平成14年2月22日・初版

ワンダーウーマンと紅龍と妄想作家・出会い編/AtoZ・著

妄想作家編 T --------------------------------------- 馬鹿Vs紅龍 --------------------------------------- 夜の公園のベンチで サングラスを掛けた 少女が佇んでいいた。 年齢は10代後半の あどけなさの残る少女だった。 その横へ 男が無遠慮に座ると 少女に話し掛けた。 【ここ 空いてる?】 【…】 【聞いてくれるかい? 今日 僕はこのベンチで幸運を掴んだのさ!】 【…】 少女は 無言で 席を立つと 噴水の近くのベンチへ移動した。 すると 男もまた その側へ座った。 【あんた…幸運を掴んだのじゃないの】 【そうだよ! だから それを逃がしたくないのさ】 【あんた… 馬鹿じゃない】 【みんな そう言うよ】 【あんたって変わっているのね…本物の馬鹿ね!】 【そっ! そんなに ハッキリ 断定しなくてもいいじゃないか!君だって変だよ!】 【何処が?】 【夜にサングラスを掛けているなんて! それにここは 夜は レイプ事件が多いんだよ】 【心配してくれているの?】 【あっ! 当たり前だよ! 君の様な子供が居る時間じゃないよ!】 【私を守ってくれる?】 【いいよ!】 【あそこに こっちを見ている サングラスの男が居るでしょう?】 【いる! アイツがどうかしたの?】 【私を狙っているの…やっつけて!】 【よっ! よし! 待っているんだよ】 AtoZは 反対側のベンチに居る男に向かって歩いて行くと何かを喋っていたが、 掴み掛かった途端 逆に 投げ飛ばされ 簡単に伸びてしまった。 男は AtoZ を倒すと 少女の方に向かって歩いて来た。 【少し冷えて来たようだ … 紅龍 そろそろ 帰ろうか?】 【もう少し ここに居るわ パイロン様は先に帰っていいよ】 【そうか…あの男はどうする?】 【面白そうだから あの馬鹿と 少し遊んで見るわ】 パイロンは倒れている馬鹿を一瞥すると 何も言わず歩き始めた。 男が去ると 少女は AtoZ の傍らにしゃがむと囁いた。 【本当に馬鹿ね…パイロン様に素手で挑戦するなんて…】 【うっ…うぅぅ…いっ…いてて…腰が痛い…君を…君を助けようとしたんだぞ】 【私は 紅龍…純情可憐な乙女よ】 【僕…僕は AtoZ アトズだよ シナリオライターだ】 【作家なの?】 【B級映画の脚本を…ぁぃてて…手加減無しで投げるなんて…酷い奴だ!】 【本気だったら死んでるわよ…作家に見えないけど…仕事が好きなの?】 【違うよ! 仕事を好きになる人と 好きな事を仕事にする人が居るんだ。僕は 後の方だよ!】 【どっちでもいいけど…あんた オモシロイね】 【あぃてて…腰が…腰が抜けた…手を…手を貸してよ】 【手間の掛る人ね】 紅龍が AtoZ に肩を貸し 引き起こそうとしたとき、 AtoZ は いきなり少女の唇を奪った。 次の瞬間 強烈なパンチを食らい AtoZ は再び 伸びてしまった。 【この馬鹿! 何てことをするのよ! 私のファーストキスだったのよ!】 ------------------------- ウエスト病院 ------------------------- 翌日 病院で全身ギブス姿の AtoZ は ロベルトの見舞いを受けていた。 【全身複雑骨折で入院とは…どうしたのかね?】 【んん…んぅ…んがぅ…】 【解った! 喋るな! 喋らなくていい…質問に答えてくれ】 【‥んん…】 【次の作品のシナリオは もう 出来ているのか?】 【…】 【あと少しで完成するのか?】 【…】 【ほとんど 出来ていないのか?】 【…】 【全然?】 【ん…んん】 【キサマ! 何をしていたのだ!】 ロベルトが AtoZ に掴み掛って首を絞め始めたとき巡回に来ていた看護婦が 絶叫を聞きつけ 飛び込んできた。 【何をするの! この人は重病人なのよ!】 必死で制止する看護婦に助けられた AtoZだったが、 目の前で蠢くヒップに気を引かれ ギブスの手で 看護婦の尻を撫でてしまった、 【きゃぁぁぁぁ! 何をするの! この変態!】 【この馬鹿! 撮影をどうする!】 今度は 2人から 殴打され 首を絞められていた。 そこへ 見舞いに来たダイアナが飛び込んで来た。 【待って! 落ち着いて! この人は患者でしょう!】 