平成13年6月8日・初版

バットガール最大の危機・第9章/A(S)・著

キャットウーマンズ ワールド (前編)  バットガールは目を閉じたまま、自分が覚醒したことに気づいた。  急いで記憶を辿る。ジェニーが捕われていることをパトロール先の狙撃手から聞きだし、 救出に向かった。そこでキャットウーマンと格闘して勝利を収めた。 しかし、ジェニーを助けようとしたところで、キャットウーマンと彼女の罠に堕ちたのだった。 そして、ジェニーの手による悪夢のように淫猥な責め。達することを封じられ、苦しいほどの 快感の中でバットガールは記憶を失ったのだった。  ゆっくりと目を開く。薄暗い部屋。バットガールが驚いたことに、彼女は脚も手も拘束 されていない。そして、コスチュームは新品同様のものに変えられていた。妖しい光沢が 緩やかに寝返りをうち目を覚ましつつあるスーパーヒロインの紫の身体中を蠢く。 真紅のマスクの下でゆっくりと濃いアイシャドウに彩られた目蓋が上がり、青く水晶のような 瞳が世界を捉えた。このまま逃げ出せるのだろうか? 部屋は広く作られてはいるが、出口は 薄い真四角の光を浮かべて確かに存在する。もちろん罠に違いない。だが、バットガールとし ては何もしないわけにはいかなかった。  「……ッううん」  四つんばいに頭を悩ましげに振り、肩に力をこめてバットガールは右膝を立て、それを支えに して手を離し、左脚を立てて、ゆっくりと立ち上がった。  「っう」  僅かに世界が歪み、こめかみに痛みが走った。まだ決して完調ではない。バットガールは 左手のややまくれてしまっている真紅のグローブを直し、マスクをまっすぐにしてから、 少し肩から前にかかっていた真紅のマントをさっと背中へ払い落とした。 そして、腰に手を充てて胸を張った。……バットガール、たとえ、卑劣な罠が待ち構えていても あなたは行かなければならない。胸元のふくらみに沿って光沢が走り、紫のボディースーツの 中で伸びやかな身体が躍動する。勇気が湧いてきた。  そこへ部屋の外から聞きなれた宿敵の鼻にかかった声が響いてきた。部下の男と話している ようだ。部屋の壁側へと音をたてずに走り、そっと聞き耳を立てる。  「……なさい? もうあの子に用はないのだから」  「……しかし……バットガールを捕らえるのに功労のあったのですよ?」  「フンっ……いくら悪ぶってみても所詮は付け焼刃……いつ情にほだされて、わたしたちを 裏切るか分からないわ……」  「……」  「……ニューオウ……いいこと? これは命令なのよ……ジェニファー=リュップマンを 始末なさいな……簡単でしょ……アーハハハハッ」  「ハッ」  「待ちなさい!!」  バットガールは出口から姿をあらわし、腰に手を充てたポーズでキッとキャットウーマンを 見据えた。  「あら? お目覚めのようね?」  キャットウーマンが妙に間延びした声で答える間に、彼女の忠実なしもべがバットガール めがけて猛然と駆け出していった。  「食らえッ!バットガール」  肩からバットガールにぶつかろうとした彼の試みは、バットガールの軽やかな跳躍によって あえなくかわされ、彼は猛烈な勢いで壁へと衝突することになった。  どがぁっ!!  「ぐはぁっ!」  男は肩を痛打して他方の手でそれを撫でまわしている。やがて、目に今までになく凶暴な 光を帯びてスーパーヒロインの方を向いた。  「あら? 怒らせちゃったかしら?」  平然と微笑みながら男を見つめるバットガール。キャットウーマンに背中をとられないよう、 部屋の中へと後ろ退りしながら、男の次の攻撃に備えた。部屋の中ほどまで来たところで、 バットガールは再び腰に手を充て、白いエナメル質のロングブーツに包まれた右脚をそっと 前に出して悠然とポーズをとった。    「畜生ッ、余裕かましやがって!!」  男の腹立ちは頂点に達し、一気に間合いを詰めてバットガールへとパンチを浴びせようと した。だが……  ぐはぁっ!!!  男の粗忽な攻撃に敗れるようなバットガールではなかった。男のリーチよりもはるかに長い 彼女の右脚が伸び上がり、光のスピードで男の顔に達した。吹き飛ばされた男は床に倒れた まま起き上がることは無かった。  「ニャーオウッ……フン……時間稼ぎにもなりゃしない」  唾を倒れた男の頬に吐き、右手のツメをいとおしげに眺めるキャットウーマン。