平成15年7月18日・初版 MonkeyBanana2.Com Free Counter

ワンダーウーマンvsサイボーグゴメス・第1章/AtoZ・著

サイボーグ vs ワンダーウーマン --------------------------------------- ゴメス編 (パイロン編外伝) --------------------------------------- --------------------- 麗華 --------------------- パイロンの部下の麗華は 中国人民解放軍情報部の李部長と会談していた。 【今までの報告を纏めて見たが…やはり彼の目的はわからないな (1)最初に 中国マフィアがWWを拉致し 身代金として 鉱石を手に入れた この拉致に関与した者は 陳と君を除き 全員IADCに射殺されている。 この中には 私の部下も2名いたのだが… (2)その鉱石を ネオナチスに売却した これで 各国の情報機関が動き出し 各国との鉱石売買が始まった (3)鉱石売買の見返りとして 麻薬の資金洗浄が黙認された。 アジトを各地に建設し始めたのも 博物館や研究所・地理院が襲われ始めたのも この頃からだ (4)この洗浄資金を元に GIT社の立上資金が調達された。 各国情報機関のハッキングが多発したのもこの頃だ (5)GIT社による超高速情報通信網敷設が世界的に広まった これで パイロンは 報通信網のハード面を押さえたことになった そして 株式公開で パイロンは巨額の資金を手に入れた。 麻薬から撤退し始めたのは この頃だ。 (6)遺伝子工学関係の特許を独占し始めた 廣財閥グループの企業活動が南米・アフリカまで広がって来たのが この頃だ (7)アルジェリアに秘密工場の建設を始めた …彼の目的は 何かね 麗華?】 【私も 最初は ワンダーウーマンを捕らえる意味や 敵対していたネオナチスに鉱石を 売却する意図が分かりませんでした。 スイスの資金が大量に動いたのは(4)と(7)の時期で 秘密活動が活発だったのが(3)と(6)の時期です でも 彼の最終意図は解りません。 一月の内20日は海外へ 後はアメリカにいます。 最近パイロンは 紅龍という少女を 良く連れ歩いています。 紅龍は 母親が中国人で インドシナ戦争の孤児と言う以外 経歴は分かりません が マインドコントロールの能力が有るようです それと 信じられない話しですが テレポート能力の噂が有ります。 直属部隊として ナイト・スネークがいますが 実態は良く解りません。 戦闘部隊としては 装甲騎士団と呼ばれる 戦闘アーマー部隊がいます。 その指揮官は 玄武と呼ばれる男で 彼はパイロンの親友です。 玄武以外の騎士団幹部として ブランケン と レオン 2人は傭兵です。 装甲騎士団以外の傭兵の準幹部としては アモン・コング・ゴメスがいますが コングの部隊は壊滅しています。 戦闘部隊以外の 非合法活動のメンバーですが、 直属の部下としては 陳大人 の他 各国に1〜2名の専任幹部がいます。 情報部門の責任者は GIT社の灘川と その秘書の早紀子です。 この2人とパイロンの関係はよく解りません。 あと 私の知らない幹部メンバーが 数名います 名前を聞くだけで接触したことが有りません。】 【解らん 世界最大の資金量を持ち 私設軍隊もある …世界征服でも するのかね?】 【まさか! 私設軍隊とは言え 600名程度の歩兵部隊です。戦車も戦闘機も持っていませんわ。】 【持っているのだよ 麗華】 【まさか! 