ダイアナに説得され やっと冷静を取り戻した2人は AtoZ を罵倒しながら 病室から出ていった。 【大丈夫?…じゃないわね…全身包帯ですものね…】 【…んん…ん…んがぁ…】 【いいわ! いいわよ! 喋らなくていいわ…質問に答えてくれる?】 ダイアナの その言葉を聞いた途端 AtoZは 悲鳴を上げ昏倒してしまった。 【駄目ね…事情はもう少し回復してからにしましょう…】 ------------------------- IADC本部 ------------------------- 【やぁ ダイアナ AtoZ は どうだった?】 【駄目だったわスティーブ。 話しは聞けなかったわ全身打撲で全治1ヶ月の入院だそうよ】 【そうか 警察の調書ではレスラー 十数人と闘ったと書いてあったが】 【病院の話では 高い所から落ちた様だと …でも殴られた後も有ったわ。 怪我の状態からすれば 殴打され 怪力で 投げ飛ばされた感じね。 でも AtoZ がレスラーと闘うなんて考えられないわ】 【単なる傷害事件だからね 警察に任せるべきだよダイアナ】 【そうね…IADCの扱う事件ではないわね】 【それで…パイロンの情報は掴んだのかい?】 【いいえ…この1ヶ月行方不明のままよ…アメリカから出国していないのに どのホテルにも宿泊していないわ…スティーブの方は?】 【マスコミも追っているようだが 何も無い 不気味な程だよ。 GIT社や廣グループに公式会見を申し込んでも連絡が取れないそうだ】 【そう… そうだわ! 孤児院に行って見ましょう … スティーブ 私 ちょっと心当たりが有るの 行って見るわ】 【何処へ?】 【後で連絡するわ】 ダイアナが パイロンが運営する孤児院に向かおうとIADCを出たとき 陳大人と麗華が乗る車に遭遇した。 【パイロンの居場所が分かるかも知れないわ彼等を追いましょう】 急いで車に乗って 彼等の後を追ったダイアナが行き着いたのは なんと ロベルトの自宅だった。 ------------------------- ロベルト邸 ------------------------- 【来て頂いて ありがとうございます 陳大人・麗華さん】 【お久し振りね ロベルトさん お仕事は順調かしら?】 【最近は 映画で 儲けていますよ ところで ロン大人はお元気ですか?】 【今は休暇中で 私達も連絡を禁止されているのですよ、 それより ロベルトさん 本題に入りましょう依頼したい件とは?】 【陳大人 鉱石の取り引きは順調ですか?】 【予約に応じられない状態です。 その話ですかロベルトさん?】 【陳大人ではなく 麗華さん 貴女にお願いがあるですよ】 【何かしら?】 【貴女は 声を変えられる特技が有るでしょうそこで…】 【そんな 話は お断りする! 帰ろう麗華!】 【ワンダーウーマンを捕らえたいのですが…如何でしょう…手を組みませんか?】 【我々は ワンダーウーマン等に興味は無い!ロン大人も同じだ!】 【貴方達も ワンダーウーマンに仕事を邪魔され数箇所のアジトを壊されている 違いますか?】 【些細な損害ですわ ロベルトさん…もし捕らえたら…連絡下さる?それでは これで】 【ロベルトさん 念を押しておく! 我々はワンダーウーマンに興味は無い…失礼する】 【残念ですな …くっそう 駄目か…】 二人が帰ると 過去に撮った秘蔵の画像を見ながら 【これを本物で撮れれば…絶対ヒットするのだが…】 呟きながら 何かを思い付いた様に ロベルトは、日本に国際電話を入れた。 【もし もし 私 ロベルトです ミスター柴をお願いします。 ミスター柴 ですか ワンダーウーマン委員会の件ですが… 新会長に就任して頂けると…ありがとうございます…映画ですか? 近日中に撮影に入ります。…ライターですか?…AtoZ君です。 …大丈夫です…えぇ…本物のワンダーウーマンが出演しますから… それで…資金の方ですが…ありがとうございます…では…またご連絡します】 ロベルトは電話を切ると 部屋の中をウロウロしていたが ふと気が付くと 目の前にワンダーウーマンが立っているのに気が付いたが 一瞬の内に ラッソーに捕らえられてしまった わっ! ワンダーウーマン! どうして此処に!】 