その手を バットガールにかざしてみせる。光沢がネイルを走る。  「キャットウーマン……あなたジェニーをどうするつもりなの?」  「……あなたってどこまでお人良しなのかしら」  笑みを浮かべてキャットウーマン。  「絶対に許さないわよ……あなたの粗忽な子分どもとジェニーを一緒にしないで!」  「ニャーオウ……その上お節介ですらある」  「言いなさい! キャットウーマン! ジェニーをどうする気?」  「さあ?」  「……答え次第では決して許さない」  「それに、身の程知らずなのね……良いわ……ジェニーには死んでもらうつもり」  「あの子はあなたを信じてるのよ!」  「ニャーオウッ!!!……奇麗事はもう結構!……あなた自身を守ることを考えなさいッ!!」  言うなりキャットウーマンは素早く腕を振り払う素振りをした。  「ッ!……これ……は……」  見るとバットガールの紫のボディースーツにいくつもの細かいトゲが刺さっている。 膨らんだ胸にトゲ、左腕にトゲ、白いベルトの上の腹部にトゲ、左腿にトゲ……そして 白い首筋に刺さったトゲからは早くも真紅の細い血が糸を引いてボディースーツへと消え入って いる。 左腿に刺さったトゲからもボディースーツを通して血が滲み始めているのが分かる。キャット ウーマンの狙い済ました一払いでバットガールの全身を細かなトゲが貫いた。  「フフ……チャンピオンに敬意を表して、ちょっとしたハンディだよ」  「……ハン……ディ」  呟きながらバットガールは視界が朦朧とし始めたのに気づいた。麻酔? 真紅のマスクの下で 敵を厳しく見つめていたはずの眼がとろんとしてきた。立っている脚元が揺らぎだし、奇妙な 浮遊感に囚われ出した。 (い……いけない……これじゃ、キャットウーマンの思うツボじゃな……い)  バットガールは永遠に失われようとする意識を辛うじて保ちながら、眼差しをきりりと強めて やや前傾姿勢にファイティングポーズをとろうとした。が……ポーズをとるより早くキャット ウーマンの稲妻のようなツメが一閃した。 「ッああ!!」  バットガールの紫紺のスパンデクス地のボディースーツが左肩から腹部中央にかけて切り 裂かれ、その狭間からスーパーヒロインの柔肌が血に染まっているのが見えた。バットガールは 顔をしかめて紅のグローブで覆われた右手で左肩を押さえる。そこへキャットウーマンの腕が うなり、バットガールの顎を拳が捉えた。 バキーッ!! 「ッうッ!!」  殴られた方向へ顎を突き出してのけぞった後に、回復まで数秒。バットガールの意識は無意識 との境を綱渡りしつづけている。そこへ更なるキャットウーマンの右ストレートが決まる。 今度は脚元が耐えられなくなって、人形のように左へ体ごと吹き飛ばされるバットガール。 リノニウムの床に横たわるバットガールの顔はあれほどのパンチにも少しも崩れない整った 優雅さを見せてはいたが、マスクの下のその正義の瞳の光は今にも消え入りそうに、とろんと している。やがてスーパーヒロインは四肢をゆったりと反転させると、四つんばいの姿勢から 立ち上がろうとした。 寝返りをうつときに、部屋の光がバットガールの紫紺のボディースーツに包まれた全身を 悩ましく彩る。彼女の鍛えぬかれた身体がまるで濡れているように光沢に煌き、バットガールの ボディーラインを強調する。 悪の攻撃に苦しげに耐えるスーパーヒロイン……キャットウーマンは天井のきらりと光る一角に 速やかな一瞥を送ると、どうにか立ち上がろうとしている健気な正義の味方の身辺へと歩を進め た。 バットガールは引っかかれた左肩をやや不自然に落としながら、右腕一本でキャットウーマンの 猛攻を防ごうと絶望的な姿勢をとった。キャットウーマンはしたりと笑いながら、ベルトの 後ろに垂らしていたチェーンを手にとった。「じゃらり」と言わせながらそれを重々しく振り 上げ、そして投石器のような正確さで麻酔針を打ち込まれたスーパーヒロインへと振り下ろす。 バシャーンッ!! 「うッ!!!!」  正しくチェーンの振り落とされた方向へと、スーパーヒロインの体は膝から前かがみに崩れ 落ちた。左脚は辛うじて立て膝を立てているが、右膝は床につけてバットガールの身体は 前かがみのままチェーンの下で細かく震えている。