバットガールの背後に回り、その胸に手を置いた。  「ッ!……や……止めなさい……子どもが……見て……るじゃな……い」  低い声で囁くバットガール。男はお構いなしに、左手で胸をもみ、右手の拳銃をバットガールの首筋に 滑らせた。背筋にも伝わる冷たい感触。  「フンッ……貴様はオレに最大の屈辱を与えようとした……女にこてんぱんにされる粗野なバカ男の 役回りをオレにさせようとした……あのガキの前でな」  男の拳銃は首筋を愛撫してからバットガールの頬を伝う。バットガールの汗が逆の頬を伝わっておちた。  「仕返しって……こ……と? でも……そんなの……」  赤いマスクの下の目が右上の男の目を捕らえる。吸い込まれそうな瞳だ。  「……」  男は答えず、胸を揉む手を早めた。バットガールはジェニファーをちらりと見た。彼女は何が起こっているのか わからない様子だ……だが、このままではいずれ知ってしまうだろう。催淫剤の残っている彼女の身体は 依然として敏感になっていた、理性と関わりなく。男の拳銃はマスクの下の目を撫で、バットガールは目を つぶった。アイシャドウ。それから拳銃は濃い紅の唇を発見し、それを弄ぶ。  「舐めろ」  男ははき捨てるように言いつつ、トリガーに力をこめる素振りをした。  一旦目をつぶったバットガールは、決心したように目を開き、その高貴な口を少し開いて拳銃を受け入れた。 それから、控えめにその先を舐め始めた。土の匂いがした。  「もっと舌を使え、音を立てろ、男のモノをしゃぶるようにやるんだ」  バットガールは口の動きを止め、しばらく逡巡する素振りを見せたが、選択肢は他に無い。やがて、 スーパーヒロインの紅の舌が妖艶にひらめき、拳銃と戯れ始めた。濡れた唇の端の控えめな光沢。 チャプチャプと唾の音が立ち始め、スーパーヒロインは口をすぼめて銃身を吸うことまでした。 目が閉じられ頬がそのために一瞬こける美女の顔に、男は深く欲情した。そして、男は左手の胸を揉む 手つきを早めた。  「スーパーヒロインさんは、男のアレを吸うのが得意らしいなあ」  男はわざとジェニーに聞こえるように声をあげた。ジェニーの身体がビクッと震える……それを目の端で 捕らえ、バットガールはこれまでにない羞恥心を感じた。  「ありゃ……バットガールさんの乳首が硬くなってきましたよぉ」  男はジェニーを意識して続ける。ジェニーは顔を赤らめ下を向いてしまった。してみると、ジェニーにも 徐々に目の前の事態の意味が分かってきたことになる。男が先の濡れた拳銃を口から引き離すと、 バットガールは初めて弱音を吐いた。 「イ……イヤッ……も……もう……止……めて……」  いやいやをするバットガール。しかし、それは男の嗜虐心をくすぐるだけに終わった。男は拳銃を首筋から 滑らせる。唾液がバットガールの身体に跡をつけてゆく。そして、胸のところで、拳銃の先でまだそれほど 立ってはいない乳首と思しきところを責め始める。バットガールの低い呼吸音が少しずつ早くなる。 声を立てないようにセクシーヒロインは歯を食いしばり耐えている。少しずつボディースーツの下から 突き出してきた乳首を、拳銃の先で右へ左へと揺さぶる。 「……くふう……はんっ……」  声が鼻音に混じり始める、再びジェニーがびくんと反応する、泣きそうな顔をしてヒロインの陵辱を 見守っている。 (見……見ないで……ジェニー……お願……い)  だが、バットガールはジェニーに見られている憧れのスーパーヒロインの痴態のことを考えると、 倒錯した官能に陥った。唇が歪む癖が始まる。銃口が最後に大きく乳首をはじく。 「あんッ……ん」  その瞬間、後ろ手に縛られ、後ろ足を縛られた格好のヒロインは腰を少しせり上げた。ジェニーが目を 逸らした。バットガールの眉根が寄せられ、切なげに目をつぶる。 (ああ……ジェニー……バットガールを……許……して……でも……あなたの……こと……は…… わた……し……が……守る……から……あんっ) 「くくく……アーハハハハハッ……バットガールさんよ、良いのかなあ……正義の味方が少女の前で よがっちゃって……おいジェニー、この正義の味方はなあ、おまえが危ないってのに気持ちいいって 言ってるんだよ」 「クスンッ……バットガール様ぁ」  泣きじゃくるジェニー。