私もそんな事は 聞いた事が有りませんわ】 【君の想像以上に 彼は… 彼のシンパは 居るのだよ 我が国の軍部にも彼の仲間がいる】 【でも それは 彼の魅力では… 彼は 頭も切れ 行動力もある 強運の持ち主ですわ】 【君の気持ちを除外しても それは 認めよう 問題は 彼の 我が国に対する姿勢だ】 【世界征服など考えていませんわ 私にもそんな話しは したことがありません。 彼の行動で 政治的な動きは皆無です 祖国への忠誠心は有りませんが 敵対的ではありません】 【彼の感心が 政治や経済でないとすれば 何が有る?】 【解りません…ただ当面の目標は 世界情報網の独占ではないかと… その次は 遺伝子分野での寡占 それも最終目的の一過程でしょうが…】 【ふぅ…まだまだ 目が離せない人物ということだな…当分 君を戻せないな】 【私は 今の任務に満足しています 祖国に戻る積もりはありませんわ それと アルジェリアの秘密工場ですが…】 【何か解ったのかね?】 【建設図面をみたのですが…その形が…ピラミッドの様な外見でしたわ】 【形に意味が有るのかね…解らんな?… 玄武に関しての 情報は あれだけかね? 彼の国籍・家族・経歴は? 任務に失敗した事は?】 【国籍・家族・経歴は 不明です。 任務に失敗した事は 聞いた事がありません】 【うぅむ…困った相手のようだな…あれにはワンダーウーマンとも闘ったと書いてあるが?】 【気絶させただけで 放置したそうです。 いっそ始末すれば良かったのに】 【君は ワンダーウーマンには 良い感情を抱いていないようだね】 【男性を惑わす性悪女ですわ…あのコスチュームを見てもお解かりでしょう? でも なぜ玄武の事を 知りたいのですか?】 【我が国の遺伝子研究の第一人者である 葉博士が彼に関心が有るらしい。 私には それ以上の情報はないが パイロンの秘密も彼なら知っているのではないのか?】 【私には 解りませんわ】 【そうか…たまには 帰って来い…お前の母親も心配しているぞ 旧正月には待っているぞ麗華】 【解りました お父様】 --------------------- 陳大人 ---------------------  麗華が李部長と別れ パイロンの宿泊するホテルに帰ったとき 携帯の電話が 何かを予感させる様に 騒がしく 鳴った。 【陳だ! ロン大人に至急連絡してくれ ワンダーウーマンに急襲された!】 英語ではなく 広東語で早口に喋る電話の向こうから 混乱と動揺が伝わって来ていた。 【待って 直ぐ代わるわ】 麗華は 豪華なソファーに座り 本を読んでいるパイロンに 陳大人の名前を告げ 慌てて携帯を差し出した。 【パイロンだ どうかしたのか?】 【陳です! ワンダー ワンダーウーマンに急襲されています! 防ぎきれません!】 【武器を捨てて 投降しろ】 静かに ユックリと 告げたパイロンの言葉が 陳大人には理解できなかった。 【はっ? 今 なんと…】 【聞こえなかったのか? 投降しろ と 言ったのだ】 【… …… ト・ウ・コ・ウ…… わっ 解りました 投降します】 電話を切った後 読みかけの本を 手に取ったパイロンに 麗華も 驚きを隠さず 聞き返していた。 【どうして!? どうして ですのパイロン様】 一方 パイロンの言う意味が やっと分かった陳は 深呼吸すると部下に大声で言った。 【全員武器を捨てろ! ワンダーウーマン 聞こえるか 俺達は抵抗しない 降参する!】 がなり立てる陳大人の言葉は ワンダーウーマンにも 意外なものだった。 襟を掴まれ 殴られる寸前だった手下は、 安心した気の緩みから ちびりかけの小便を一気に出してしまっていた。 ブーツの足元に暖かいものを感じた ワンダーウーマンは、 それが何か気付くと 慌てて部下を突き放し 陳に応答した。 