金髪のショートヘアが前に垂れ、顔の様子が 陰に隠れて見えない。 地獄は再び繰り返す……キャットウーマンはバットガールの背中にかかる赤いマントの上に圧し 掛かっていた銀色のチェーンをまた引き戻し、天罰を下さんとする古代ギリシアの神のように無 抵抗のセクシーヒロインの上へと振り下ろした。 落雷のような音が部屋に響き渡り、続く沈黙の中でゆっくりとバットガールの身体は、立て膝と いう橋頭堡をも失い、優雅に地へと崩れ落ちた。うつ伏せのバットガールは顔を横に向けている が乱れた髪で隠されており、今は真紅のマスクしか見えない。 キャットウーマンはゆっくりと近寄り、自らが倒した美麗なスーパーヒロインの乱れた髪を 丹念に分けてやる。キャットウーマンの手の下で、バットガールの赤いマスクの下の硬く 瞑られた濃いアイシャドウの目蓋がよみがえり、それがとても細かく震えているのが分かった ……これだけ打ちのめされてまだ残る僅かな力で再起しようとするゴッサムの天使。 そして真紅の濡れた口元。ほんのわずかに開いて息をしている。そして高く気品のある鼻に、 勝気にも見える時がある控えめな頬骨。その先の耳に真紅のマスクの糸がかかっている。 (バットガール……あなたは誰なのかしら……なぜ、わたしたちと闘おうとするのかしら…… こんなに苦しみながら……)  キャットウーマンは誰にも見せたことの無い優しい眼差しで無抵抗なライバルのあまりに 美しい顔を見つめた。 しかし、それは一瞬だった。やがてキャットウーマンは静かに寝入ろうとしていたスーパー ヒロインのぐったりと投げ出された右手を手にとり、弛緩した身体を起き上がらせようとした。 キャットウーマンに無理に右手を引き上げられ、パペットのように生気なく立ち上がるバット ガール。 「ニャーオウッ……さっきの威勢はどうしたんだい?……まだまだ愉しませておくれよ」  そういうと、キャットウーマンはバットガールを面と向かわせて、空いている手で張り手を 食らわせた。 「っう……うん……ッ!」  覚醒とともに、キャットウーマンが捕まえていた右手に生気を感じ取れた。すぐに手を離して やると、一瞬バットガールの身体はまたくずおれそうになったが、すぐに復帰してファイティン グポーズをとる。再びスーパーヒロインのタイトなボディースーツが光沢を走らせ躍動し始める。 だが、麻酔剤が身体に浸透し、殴られて意識も朦朧としているバットガールはキャットウーマン の敵ではなかった。素早く背中に回ると、先ほどのチェーンを首の前へとさっとかけ、背中から 急速に締め上げた。 バットガールよりやや背の高いキャットウーマンはそれを手元へと引き寄せようとしたので、 結果としてスーパーヒロインの身体は少しずつ持ち上がり始めた。白いエナメルのロングブーツ が少しずつ地から離れていこうとしている。 「ッうグッ……ああああッ!」  切なげに眉根を寄せ総力を挙げて地獄の罠から逃れようとするバットガール……脚を前後ろへ と激しく揺さぶりながら全身で抵抗する。キャットウーマンは、非力な抵抗を無視してバット ガールを首から吊り上げたまま、部屋の隅へと向かう。そこには大きな姿見が鈍い光を放ってい た。 近づくにつれて、まずはバットガールの白いエナメルのブーツとその裏の黒いヒール地が鏡に 映し出され、彼女の紫紺のボディースーツが光沢で輝くさまが映し出され、白く大きいセクシー なベルトが映り、タイトな生地を更にタイトにしている大きな胸の膨らみが映り、そして最後に スーパーヒロインの首にかかった銀色の死の罠とそこから逃れようと必死な真紅のマスクの バットガールの顔が映った。 「ニャーオウッ……よく自分の姿を見ておきなさい……敵の手の中で静かに息絶えていく バットガール自身の姿を……あなたも気づいてると思うけれど……あなたの苦しむ姿って とってもセクシーなんだから……ククク」  耳元で暖かい息を吹きかけながら淫靡に囁くキャットウーマン……彼女はこの状況を大変 愉しんでいる。 バットガールは朦朧とする意識の中で、キャットウーマンの悪魔の囁きを耳にした。そして 思わず鏡の中の自分を見てしまった。 紅のグローブで包まれた両手を首に回されたチェーンに掛けて引き剥がそうとしている。 逃れようとする全身運動の中で彼女の身体中の筋肉がタイトなボディースーツの下で 盛り上がり、光沢とともに踊っている。 