【事情を話してくれる? ロベルト】 【ワンダーウーマン調教委員会が 新しい会ができたのだよ】 【スポンサーは? さっき 柴と言う名前を 言っていたわね】 【新会長だ…日本人だよ…日本でもワンダーウーマンのファンは多いのだよ】 【それで また あの変態映画を作るの?】 【そっ! そうだ! 是非ヒットさせたいのだそこで 本物を…】 【それで AtoZ に 依頼したのね】 【そっ…そうだ…くっそう! あの馬鹿め! こんな時に入院などしおって!】 【なぜ 彼は怪我をしたの?】 【キスした女に 殴られて 投げ飛ばされたそうだ】 【怪力女ね…誰なの…その人の名前は?】 【紅龍とか 言う女 …少女だそうだ】 【あの子ね…だったら パイロンも傍に居た筈だわ…】 【もっ! もう いいだろう…知っていることは全部話したよ】 【もう 馬鹿な事は止めるのね。 今度やったら承知しないわよ!】 【わっ! 解った! もうしない! 神に誓うよ】 この男の言葉など信用できないのは 解っていたが AtoZ が あの状態では 子細工は出来ないだろうと判断した ワンダーウーマンは ロベルトを許してやることにした。 ------------------------- 馬鹿の罠 ------------------------- 2週間後 IADCのダイアナに AtoZ からの手紙が机に届いていた。 ------------------------------------- | ダイアナ ワンダーウーマンに連絡してくれ。 | 僕を骨折させた女の子に 追われている. | 病院から逃げ出して 今 シアタービルに隠れている。 | 助けて欲しい。 見つかれば今度こそ 殺される. | サングラスの男(パイロンだったと思う)からも狙われている。 | 安全な場所に匿って欲しい。 | それと 重要な話しが あるんだ。 | AtoZ | 僕は シアタービルの 3Fの現像室にいる。 -------------------------------------- 手紙を呼んだダイアナは 指定された場所に向かった。 劇場の裏口で ダイアナはワンダーウーマンに変身すると AtoZの隠れている部屋に入っていった。 【AtoZ! どこに居るの? ワンダーウーマンよ出て来なさい】 ワンダーウーマンの呼びかけに 狭い現像室の奥からギブスをして 杖を付いた AtoZ が現れた。 【来てくれたの? 助かったよ! ワンダーウーマン】 杖をつきながら 寄って来る AtoZ に ワンダーウーマンはさっと 身構えた。 【どっ! どうしたの?】 【そのまま! 動かないで! どんな罠を仕掛けたの?AtoZ】 【罠? 僕が君に罠を掛けるなんて! 罠を仕掛けたことなんか無いよ!】 【その言葉からして 嘘でしょう!】 【まるで 僕を信用していない 様じゃないか!】 【最初から 信用していないわ】 【そっ! そんな! 僕は卑怯者じゃぁ】 【貴方は 卑怯者よ!】 【そんな! 断定しなくても 良いじゃないか】 2人が 掛け合い漫才をしていると 4人の警官が物々しく入って来た。 【ワンダーウーマン 君を逮捕する。 容疑はAtoZ 暴行傷害だ!】 それを聞いたワンダーウーマンは 両手を腰に当てる、いつものポーズを取りながら言った。 【ニセ警官ね. そうでしょう? AtoZ】 【なっ! なんで解ったの? まだ仕掛けてないのに?】 【貴方のやり口は解っているのよ! 手錠を掛けてベルトを奪うつもりでしょう?】 【そっ! その通りだよ! なんで?】 簡単に白状する AtoZ に 男達は冷たく 言い放った。 【だから! こんな方法は駄目だと言っただろう!】 【やっぱり お前は馬鹿だったな 子供でも引っからないぞ】 【おい! 監獄から出て来たら …出られたらの話だが… エキストラ料は払えよ!】 【この警官の衣装代も 払えよ!】 最初から 男達は成功するとは思っていない様な態度だった。 打ちひしがれるAtoZ だったが ワンダーウーマンはまだ警戒をしていた。 【見逃してあげるわ! 貴方達は帰りなさい!AtoZ 貴方には聞きたいことが有るのよ】 失敗と解ったエキストラ達は さっさドアから出ていったが そのとき 男達は ドアを閉めるとき ロックしたのを ワンダーウーマンは気が付かなかった。 【この後は どんな罠があるの?】 【もっ! もう ないよ! 本当だよ! 上手く行く筈だったのに…】 【念のため ラッソーを掛けるわよ こっちへ来て頂戴!】 