【大人しく捕まるなら 乱暴はしないわ 全員出て来なさい】 陳大人以下20人近い男達は、ワンダーウーマンの前に 整列すると 大人しくワンダーウーマンの指示に従った。 【どういう心境の変化なの? さっきまでは必死だったのに】 両手を腰に当てる普段の姿勢で 問い掛けるワンダーウーマンに 陳大人は 半分 自分の気持ちを込めて応えた。 【あんたに勝てないと解ったからだ その魅力には 男は勝てないよ】 【お世辞が上手ね さぁ 警察に行きましょう 武器密輸の事を全部喋るのよ】 【一つ教えてくれないか? どうして ここが解ったのだ】 【それは 教えてあげられないわ】 【もう一つ 質問していいか? ワンダーウーマン】 大人しくなった 陳大人に ワンダーウーマンは 笑顔で応えた。 【私が答えられる事ならね】 一呼吸おいて 溜め息交じりの声で 陳大人は 質問した。 【なぜ君は そんなに素敵なんだ】 真面目な顔で 不意を突かれる質問をされたワンダーウーマンは 少し動揺しながらも 切り返した。 【ありがとう…でも その質問は 罪をつぐなってから 答えさせてね】 --------------------- 根黒の未婚(アルアジフ) ---------------------  麗華はパイロンが席を外した後 彼の読み掛けの本に目を落とした。 アラビア語で書かれた書名は”漆黒の伝承”と読む事はできたが 彼女が習った字体とは微妙に違っていた。 その本自体 非常に古い時代のもので 変色し大部分痛んでいた。 速読した本の内容は 意味不明の難解なものばかりだった。 【クトール】【ヨグソート】【ツァトウグア】 子音名称・解らない単語・読めない文字 麗華が諦めて本を戻したとき パイロンが戻って来た。 盗み読みしていた動揺を隠すように 麗華は先ほどの質問を繰り返した。 【なぜ 抵抗せず投降させたのですか?】 【ワンダーウーマン相手に 普通の人間が 勝てる筈が無いからだ。】 【でも あのアジトには300万$相当の武器がありましたわ それを…】 【たかが300万$だ 陳大人は金で買えないだろう?】 【あら 私なら幾らまで払ってくださいますの?】 麗華は パイロンの前では、いつも 過激なボンデージスーツか 深いスリットの入ったチャイナドレスを着ていた。 それは パイロンの気を引きつける為のものだった。 最初は(潜入した当時は)パイロンを挑発する為だったが いつしか 女として パイロンの前に立つようになっていた。 そして パイロンの敵として立ちはだかる ワンダーウーマンに 激しい敵意を持つようになっていた。 【君も同じだ 金では買えない。君は私にとって重要なパートナーだ】 待っていた言葉に満足した麗華は、 話題を変える為に 本の話しを始めた。 【パイロン様はアラビア語もご存知なのですか?】 【少しだけは 君は?】 【日常会話なら でも この本はかなり古い文字のようですわね】 【ネクロノミコン…アルハザードの原典に一番近い本だよ 世界で一冊しかないものだ。 それより 陳大人の救出だが ゴメスに連絡をしてくれ】 麗華にとっては ネクロノミコンなど関心はなかった。 それより パイロンと共に行動する今が いとおしかった。 【解りました。 どの様な指示を?】 【護送される途中を奪い返して欲しい】 【ワンダーウーマンが現れたときは?】 【逃亡できればいい ゴメスなら 足止め出来るだろう】 【捕らえる必要は?】 【必要はない 他に質問は?】 【ありません では ゴメス隊長に連絡します】 だが 麗華は パイロンの指示を 少しだけ変えて連絡をした。 【麗華です ゴメス隊長を】 ゴメスで出るまでの数分間 麗華はワンダーウーマン抹殺の事を 考えていた。 