引き締まったウェストにアクセントとなる白い革ベルト。そしてすらりと長い足を更に長く 見せる白いロングブーツ。それから自分を見つめている眼差しを覆うりりしい赤いマスク。 それが、悪の手の内に落ちようとしてもがいている。 切なく寄せられた眉根、普段は引き締まった真紅の口元が死を予感して僅かに開いている。 敢然と運命と闘っているようでいてそれに媚びているような矛盾した自分の整いすぎた顔。 そのすべてが、この苦しみを快楽に変えるべくバットガール自身で用意してきた装置の ような気がしてならなかった。 「ぅうッッ……ン……ああッ!」  苦しさのあまり思わず口にしたうめき声も、なんだかよがり声のように聞こえなくも無い。 そんな自分の声を聞いてますます倒錯した思いに捕われ始めるスーパーヒロイン。ますます 酸素が不足して朦朧としてきたバットガールは自分が戦っていることも忘れようとしていた。 苦しみを顔に出すとそれが鏡に映り、セクシーなバットガール自身の姿に変わる。卑劣な 悪の手でいたぶられるスーパーヒロインのセクシーな苦悶……そして、今度は自分の苦しみを 意識してそれを演じ始める。キャットウーマンのシナリオどおりにバットガールは演技を はじめる。 「っううう……はああんッ……ああッ!!!」  顔を仰け反らせて顎を出して苦しむバットガール……しかし、キャットウーマンは彼女の 乳首がタイトなボディースーツの下からつんと立っているのを見逃さなかった。少し鏡へと 歩みを進めてそれを鏡に押し付ける。スーパーヒロインの胸の突起が鏡面に触れ、ゆっくりと そして柔らかにくねる。 「ッはああ……くうッ……くうんん」  切なげな苦悶を浮かべるセクシーヒロイン。 (……い、いけない……首をしめられてピンチに陥っているのに……こ……こん…な)  だが薄目を開いて見ると、チェーンの下でうっとりするような吐息を吐いているセクシーな 正義のヒロインの姿がある。既に彼女の手に力は入っていない。目蓋は細かく震え、時折 白目がちになる。視野はぼやけ頭の中は更に朦朧としている。 「ッあああああ!」  甲高い声をあげ、バットガールの両手は静かに垂れ下がった。それと同時にキャットウーマン はチェーンを緩めると、バットガールの身体はドサリと音を立て地に付き、そのまま前かがみに なだらかに崩れ落ちた。 キャットウーマンは前かがみに倒れているスーパーヒロインの肩を足先で向こう側へと押しやっ た。 「……ううん」  バットガールの鼻にかかったかすかなうめき声。それから重なり合っている脚元をやはり足で 開いてやった。バットガールはキャットウーマンの足の元で紫紺のボディースーツに包まれた パーフェクトな身体を仰向けに広げた。 キャットウーマンはバットガールの脚元へと周り、膝をついてその下半身に注目した。倒れて いるスーパーヒロインの膝を曲げて両足を立てて、それを左右に開く。そして股間に触れる。 紫紺のスーツの上からでも温かさが伝わってくる。 キャットウーマンはバットガールが気絶した折に、ボディースーツの下に透明のT−バックの パンティをはかせていたから、直接的には分からない。分からないが、しかし何度も触っていると 湿った音がかすかに聞こえてくる……やはり、バットガールは濡れている。 鏡の中のバットガール自身の苦悶に反応したに違いない。思ったとおりだ。 そう確信して膝を戻そうとした瞬間のことだった。唐突にバットガールはがばりと起き上がり、 自分の首もとのチェーンを手にとると目の前のキャットウーマンの首にかけ、さっと背後を 取って締め上げた。 「覚悟なさい! キャットウーマン」 「ッぐうう……」 「わたしは負けるわけにはいかないの……ジェニーを助けるまではね」  笑みを浮かべてスーパーヒロインは言う。ぐいっと手の力を強める。 「グウウウッ……本……当にあんたは……お人よしだ……よ」 「あら、まだそんな減らず口を叩けたのかしら? 鏡でも見てたら? でもあなた程度の顔じゃ 面白くも何とも無いでしょうけど……フフ」 「ッグウウウ……そんなこと言って……あとで……後悔するよ」  そう言いながらキャットウーマンは片手で背中を探ると、薄いカードを取り出し、その上に ついていたスイッチの一つを押した。 ヴィーーーーーン。 微弱なモーター音がキャットウーマンの背中で響いた。 