【わっ 解ったよ その前に息が切れて来たんだ酸素マスクをさせてよ】 【それも 罠なの?】 【違う! 違うよ! 僕が吸うのだよ 本当に息が苦しいんだ】 【いいわ 酸素吸入を したら こっちへ来なさい】 【すぐ 終わるよ 1.2分だから】 【…まだ…?】 【ふぅーーう やっと 落ち着いたよ 僕に何を聞きたいの?】 【その怪我をさせた相手を 教え…て…頂…戴…… そ……の……】 目が霞み始め 妙に息苦しくなり始めていた ”罠” だと 気付いたときは 全身から力が抜けていた。 ワンダーウーマンは ドアを開けようとしたがそのまま倒れてしまった。 【ふっふっふ やったぞ! ワンダーウーマンを眠らせたぞ!ガスを止めてくれ】 ニセ警官達が 携帯マスクをして 入って来ると AtoZ は ワンダーウーマンのベルトを奪い縛り上げるように指示し。 部屋の換気扇を動かした。 【僕の作戦は いつも完璧だな! 無臭性のガスとは盲点だったろう自分で惚れ惚れするよ】 高笑いする AtoZ が 部屋を出ようとしたとき突然 本物の警官が乱入してきた。 【動くな! 手を上げて全員その場に伏せろ!】 【IADCのトレバーだ! ワンダーウーマン拉致の現行犯で逮捕する!】 【そっ! そんな! どうして解ったの?】 【首謀者は 君だな AtoZ!】 【違う! 違うよ! 僕は…】 言いかけて AtoZは 仲間の全員が 彼を指差しているのを見て唖然とした。 【そっ! そんな! 完璧な計画だったのに…】 【病院のベッドにシナリオを置いていただろう。動かぬ証拠だよ。 ただし 君は身体が治るまで収監しない。 病院に戻るのだ。】 【やった! 僕は逮捕されないんだ ラッキー! …でも…病院のシナリオを どうして トレバーさんが手に入れたの?】 【あの少女が 減刑を条件に 君のシナリオを届けてくれたのだよ】 トレバーが指差した場所には ”ニッコリ微笑む”紅龍がいた。 それを見た AtoZは 動揺してトレバーに訴えた。 【いっ! 嫌だ! 病院は嫌だぁーーー! おっ!お願いだ! 逮捕してよ!】 AtoZは トレバーのズボンにすがって訴えたが 顔を真っ赤にして トレバーは 怒りの声で答えた。 【やっ! 止めたまえ AtoZ君! 私はそんな趣味は無いのだ!】 我に返った AtoZが目を開けて見ると、 AtoZの口の前にはトレバーの股間が位置していたのだった。 -------------------------------- 後日談 -------------------------------- 【ダイアナ AtoZは まだ退院出来ないようだよ】 【もう2週間よ とっくに退院できている筈なのにどうしたのかしら?】 【収監されたくないのだろう】 【逮捕のとき 病院に戻りたくないと 貴方にすがり付いたと聞いたけど?】 【あぁ もう少しで ズボンを降ろされる ところだったよ】 【止めてよスティーブ! 吹き出すじゃないの。でも…私 見舞いに行って見るわ…】 【あっ! ダイアナ 気を付けるのだよ】 【何を?】 【AtoZだよ スカートに 抱き着かれない様に】 【スティーブ! 冗談は止めてよ】 念のため スカートからパンタロンに着替えた上で、 ウエスト病院に AtoZ を見舞ったダイアナは病室に入って驚いた。 AtoZは全身を包帯で巻かれ 両手両足と首にギブスをしていた。 そして その傍には 紅龍が付き添っていたのだ。 【大丈夫?…じゃないわね…前より酷い気がするわ …あなたが看病しているの?】 【違うわ! コイツを ぶっ殺しに来たのよ!】 【なっ! 何ですって!】 【冗談よ! おばさん】 【おっ! おばさん ですって!】 【アンタ あたしより 年上でしょう? 違って?オバサン!】 紅龍の挑発的な言葉に、ダイアナのコメカミがピクリと動き、唇が震え バックを握り締める手に力が入っていた。 睨み合う二人に挟まれた AtoZ は これから起きる事態を想像して逃げようとした が ベッドと共に転げ落ち 下敷きになったベットから絶叫を上げた。 …AtoZの退院は 更に1ヶ月の延長となった。 ***完  この作品は、ハードカバー版(画像付き小説)がダウンロードできます。 入手される方は、下記のリンクをクリックしてください。

ワンダーウーマンと紅龍と妄想作家・出会い編(LZH)・227KB