【…ゴメス隊長ですか? 麗華です。 パイロン様の指示を伝えます。 陳大人が 州刑務所に護送されます 奪還をお願いします。 もし ワンダーウーマンが妨害したときは 始末して下さい。 ワンダーウーマンのパワーの秘密は ベルトです。 ベルトを奪えば簡単に始末できます。 以上です。】 麗華は ゴメスを知っていた。 敵にも味方にも 冷徹・非情で、作戦を実行して失敗したことはなかった。 パイロンの組織に拾われたとき 彼は身体の半分を失う程の重傷を負っていた。 緊急手術でサイボーグとなった後も 自ら進んで 数回の改造手術を受け 戦闘能力を格段に強化していた。 彼ならば ワンダーウーマンを倒してくれるだろう。 【パイロン様の為よ 死んで頂戴 ワンダーウーマン】 麗華は ワンダーウーマンの倒れた姿を想像しながら 身体が熱くなる感動を覚えていた。 --------------------- ゴメス ---------------------  麗華からの連絡を受け ゴメスは部下達を集合させた。 10人近い彼の部下は 歴戦の猛者達だった。 中東やアフリカで 外人部隊として活躍していた頃からのメンバーだった。 【囚人を奪還する 障害があるとすれば ワンダーウーマンだ】 【そのときは どうします?】 【俺が始末する】 【ルートと時間は?】 【2次情報は直前に知らせる 車と武器を用意して1時間後に集合しろ】 【了解】 麗華から 護送車のルートと時間の情報を受け取ったゴメスの動きは迅速だった。 護送車が警察から出発して1時間後 郊外に出た所を 大型トレーラーが 護送車を挟む形で襲撃は開始された。 トレーラーと衝突し警官が動揺した所へ ゴメスの部下が催涙弾を打ち込み 一瞬の内に制圧してしまった。 距離を置いて 護送車を見守っていた ダイアナは素早く 車から降りると ワンダーウーマンに変身し 彼等に立ち向かって行った。 だが そのワンダーウーマンの前に1人の男が立ちはだかった。 【俺はゴメス 俺が相手だ ワンダーウーマン】 名乗り出た相手は 中肉中背の男だったが 戦闘服から露出している部分の 筋肉は鍛え上げられた強靭さを現していた。 【馬鹿な事は止めるのね 大人しく捕まりなさい】 ワンダーウーマンの警告を無視したゴメスはショットガンを投げ捨てると 素手で攻撃していった。 相手が素手と見たワンダーウーマンも 手加減しながら応戦することにした。 ゴメスは、ジャブを繰り出し、敵を疲れさせることに専念した。 【どうした スーパーヒロイン 反撃しないのか】 だが 嘲笑し相手に冷静さを失わせるゴメスの作戦は 見事に外れていた。 【あら 反撃してもいいのかしら】 その言葉に 頭に血が上るのを感じながも 冷静さを失わず ゴメスは作戦を変える事にした。 【そんな コスチュームに俺は騙されないぞ 淫乱ウーマン】 【なんですって! 誰が淫乱よ!】 アマゾネスとしての 戦士の衣装を揶揄され 動揺したワンダーウーマンは ゴメスの作戦に乗り パンチを繰り出して来た。 ゴメスは冷静に、わざと後ずさりし、ワンダー・ウーマンが勢いよくかかってくるよう煽った。 そして、怒りで平静を失った女戦士に、小刻みなカウンターパンチを返し続けた。 だが ゴメスの作戦も ワンダーウーマンのパワーには通用しなかった。 【俺が受けたパンチの倍を浴びせている。なのに この女は まるで疲れを知らないようだ。】 長身のワンダー・ウーマンの力に溢れる攻撃は、ゴメスをたじろがせ、後ずさりさせていた スーパーヒロインとはいえ たかが 女と 見くびって 対戦したゴメスだったが その強靭なパワーに 舌をまいていた、 だが彼も 今迄闘って敗れたことは 無かった。 