バットガールはその声に切なげに身を捩った。 (ああ……バットガール……あなたはスーパーヒロイン失格……少女に見つめ……られて…… 感じるなん……て……あん……)  乳首は今やツンッと突き立ち、コスチュームをそこへ向けて引っ張っている。光沢が蠢く。 バットガールは下唇をかんで、低いエロティックな鼻にかかった吐息を上げつづけてる。銃口はバストを 降り、腹をまさぐったあと、手と足とを後ろ手縛られているスーパーヒロインの敏感な下半身に迫った。 生地の上を滑りながら。拳銃がバットガールの最も敏感な場所に触れたとき、再びセクシーヒロインの腰が 跳ね、そして切なげにくねった。男は満足して銃を豊満な下半身から離した。 「さて、ショーはこれからだ。この紐がなんか分かるか? よく見てるんだ、ジェニー。おまえの尊敬する 守り神様の恥ずかしい姿をなあ」  「なにを……する……気……な……の」  切なげに息をつきながらバットガールはたずねる。男は細い紐を、手と足とを後ろで縛られ少し腰を 浮かせているバットガールの股のラインに沿って当てた。そして、押し付けた。彼女の身体がその線に 沿って二つに分かれる。背中の終わりから始まる尻の切れ目から、アナルを通過し、脚の間を沿って走り、 彼女の性器、恥丘へ。彼女のしなやかな凶器とも言える全身のもっともか弱いラインを沿って紐は走る。 彼女の肉体はボディースーツの下で紐によって抑え付けられてへこんだ。そしてゆっくりと男は紐を前後へと 滑らせた。 「ッ……くふう」  バットガールは腰をくねらせた。紐で区切られた尻の割れ目のラインがジェニーの目に飛び込む。 ジェニーは悲しんでいるように見えたが、同時に憧れのスーパーヒロインのセクシーな姿態に魅せられ始めていた。 男はまた紐をしごいた。上へ一旦引き上げる、ロープをその股の間に食い込ませる。 「はあんっ……ああ」  バットガールは顔をのけぞらせてよがった。体に残った催淫剤がセクシーヒロインの理性を快楽の淵へ 落とそうとしていた。食いしばっていた下唇が少しずつほどけていく。そして、ロープは下へ。 アナルから尻の切れ目の先へと引き上げられる。スパンデクス地のボディースーツの擦れた音を立てながら。 食い込む紐は、バットガールの身体の中へと、彼女のスーツを引き入れる。スパンデクスの滑らかな生地が セクシーヒロインの身体の中心を責める。 「くはあっ……ううん……やめ……て……おね……がい……アあんっ」  淫らな声をあげてしまうバットガール。ジェニファーは目が離せなかった。セクシーなヒロインの 悩ましげな動き、そしてあまりにいやらしい紐の動き。そんなジェニーの瞳がバットガールと出会った。 バットガールは正義のヒロインである自分がジャニーの中でどう身を捩じらせ、卑劣な紐の動きに反応して 見えるかを考えた……折り曲げられて隆起した膝、ボディースーツの下に潜む肉体の動きは快楽の波の 来るたび、光沢を滑らせる、胸のふくらみはいよいよ突起で強調され、少女の目にもそれがスーツを 引っ張っているのが分かるはずだ……そして…… 「あーあ、スーパーヒロインさんが濡らしちゃってるなあ。ジェニー……これはね、気持ちよくて おもらししちゃったようなもんだ……あーあ……エッチだなあ」  そういって、紐を止めた男は、バットガールの股のところのボディースーツの端をつまみ、 濡れているところを指先で弄んだ。にちゃにちゃ……と湿った音が聞こえる。 「っああああああああんんん……はああああんん……い……いや……も……もう……ああああんんんっ!」  バットガールは腰を浮かせてよがった。恰もジェニーに自分のあさましい動物の部分を見てもらうために 。スーパーヒロインの動物の部分を見てもらおうとするかのように。バットガールはジェニーの瞳に映る 自分のことを考えた。それは悪党の責めの気持ちよさに股を濡らし、その濡れた紺色のボディースーツの 下から、ヘアや性器を露にしている、腰をくねらせる百戦錬磨のスーパーヒロインの姿だった。 