「ッ!! こ……これ……」  チェーンから手を離したバットガールは信じられないと言うように振り向いたキャット ウーマンの悪魔の笑みを見た。 「ニャーオウッ……保険をかけておいてよかったよ」  首を摩りながら、ゆっくりと立ち上がり前かがみのスーパーヒロインを憎憎しげに蹴り 飛ばした。 スジャーンッ 大きな物音がして、バットガールの身体が吹き飛ぶ。横向きで床に倒れ右脚はあげたままで キャットウーマンにスーツのヒップの切れ目を見せる格好となった。バットガールは股間を 両手で押さえている。 「ッぐはあ……ああああああんんんんッ!!」  目を堅く閉じ、歯を食いしばり、股間を襲う強烈な衝撃を必死に堪えているバットガール。 絶頂に達するのを禁じられマグマのように意識の底に溜まっていた快楽の残りかすが一気に バットガールに襲い掛かるのを感じる。 「うんッ……ぐ……あはあああんんッ!!」 「ニャーオウッ……あんたにはかせた透明のT−バックだけどね、超低周波が敏感な部分に 流れるようになってる……」  言うなりガバッと仰向きのスーパーヒロインの上に跨る。そして、その宿敵の赤く上気して 涙の浮かぶ顔を右手でしっかりと押さえて言う。 「わたしを辱めた罰は受けてもらうよ。正義の味方さん。あんたは達することができない地獄を 彷徨いつづけるが良いさ」  赤いマスクの下でスーパーヒロインの潤んだ眼差しがキャットウーマンを見つめるが、すぐに 自分の内側に渦巻く地獄の快楽と直面させられて目を瞑る。 「はあはあ……ひゃあああああああああああああんんんッ!」  バットガールの腰がぐっと浮かび、ブリッヂの姿勢になった。全身の筋肉が硬直し、例えば 腿の辺りなどタイトなボディースーツが張り裂けそうになる。キャットウーマンはヒロインを 下半身の側から眺め、その紫紺のスーツ越しに見える恥骨の膨らみを愉しんでいた。 「くうう……ああん」  キャットウーマンのシナリオどおりにトラップにおちてしまった自分が歯がゆいのだろうか… …バットガールは白い前歯を見せて濡れた下唇を噛み締めて声をこもらせようとした。 が、絶えず下半身に加えられる容赦の無い攻撃に耐え兼ねて、切なげな声が呼吸の拍子にも 漏れてしまう。 すると、スーパーヒロインはそんな状況に絶望したかのように、ブリッジを崩してキャット ウーマンの眼を逃れてうつ伏せになろうと身を捩る。スーパーヒロインの尻の膨らみと、 その割れ目への生地のセクシーな食い込みを堪能しながら、 「ニャーオウッ……バットガールそのお顔をもっとよく見せてちょうだいな……アーハハハハッ」  キャットウーマンは、身をくねらせてうつ伏せになり彼女の視線を逃れようとしている美しき 獲物の肩に足をかけ、反対側へ押し出す。 「ああっ……ん」  キャットウーマンに肩を蹴られて、バットガールは再び身体を回転させて仰向けにさせられた。 尻がリノニウムの床についた瞬間に、バットガールは快楽の第一の波が身体を通過するのを感じ た。 「くうううん……ふああああああああああアんんッ!!」  額に汗の玉を浮かべて、目を堅く閉じたスーパーヒロインは、達することのできない もどかしさを代償しようとしているかのように、一際高い声を放った。だが……それも空しく、 バットガールは自分が再び際限の無いスパイラルに陥ったことを深く思い知らされた。 突き上げられた腰は再びストンと落ち、バットガールは身体を半回転させて次の波と闘う 準備をはじめた。赤いマントがバットガールの身体の下でサテン地特有の光を集めて、スーパー ヒロインの官能をショーアップしている。 キャットウーマンは横向きのスーパーヒロインの身体を再び足蹴にして、仰向きに戻してやると、 その身体に馬乗りになって両肩を腕で押さえつけた。そうしてバットガールの顔が逃れられない ようにしてから、さっと顔を近づけた。 「い、いや……うんん」  バットガールはとっさに顔をずらすが、キャットウーマンの顔はその後を追って、正義の ヒロインの濡れた唇を追ってゆく。バットガールの堅く瞑られた唇にキャットウーマンの唇は 戯れるように堅く触れ、そしてめくろうとし、素早く離着陸を繰り返した。 数分間バットガールの抵抗と、キャットウーマンの唇の辛抱強い説得とが続いた後に、バット ガールを二度目の強い波が襲った。 