その自負と 戦士の誇りが 彼の身体を駆け巡り 新たな闘志となっていた。 【行くぜ ワンダーウーマン】 ワンダーウーマンも 相手が人間だと思い 手加減していたミスに気付いていた。 普通なら 手加減していても もう倒している筈だった。 【10発以上は 打ち込んでいるわ サイボーグね 手加減はしないわよ】 ゴメスは矢継ぎ早に ジャブを繰り出しながら 相手の隙を突く作戦をとった。 だが スピードでは ワンダーウーマンが勝っていた。 攻防を繰り返しながら 相手を捕らえたのは ワンダーウーマンの方だった。 一瞬の隙を突いて ワンダーウーマンの重いパンチがゴメスの腹にめり込んだ。 鈍い音がして 彼の厚い装甲に亀裂が走ったようだった。 ゴメスは 手負いの野獣の様な 咆哮をあげ 両手で腹を庇いながら膝から崩れ落ちた。 ワンダーウーマンが 後一歩まで ゴメスを追い込んだとき、 ゴメスの 部下の声が その動きを止めた。 【ワンダーウーマン ベルトを外せ! この男達を殺してもいいのか!】 声のした方を見たワンダーウーマンは 歯ぎしりして固まってしまった。 ゴメスの部下が 倒れた護送車の警官のコメカミに銃を押し当てていた。 1人ならば ティアラで助けられるかも知れないが 5人の警官がゴメスの部下達に捕われていた。 【解ったわ 言う通りにするわ 撃たないで!】 【ベルトを外して こちらに投げろ! 早くしろ】 ワンダーウーマンがベルトを外し それを 彼等の方に 放り投げた瞬間 背後からゴメスの踵を 後頭部に受けてしまった。 声を出す間もなく よろけたワンダーウーマンは ゴメスに捕まってしまった。 ワンダー・ウーマンは もがきながら、激しく脚を蹴り上げた。 【離しなさい! 離すのよ!】 だが、ゴメスはワンダー・ウーマンを完璧に捕らえていた。 強化サイボーグの両腕がワンダーウーマンのくびれたウエストを 更に締め上げていた。 【うっ くっ くぅう】 蜂胴のように絞られ 締め付けられ 息が出来ないワンダーウーマンの全身が悲鳴を上げていた。 そして 背骨が折れる激痛が全身を貫き 反撃することを拒んでいた。 ワンダーウーマンの全身から力が抜けたように感じたとき ゴメスは ワンダーウーマンを投げ倒すと 勝ち誇った声をあげ 馬乗りになった。 そして いやいや を する様に拒む ワンダーウーマンの両手を膝で押え込むと、 ワンダーウーマンの顔面に狙いを定め 手を休めずに 拳を振るいつづけた。 5・6・7・8発 ギリシャ彫刻のブロンズ像のように 整っていたワンダーウーマンの顔が 変色し無残に歪んでいった。 【形勢逆転だな いくぜ ワンダーウーマン】 9.10.11.12発 殴打に耐える伸韻が止んで 暫くして やっとゴメスは ワンダーウーマンから離れた。 横臥したまま ワンダー・ウーマンは 動かなくなっていた。 アマゾネスが もう 立ち上がれないことは明らかだった。 部下達は武器を持った手を挙げ 歓喜の声を上げた。 【やった、やった!ワンダー・ウーマンをやっつけたぞ!ざまあみやがれ!】 【アジトへ運べ たっぷり 仕返してから 始末してやる】 --------------------- アジトでの対戦 ---------------------  アジトに運ばれた後 暫くして 意識を取り戻したワンダーウーマンは 自分の置かれている環境を冷静に観察した。 ベルトは奪われていたが 縛られてはいなかった。 【余程自身があるのね でも 縛られていなくて良かったわ】 ワンダーウーマンは 窓も椅子もない部屋の 扉に注意を向けると ドアに近づき 静かにノブを回して見た。 