紐がまた身体の中心を抑え付けるように滑る……アナルと性器とを循環する……尻の切れ目まで紐が走る。 それに併せて、ヒロインは顎を突き出してよがる。罪悪感と倒錯した快楽に突き動かされて。 「っあああああアアアああああん……ジェニー……おねが……い……バットガー……ルの……こんな…… 姿……を……見ない……で……」 ツツッー。紐が滑る。股の切れ目に沿って、既に濡れたコスチュームを身体の内側へ滑り込ませながら。 「っはあああああああアアアあああん……あん……おね……が……い……んんっ」  バットガールの身体が反り返ったまま引きつった。全身の筋肉がスーツの下で強張る。ジェニーはその 美しさに見とれた。 「くくく」  紐が滑る。たっぷりと尻の頭まで引き寄せられる。そして、前へ紐は内側へと生地を飲み込みながら 獲物を苦しめる。 「くふうん……ああああああんんッ……はあ」  また腰を浮かせてしまうスーパーヒロイン。反り返った頭の先では一筋の透明の糸が口の端から こぼれて、鼻筋を過ぎ、赤いマスクを濡らした。 「そろそろフィニッシュかな」  男は紐を高速に動かせた。バットガールの身体が跳ねる。 「ああああああああんんんんっ……そん……な……フィニッ……シュ……なん……て……くふう…… ああああんん……はあアアアアあんんッ!」  男は仰け反ったスーパーヒロインの妖艶な美しさに見とれた。突き上げられた顎、歪められた真紅の唇、 赤いマスクの下の閉じられた目とアイシャドウ。そして床の上で波打つ金髪。顔は上気して赤く、額には 汗が浮かんでいる。そして、コスチュームをはみだしそうな大きな胸……突き立った乳首はその周囲の ボディースーツを一転に集めて光沢を寄せている。そしてウェストを限りなく締め付けている白い皮の ベルト。快楽で引きつり突き上げられた腰はくねってる。そして紺色に濡れ、紐で区切られた股の ボディースーツ。その下のはちきれんばかりの腿の膨らみ。そして男は紐をじらすように尻の切れ目から アナル、そして性器へと滑らせた。 「くっ……ううんん……あああああああああああんんっ!」  バットガールは一際高い声をあげる。ジェニーの目に映るスーパーヒロインのあさましい痴態を 浮かべながら。そして、その瞬間、バットガールの腕が素早く動き、男の頭を両手でつかむと床に 叩きつけた。そして、折り曲げられた膝を伸ばすと立ち上がり、男の頭をヒールで踏みつけた。 「フィニッシュはあなたの方よ」  冷たい声で言い放ち、横になってあがいてる男に踵落しを決めた。そして、男は気を失った。 バットガールはジェニーの拘束を解き、警察に電話した。バットガールはジェニファーの目を見れなかった。 「……ごめんなさい、ジェニー」 「えっ」 「ごめんなさい、ジェニー……お姉さんのことは軽蔑してもいいのよ」  バットガールはジェニーに背を向けて呟いた。 「バットガールお姉さまぁ」  ジェニーは泣きながらそう呼ぶと、バットガールのボディースーツに包まれた伸びやかな脚にしがみついた。 「……ジェニー」 「だって。お姉さまはわたしを救ってくれたんだもん。悪者の拷問にも負けないであいつをやっつけて くれたんだもん。バットガールは正義の味方だもん」 「ジェニー」  そう呟くと、泣きそうになるのを堪えながらバットガールはジェニーの頭を撫でた。 「警察が来たみたい、ジェニファー、じゃあね」 「うん、またねバットガールお姉さま」  バットガールは赤いサイレンを見届けて工場を後にした。サイレンを聞きつけた野次馬が集まる中で 刑事の男たちの姿がパトカーから現れた。  「あの子、ジェニファーちゃんじゃないか」  「そうだ、ジェニファーだ。無事みたいだ、良かった良かった」  「バットガールの活躍みたいだぜ、さっきあちらのほうへ駆けていくのを見たんだ」  「おお、ジェニファーちゃん、可愛いなあ」  「いやーめでたいなあ」 野次馬達は刑事に先駆けてジェニーのところへ集まった。その群れの中で 黒いトレンチコートの女がジェニーの肩に優しく手を置いた。ジェニーは手の方を微笑みながら見上げた。 ***つづく