「ダ……だめ……ふぁあああああああアアアアアあああああんんんんんッ!!!」  スーパーヒロインの口が堪らず開いた拍子に、キャットウーマンの舌がさっとバットガールの 温かい口内へと潜入した。 「うぐうう……んん……い……いや……はああんんんッ!」  バットガールはノーラの時とは異なり、ジェニー殺害を決意したキャットウーマンのような 悪党を受け入れる気はなかった。だが、オルガスムを禁じられて身体に蓄積していく快楽への 欲求は今や自制できないレベルに達しており、キャットウーマンの人智を超えた舌技の前に、 なすすべもなく降参してしまった。 「うんんん……はあはあ……ふぁああああんんん!」  貪欲にキャットウーマンの舌を求めてしまうバットガール。それに合わせるようにキャット ウーマンの舌は、バットガールの口内の粘膜を隅々まで刺激しては快楽をあたえてゆく。 いつしか二人は深く抱き合い、顔を左右に揺さぶりながらより深く相手を受け入れようとしていた。 「くううううんん……ふぁあああああアアアアアアアアあああああッ!!!」  三度目の波がバットガールを襲うが、まだ達することができない。波が来るたびに、スーパー ヒロインの理性を吹き飛ばすほどに規模が大きくなり、そしてスパンが短くなってゆく。そして 数十秒で四度目。二人は唾液を交換し合いながら、抱き合ったままぐるぐると転がり始めた。 バットガールの身体がキャットウーマンの上に来ると、いつしかバットガールは腰をキャット ウーマンの腰に擦れるように振り始めた……恰もそうすることが彼女を地獄から連れ出して くれるかのように。 「くうん……はあ……はあああああああああアアアアアアアアアアアアアアアああああああッ!! !!!!」  数秒のうちに五度目。そしてその後は常に波が来ている状態がバットガールの中で続いた。 スーパーヒロインは腰を引きつらせては、ゆっくりと自らのボディースーツで包まれた股間を 宿敵であるはずの女性の股間に擦り合わせる。 今やパンティーを漏れたバットガールの粘着質の体液がボディースーツを紺色に染め、尻の 切れ目から身体の前へのラインを深く食い込ませている。バットガールの意識は朦朧とし、 キャットウーマンとのディープキスは更に激しくその口内を吸い尽くす勢いだった。 「も……もう……だめぇッ!……ひぁああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアあああああああああああああああああああああんんんんんんんんんんッ!!!!!!」 とうとうバットガールは精も魂も尽き果てて、キャットウーマンに跨ったまま白目を向いて意識 を失った。 「はあはあ……とんだ淫乱ヒロインだよ……まったく」  キャットウーマンはバットガールを脇へどけて、ゆっくりと立ち上がった。それからスーパー ヒロインを改めて見た。バットガールは横向きに倒れており、呼吸の都度、そっと横腹と胸が 持ち上がるのがスーツ越しに分かる。真紅のグローブに包まれた両腕は合わされている。 マントが彼女の背後に広く広がり、白いベルトの端がそっと突き立っている。エナメル質の白い ブーツは両足が重ねられている。そしてその横顔を見ると、赤いマスクの下では目蓋が閉じられ、 敵にその弱みをさらけ出しているようにも見えた……ゴッサムの正義の天使はとうとう悪の手の 内に落ちたのだ。 キャットウーマンは部屋の隅へ行き、数本の太いロープを持って戻ってきた。それを慣れた調子 でバットガールの白いエナメル質のブーツに絡ませて、両足首をしっかりとロープで結わえると、 次に、もう一本のロープでバットガールの赤いグローブで包まれた両腕を束ねて背中で固定した。 そして、そのロープの端を身体の前の方へ回して腕と上半身とを縛り付けてやる。最後にバット ガールの胸周りを上と下とにロープを走らせてから真中で両者を結びつける。バットガールの胸 は縄で区画され、その膨らみが強調された。 よく見ると、乳首の突起が紫紺のボディースーツ越しに伺える。それから、キャットウーマンは バットガールのブーツの先に来ているロープの端を手にとり、天井のフックに結わえてやると、 部屋の隅にあるパネルを開きボタンを押した。 ウィーーーーーーーン。 機械音が響き、ウィンチが巻き上がるにつれ、バットガールの身体は足の先から宙へと持ち上げ られ始めた。