【鍵がかかっているわ…誰かが入って来た時がチャンスね】 自力での脱出を諦めたワンダーウーマンは ゴメスに殴られた顎を手で触って見た。 ベルトがなくても 彼女の回復力は驚異的だった。 あれほどの打撃を受け 腫れ上がっていた顔から 痛みも傷も消えていた。 【流石だな ワンダーウーマン お前の回復力には驚いたぞ】 突然背後から 声を掛けられ 一瞬動揺したワンダーウーマンの前に現れたのは ゴメスと彼の部下達だった。 【もう一度チャンスをやるぜ 俺と闘って勝てば逃がしてやる どうだ】 不敵に笑うゴメスの挑戦を ワンダーウーマンは受けて立つように 両手を腰に当てて 応えた。 【後悔するわよ それでもいいの?】 【強い女ほど脆いものだ お前が女だと 思い知らせてやる 行くぜ】 サイボーグ相手にベルト無しで闘うのは 明らかに不利だった。 だが アマゾネスとしての誇りが 彼女を奮い立たせていた。 長期戦になれば 体力で劣る自分に勝ち目はない と 考えたワンダーウーマンは 戦士に相応しい素早さで身体を捻ると ゴメスにキックを浴びせた。 だが間一髪でそれを払いのけたゴメスは 目を狙って拳を打ち込んだ。 だが ワンダーウーマンもそれを受け流すと 態勢を立て直し。 ゴメスの顎を狙ってクロスを打ち込んだ。 サイボーグ相手に 女がここまでやれるとは 彼の部下も意外だった。 均整の取れた身体 しなやかな脚 豊満な胸 くびれた胴 闘う女神の その姿は 男の心を そそる ものだった。 だが 長期戦になるにつれ ワンダー・ウーマンの豊かに膨らんだ胸がだんだん激しく上下し始めた そのパンチは粗くなり空を切る事が多くなっていった。 一方 ゴメスのパンチは 小刻だが確実に 相手にダメージを与えていった。 ゴメスは 疲れが顕わに見え始めたワンダーウーマンを見逃さなかった。 ワンダーウーマンが膝を落とした瞬間 ゴメスの鋭いキックが ワンダーウーマンのコスチュームにめり込んだ。 唸るような声を絞り出し崩れたワンダーウーマンに ゴメスは執拗に蹴りを打ち込んだ。 腹を押さえれば脇を 身を捩れば無防備な背中に蹴りが入った。 そして 動きが止まったのを見たゴメスは ワンダー・ウーマンの長い黒髪を掴むと、彼女の頭を、床に強打した。 額が割れ血が流れ出していた。 ゴメスが止めを刺そうとワンダーウーマンを上向けた瞬間 その長い脚が ゴメスの後頭部を直撃した。 一瞬 頭が真っ白になり 視界からワンダーウーマンが消えた。 状況を把握する余裕もなく 次の攻撃を受け ゴメスは床に無様に倒れ込んだ。 今度は ワンダーウーマンが馬乗りになろうとしたとき ゴメスの部下がライフルの柄で ワンダーウーマンの後頭部を強打した。 不意の攻撃に うめき声をあげ頭を両手で庇ったワンダーウーマンに 態勢を立て直したゴメスのパンチが炸裂した。 無防備となった腹に ゴメスのパンチが 手首までめり込むほどに打ち込まれた。 そして 鈍い悲鳴を上げ 激痛に身体をかがめ、腰を折ったワンダー・ウーマンの そそり立った乳房に 埋もれる程のパンチが打ち込まれた。 呼吸が止まり 声も出せなくなったワンダーウーマン。 ゴメスは 動きが止まったワンダーウーマンの顎にアッパーカットを突き上げた。 勝負はそれで着いた。 仰け反ったワンダー・ウーマンの大きく見開いた空色の瞳が空ろになり そのまま スローモーションのように仰向けに倒れたワンダーウーマンは もう微動もしなかった。 素手の闘いで辛くも勝ったゴメスは 自分を追い詰めた女に激しい憎しみを抱いた。 たかが 女に プロの自分が不覚をとったことが 許せなかったのだ。 【くっそう 自分が女だと 思い知らせてやる 縛り上げろ。責め抜いてやる】 ***つづく