足が吊り上げられ、それから不安定だった上半身も床を離れ、逆さになったスーパ ーヒロインの金色の髪もまた床を離れ、赤いマントの先が僅かに床と交渉を持っているに過ぎな い……バットガールは完全に逆さ吊りになってしまった。 キャットウーマンはそのままパネルを操作し、部屋の照度を調節した--オレンジ色の薄い光が 漆黒の闇の中、捕われのスーパーヒロインを控えめに照らし出す。ロープの巻きついた白い ブーツのエナメル質の光。 繊細で長い脛とまっすくに伸びる豊満な腿のふくらみと、それを覆う薄地のボディースーツに たゆたう光、ヒップの双球が有する乱暴な曲線は光源と向き合って闇よりも黒い陰をその狭間に 作り出していた。 それから白いベルトで強調されたウェストのくびれはそのシルエットによって否応無く強調され、 そこから鍛え上げられた腹筋がシャープなラインをくれている腹部が続き、眼を更に下へ移して いくと、ちょうどキャットウーマンの目の高さに、ロープで縛られてその大きさを誇示している かのようなスーパーヒロインの胸の双球が来る。 薄い光がその頂きの控えめな突起に集まっている。そして、両手を後ろに拘束されているために やや盛り上がっている逞しい肩が続いて、静かにその運命を待ち受けるかのような戦いの女神の 安らかな寝顔が来る。紅の唇は濡れて光の中にあり、赤いマスクの中では目蓋の幕が下りていた。 そして、短い金髪は光り輝く滝のように地を目指して落ち、主を失った赤いマントが天使の折れ た羽のように垂れ下がっている。 わたしはもっと愉しみたいのだ--いつまでも休ませるわけにはいかない。 キャットウーマンは悪辣な笑みを浮かべて、血が逆流してきてやや赤らんでいるスーパーヒロイン の頬を軽く張った。 パシンッパシンッ 「ッうん……んん」  眉根を苦しげに寄せ、まるで悪夢から醒めた後のように数度頭を振るバットガール。それから、 後ろに拘束された両手をもぞもぞと動かしてから、身体全身を少しくねらせてみて、逆さに吊る された自身の境遇に気づくことになった。 「お目覚め? バットガール? --まだまだ眠るには早いわ……ショウは始まったばかりなのよ……」  いつ手にしたのか、キャットウーマンは黒い柄のついた皮製の鞭を愛しげに持ちながら、可憐 な獲物へ微笑みかける。 「……」  下から、きっ、とキャットウーマンを睨み付けるスーパーヒロイン。 「あら……どうしたの?」 とキャットウーマン。 それから一・二分間の、永遠とも思われる長い沈黙が続いた後に、バットガールは吐き捨てる ように言った。 「……無駄よ」  「……?」 「わたし……バットガールは……決して……あなたのような悪党に……心まで屈するつもり なんて……ない……わ」  逆さに吊られているのと、先ほどまでの拷問で心底疲労しているはずのスーパーヒロインは それでも、絶え絶えながら毅然として話し始めた。 「頼もしいこと」  穏やかに返事を返したキャットウーマンが、両手で鞭を引っ張る。 パシンッ 乾いた冷徹な音が部屋を満たす。 「……わたしは……たとえこの身体を……ボロボロにされて……死ぬことになったとしても…… 決して……あなたみたいな卑劣な悪に……心までは渡さない……」 パシンッ--乾いた音。 「バットガールは……正義の……ために……死ぬ覚悟……よ」 パシンッ--乾いた音。 「ニャーオウッ……よく言えました。えらいわ、お嬢ちゃん。ご褒美をあげなくちゃね」 パシンッ--乾いた音。キャットウーマンは歩を進めた。そして、黒いメタルの柄でスーパー ヒロインの頬をぐりぐりと突いた。 「うう……ぐっ……う」  バットガールの目が再び閉じられ、頬から加えられる圧力に抗しようとしている。 だが、耐えれば耐えるほど、彼女の吊るされた身体は振り子のように圧力の方向へと大きく ぶれる。 ヴィーーンン ロープが不吉な音を立てて軋る。キャットウーマンが手を離してしばらくしても、バットガール は中空で揺れつづけるはめになった。頭に血が上り、思考がうまく働かない。 (負けるわけには……いかない……ジェニーを……救わなければ) キャットウーマンはメタルの柄をバットガールの胸の突起にあて、ぐいっと押し付けた。 「ぐう……うんん……ん」 柄の先がスーツを巻き込んでめり込む。柄の先に抵抗を僅かに 感じる程よい弾性。 ちょうどもっとも深く沈みこんだところで、またバットガールの身体は圧力の方向へと揺れ 始めた。揺れる都度、血の逆流は更に激しくなり、バットガールは自らの脈の音が聞こえ始めた。 キャットウーマンはそれから胸を柄の先で撫でたり、押したり、弾いたり、突いたりし始めた。 始めは呻き声を挙げていただけのスーパーヒロインだったが、先ほどまでの満たされぬ高ぶりが マグマのように腹の底にたまっていたところである--いつしか、声に控えめな鼻音が混じるよう になった。 「い、いや……はあ……うんん……ん」  それに伴ってバットガールの身体が微妙にくねり始める。柄を避けようとしているのだろうか、 それとも腰がひくついてしまうのだろうか……しかし、キャットウーマンの責めが続くに従って、 バットガールのそれは身悶えへと近づいていった。 「ニャーオウッ……さっきの威勢はどうしたのかしら」  手を休め、キャットウーマンはパネルへと近づき、スイッチを押した。 ウィーーーーーン 機械音がして、バットガールの身体が身体半分ほど下がったところで動作は止まった。 キャットウーマンが戻ると、眼の高さにバットガールの股が来ている。それから柄で、バット ガールの尻の谷間にぴったりと密着したボディースーツ越しに分け入り、敏感な部分を身体の 前へとかけて丹念になぞってやる。 「ッあン……やめ……あんん」  背中を引きつらせた電流は、バットガールの脳へと下りそこで小爆発した。もとより朦朧とし、 快楽の残滓に埋もれていた脳にはそれで十分だった。柄はアナルからクリトリスへの往還運動を 始めた。パンティ越しにキャットウーマンの繊細な柄の動きが伝わる。じーんッと熱いものが 身体から染み出るのをバットガールは感じた。 「くうッ……ああ……はあああんんッ!」  軽く浮き上がりそうになるのを、バットガールは歯を噛み締めて辛うじて堪える。 だが……それも長くは続かないことを意識しないわけにはいかなかった。 柄は濡れて滑りにくい身体のつなぎ目を走るので、時折ひっかかり、濡れた音を立てる。 ボディースーツはバットガールの愛液を吸ってどろどろし始めており、柄はますますとろみを 帯びた愛液をスーパーヒロインから引き出そうとしていた。 「はああん……はあはあ……あああああアアアんんんんッ!!」  バットガールの赤い唇の端から透明な糸がこぼれた。逆さに吊るされて唾を飲み込むのが困難 であり、声をあげるたびに口内は涎が堪らざるを得なかった。バットガールは屈辱に思わず身を 振るわせた。 糸がこぼれる折に光るものを目にしたキャットウーマンは、さっと屈んでそれを指先で口の端から 拭い取った。それを指先でこねてみせる。 「わたしは正義?……決して悪には屈しない? たしかそんなことを言ってたわねぇ……バット ガール。それがこのざまかい? アーハハハハハハッ」 バットガールは目を堅く閉じて、キャットウーマンの嘲弄を聞こえないようにした。だが自らの 運命も同時に感じないわけにはいかなかった。 (……そう……たとえ強がっていても……このままでは慰みものにされた挙句……殺される だけ……ジェニーも救えない……なんとか……しなければ……たとえ……ジェニーだけでも…… ああんんン……もう……だめ……) キャットウーマンの柄がますます速度を増し、バットガールの性器周辺を集中して責め始めると、 バットガールの絶頂は時間の問題となってきた。キャットウーマンの柄がやや強くスーツ越しに クリトリスを押さえつけた瞬間--バットガールの目の前で白い閃光が広がった。 「ひゃうッ……はああああああああアアアアアアあああああああああああんんんンッ!!!!」  だが、半ば白目を剥き身体を硬直させるものの、また望むものが得られない地獄を味わうこと になった。バットガールは後ろ手を拘束された身体をもどかしげに動かす。この未決のオルガスムは やはり身体の奥底に蓄えられることになった。 バットガールはこのままでは自らの気が違ってしまうのではないかと恐れた。 「ニャーオウッ……さてご褒美はこれでお終い」 パシンッ--乾いた音。 「次は……約束を破ったお仕置きよ」 パシンッ--乾いた音。 そして、鞭を振り上げる女のシルエット。 パシィイイイイインッ!!! 「ああアッ!!!!」  声……吊るされた女の揺れるシルエット。 続く。